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    ちゅきこさんの医パロ設定をお借りして作った、自分が読みたい話その3です。
    加州くんと獅子王くん、三日月さんと鶴さんがメイン。(みかつる要素多め)

    ちゅきこさん、ご許可ありがとうございます✨

    俺とめんどくさい奴らの話それは俺が日本に帰国して、1年が過ぎたころの話ーーーー

    カナダでの研修を終えた俺は、刀剣医大に籍を置きつつ、本丸病院に出向することになった。
    医師の定員数にうるさい大病院の、充実した人員をもつ科に時季外れの出向。年齢に見合ってるのかよくわからない、そこそこな序列と給料をもらって。噂好きの職員の恰好のネタだったろうと思う。
    医者の家系でない俺に、不本意ながら絶大な後ろ盾がついたからだ。

    三日月宗近。刀剣医大の教授だ。次の医学部長はあの人で決定だろう、と現医学部長の就任直後から噂されている、学内でも重要な位置にいる人物だ。
    「おや、加州の嬢か。」
    刀医附属でもない病院に、理事とはいえ外部の人間が頻繁に来る必要などないはずなのに。今日もふらりとやってきて、お偉いさんはのんびりとした口調で俺を嬢と呼ぶ。
    狸め。露骨に嫌そうな顔をして挨拶だけすると、俺はPCを起ち上げた。
    なんでこんな人物が俺の後ろ盾になったのかといえば、この狸の後継にと、しつこく望まれていた俺の同期の手により、一年半ほど前に体のいい厄介払いとばかりに売り渡されたからだ。

    「おじーちゃん、こんなとこで油売ってていーんですか。秘書さん困ってんじゃないのー。」
    「なに、ちと鶴に用事があってな。それが済めば戻る。会議にも間に合うし問題なかろう。」
    こちらの嫌みもスルリとかわし、三日月教授は俺の所属する脳血管センターの長を待つつもりらしい。

    ほんっとめんどくせぇ。

    俺の勘だが、この狸はうちのセンター長である鶴丸国永と好い仲だ。センター長の前では花でも舞うのではないかと思うくらい上機嫌になるからだ。しかもたまに一緒に出勤してくる。

    正直今のポジションに不満があるわけじゃないんだけど。俺の周囲って癖の強い奴が多すぎないか、と辟易する毎日だ。

    「…は?」
    PCのメールソフトを起ち上げた俺は、最初に目に飛び込んできたメールの本文を読み、思わず声を上げてしまった。
    珍しく連休だったから、メールを起ち上げたのは3日ぶりだ。そしてメールの受信日時は3日前の夜中。
    「嘘だろ……」
    「あなや、何か問題か?」
    うきうきした面持ちでセンター長を待っていた狸、もとい三日月教授も、俺の様子に声をかけてくる。
    返事もそこそこに、自分に悪態をつきたくなる。
    なんで休みの日にメールを確認しなかったんだ。自分に腹を立てながら、この後の流れを算段する。
    「おじーちゃん、俺今日午後休ほしいんだけど。」
    「珍しいな、お前が当日に申し立てるなど。」
    「うん、ちょっと急用で大事な用事ー。」
    「しかしな、お前もそこそこ立場のある身で、皆に示しがつかぬだろ」

    あんたの方が示しがつかないよ!!!

    っていう俺の心の叫びは、狸ジジイには全く効かないだろう。あんた、会議まであと何分なんだよ。

    「おはよーさん、と。こりゃ驚きの組合せだな。」
    三日月教授が渋る中、鶴丸センター長が現れた。手には分厚い資料を持っている。
    「遅かったではないか、鶴や。」
    「ちょっと新たに編成したERのことでな。」
    そう言って、センター長は持っていた資料をドサリとデスクに落とした。
    少し前に救急科で、医師の世代交代があった。
    院内では、長らく副診療科長だった日本号先輩の昇進間違いなしとの見立てだったが、新たにトップに立ったのは系列病院から来た医師だった。
    腕は立つが、派手が信条だと何かとやかましいその医師は、意外にも日本号先輩とはウマが合うようだ。だけどその容赦ない指導に若手がついていけていないって、問題になってたはずだ。
    「人員不足で厳しいって話さ。」
    センター長が嘆息しながら言った。
    「藤が峰病院だっけ?あっちからは応援頼めないのー?」
    「看護師の派遣は叶いそうなんだが、あちらも医師は難しいらしい。若手で優秀な奴が何人かいたはずなんだがな。」
    「せっかくなのだ。こちらにも前途有望な若手が欲しいものだな。」
    珍しくまともな顔で、三日月教授が呟く。まぁ、理事としては医師不足は避けたいよねー。ただでさえハードなシフトなんだから。

