独白「なんだ…………俺でも、人を好きになれたんだな」
夕焼けの相談所に、ポツリと泣きそうな声が揺蕩う。受付に置いたままにしていたレポートの資料を取りにきた僕は、ドア越しにそれを偶然聞いて、動揺した。
(師匠の、好きな人)
根拠なんてないけど、師匠の一番の好意は、僕だけに向けられているのだと信じていた。その好意の種類が、恋愛感情だと思ったことはなかったけれど。
恋がもたらす感情は、強烈だ。あの師匠が、泣きそうになる程好きな人が、この世界のどこかにいる。そう考えると、師匠が遠くなったように感じた。
(嫌だ)
鼓動が速くなって、苦しくなる。子供じみた感情が、僕の心を容赦ない力で握りしめてくるようだった。でも、その時。
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