その愛は一.
待ち焦がれた恋刀の顕現に、浮かれている自覚はある。
人の身を得たばかりのあれは、何事にも驚きを見出しては、顔を綻ばせる。
着替えや食事、生活のいろはをあれが何も知らないのをいいことに、俺が一から仕込むのだ。
「きみにこんなことまでさせるのは、さすがに忍びないなぁ」
行き過ぎた俺のやりように本能的に違和感を覚え、戸惑う姿すら愛い。
本丸の刀も増えたことだしと、主に部隊の再編を進言する。当然のごとく、同じ部隊に納まった。
お前さえいればよいのだ。掌中の玉を目の届かぬ場所になどやらぬ。
何か言いたそうな初期刀殿のことは、さらりと見ないふりをした。
その愛は蒼炎。
二.
共に二振り目。練度はいつも僕が三つ下。僕らの一振り目同士は、誰が見ても相愛だ。だけど僕らはー
「伽羅ちゃん」
名前を読んでも、返されるのはすげない視線だけ。遠征部隊は別のことが多いから、君に会えるのは貴重なのに、今日も近づいた分だけ遠ざかっていく。
慣れ合うことを厭う君らしい。同じ刀でも一振り目の彼とはこうも違う。
でも、僕に諦める理由はない。
すぐに練度も追いついて、君に並ぶ。そしていつか君をこちらに向かせるよ。
本丸の増員と共に告げられた、部隊の新編成。ようやく君と同じ部隊だ。
覚悟しててね、伽羅ちゃん。
その愛は不屈。
三.
僕が顕現した時には、彼らは既に出会っていて、第一部隊を率いる中心的存在だった。
二振り目の僕は、遠征部隊を率いる役割を得た。本丸に不在がちで、他の部隊について多くを知り得ることはなかったけれど、彼らが互いを信頼し、特別な関係を築き上げていることくらいは察せた。
「雅かどうか」が初めて基準ではなくなった。ただ憧れた。
けれど、二振り目以降の青江は部隊に配属されることなく、一振り目に習合されていった。
事情も知らず、今日も青江は顕現しなかったと落胆していた自分がなんとも滑稽だった。
渇望を覚える。何故青江なのか。答えはどこにもない。
ある日、初期刀殿と近侍をしている一振り目の青江に呼ばれた。
部隊再編のため、練度の上限に達した刀については、二振り目以降を育成するそうだ。
連れてこられた蔵には、実に八振り目の青江が眠っていた。
「同じ部隊に配属だって。よろしくね」
僕の姿を美しい瞳に映した彼は、その名の通り、にっかりと笑った。
その愛は傾倒。