    「あ!鶴丸さん。俺今日午後休もらってもいい?」
    急ぎの事案を思い出した俺は、三日月教授を無視して、センター長に問いかける。
    「なんだ。連休じゃ足りなかったか?」センター長も不思議そうな顔だ。
    「どーしても外せない用事ができたんだ。俺の一生のおねがーい!午後休無理なら刀医に出張でもいい!それで用事は済むからさ。」
    「ふむ。ならば俺の代わりに三日月を送り届けてもらおうかな?」
    「え。」「鶴やー!」
    俺のげんなりした声と三日月教授の悲壮な声が重なる。
    「急な取材が入っちまってな。リモートで済むから業務に大きな支障はないんだが、あちらさん、なんとか夕方のニュースに間に合わせたいらしい。」

    すっかり臍を曲げた理事を、センター長は会議室まで送り届けるお役目を賜ることで、懐柔した。その前に『貞坊から聞いたぞ。』って低い声でセンター長が言ったら黙り込んでたから、おじーちゃん、なにかやらかしてたんだな。
    刀医の学生たちから言われてる『泣く子も黙る三日月宗近』のイメージ台無しだよ。

    内線で呼ばれた俺も、途中まで二人と連れ立って歩く。午後の不在は燭台切先輩に引き継ぎお願いできるかな。今度埋め合せしなきゃな。
    そんなことを考えていた、ちょうどその時だった。

    「Hey,Kiyo!!」

    嘘だろ。聞きたくない。脳が音を遮断してくれたらいいのに。

    「なんだ?」
    「キヨ、ってお嬢のことか?」
    先を行く三日月教授も鶴丸センター長も振り返る。頼むから無視してよ。

    病院内はお静かに!って看護師さんに注意されて、ヘラヘラ謝る黄色い頭が視界の端に見えた。

    間違いない。あいつだ。
    動けない俺の元に、ガサツな足音が急速に近づいてくる。

    「逢いたかったぜSweetie!なんでメール無視するんだよ〜!」
    ガシッ!と音が聞こえるくらいに羽交い絞めにされる。
    「やだ、お前何しに来たの!はーなーれーてー!!」
    「あなや」
    「こいつは、驚きだぜぇ。」
    三日月教授も鶴丸センター長も流石にポカンとした顔でこちらを見ることしかできない。
    「おじーちゃん!鶴丸さん、たーすーけーてー!」
    俺の必死の形相に、ようやくセンター長が動いてくれた。
    「あー、ちょっと離れるか。きみ。」
    思いのほか強い力で俺を引き離してくれた鶴丸さんに思わずしがみつく。
    「Huh?あんたキヨのなに?」
    不満そうな声色でセンター長を睨みつける、その姿を改めて確認する。
    最後に会った時と変わりのない、派手な金髪に黒ずくめの細身。
    「何って言われてもなぁ。お嬢の上司で保護者ってとこか。」
    センター長はしがみつく俺の頭をぽんぽんしながら、不敵に奴の方を向く。
    隣のおじーちゃんがちょっと不服そうなのは、この際見ないことにしておこう。
    「俺の名は獅子王。」
    ふんす!と胸を張るその姿は留学時代と変わらず、謎の自信に満ちていて腹立たしい。
    「騒がせてごめんなさい。留学してた時の同僚です。」
    「同僚⁉俺はお前の…「断ったから!その話!」」
    獅子王は俺の言葉に異を唱えようと声を張るがそんなの聞いてられない。
    あぁ、もう。看護師さんも医連の事務員さんたちもガン見してんじゃん。
    三日月教授は興味深そうに獅子王を見ている。センター長はさすがに人の目を気にしてくれたようだ
    「ここでは目立ちすぎるな。空いてる会議室行くか。」
    そう言って獅子王を促し、移動を始めた。

    「して、獅子王とやら。お前働き口を探しに来たとな。」
    「そうだぜ!じっちゃんも年だし、そろそろ俺が面倒みてやらないとな!」
    会議室に通されて、獅子王は本丸病院へ来たいきさつを話した。
    帰国した俺に何度も連絡したが、一向に返事がなかったこと。(正直二度と会うつもりもなかった)
    俺の勤務先をこの1年血眼になって探したこと。(はっきり言って寒気がした)
    日本在住の祖父が勇退したので、帰国して祖父の面倒を見ようと思っていること。(昔から爺ちゃんっ子だって同僚たちが言ってたな)
    俺が今朝確認したメールの本文には、今日、本丸病院を訪ねる旨が書かれていた。

    「お嬢、彼はカナダ研修先での同僚だったって言ったよな?」
    嫌な予感しかしないが、センター長の問いに答える。
    「ソレナリニ優秀デシタ。」
    実を言えばそれなりどころではない。この破天荒な性格に似合わず、こいつの医師としての実力・判断力に、何度敵わないと悔しい思いをしたことか。
    ふむ、と思案していた三日月教授はセンター長に向き直り、衝撃の一言を放った。
    「鶴や。件のER、若手が欲しいと言っておったよなぁ。」
    「おいおい。きみ、本気か?」
    さすがのセンター長も呆れ気味だ。でもきっと、教授の言うことに異を唱えることをこの男はしない。
    「加州の嬢はほんに拾い物よのう。」
    三日月教授はそれはそれは美しく微笑み、俺はそれをただただ背筋が凍る思いで見ることしかできなかった。

    こうして俺の獅子王の襲撃から逃げる計画は失敗し、上機嫌な三日月教授を刀医まで送り届ける損な役回りだけが残った。
    「おじーちゃんさ、最終的には何を目指してるわけ。」
    「ふむ。とりあえずあの大学は掌握しようかと思うてな。」
    ヤケクソ気味で話を振った俺に、三日月教授は至極まじめな面持ちで爆弾発言をかましてきた。
    「うえぇ。知ってたけどさ、あんた結構黒いよね。」
    「一般家庭出身のお前が頂点に上り詰めるもの、一興ではないか?嬢よ。」
    「あれー?そういうこと言っちゃう?」
    「刀医を鶴へのぷれぜんとにでもしようかのぅ。」
    「…多分鶴丸さんは大学なんて欲しくないし、全力で断られるから。もうプロポーズだけ早めにしたら?」
    「あなや。嬢にもバレておったか。」
    「気付いてたでしょ?てゆか、隠す気ないじゃん。」
    「はっはっは。年甲斐もなく浮かれておっての。」
    この二人に何があったのか、俺には知る由もない。
    ただ、三日月教授も鶴丸さんもなんだかんだ言いながら、俺のやることを見守ってくれている。癪だけどそれだけはわかってる。
    「おじーちゃんの期待に応えられるような下剋上、頑張りまーす。だからさ、ちゃんと元気でいてよねー。」
    三日月教授は目を丸くして、もう一度『はっはっは』と愉快そうに笑った。

    後日、正式にERに入局した獅子王は、診療科長にも副診療科長にも可愛がられているらしく、よく3人で食堂にいる姿を見かけた。長身の2人に囲まれるその姿が小動物のようだと、女子職員の癒しになってるらしい。

    俺はといえば、獅子王の襲撃をかわしつつ、業務に奔走している。大学も病院も思い通りになることなんて少ないけど、日々修行ってね。

    「そんな面白いことになっているんだったら、見に行けばよかったな。」
    騒動の時間は仮眠室で寝ていたと言う同期が、珍しくニヤリと笑ってそんなことを言った。
    こっちの苦労も知らないで。お前のおかげで、俺の毎日大忙しだよ。
    思わず叫んでやった。
    「ほんっと俺の周りって面倒な奴らばっか!!」
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    DONEちゅきこさんの【Dom/Subユニバース】『COLORS』シリーズ設定の獅子王×加州SSです。本編メインカプは🍯🌰ですが、こちらは🌰の高校の先輩獅子王くんと🍯さんの同僚加州くんの話。
    チラチラ本編のネタばれアリ。また、D/S初心者の勝手な解釈がてんこ盛りの何でも許せる方向けの極みですので、自衛お願いたします。

    ちゅきこさん、いつもありがとうございます✨
    カサナル、ココロ「痛っ・・・!」
    思わす体がこわばったのは、恋人にも伝わっただろう。
    幾度目になるかわからぬお泊りの夜。
    獅子王は今夜こそは、と内心期待をかけて、加州清光の家へ足を踏み入れた。

    一目惚れから始まった交際はそろそろ半年になる。
    お互い、いい大人だ。もう一段階踏み込んだ関係になっても何も問題はない。そう思っていた。

    何の予定もない週末を控えた金曜日。獅子王は意気揚々と加州のマンションに現れた。手土産にデパ地下のデリでつまみを買ってきた。加州が好きだと言っていたブラッスリーのバゲットは、獅子王の会社からここまでの道のりにあるので、毎週立ち寄ってしまう。
    出迎えた加州が用意した、青江にもらったというチーズをバゲットに合わせ、加州が最近気に入っているという蜂蜜ワインを相伴に預かる。こっくりとした味わいもいいが、やっぱビールが一番だ!と宣うと、呆れたような、それでいて優しさのにじみ出る笑みを浮かべる加州。いつもと変わらない夜だった。
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