とける ピンクと青。
絡めあえば紫になるんだろうか?
なんて。
興味本意で歌姫に問いかける。
さあ、と呟いて歌姫は出店で買ったかき氷を混ぜ、ストローの先が平たくなったスプーンでかき氷をすくうと、はい、とそれを俺に差し出した。
歌姫が差し出したそれは青いシロップがかかってる。その行動に面食らう。
「いらないの?」
なんだか怒った口調で言う歌姫に、いる、と即答して差し出されたかき氷を食べる。
間接キスだな、なんて思えば、味なんて大して変わらないはずなのに、自分のものより甘く感じた。
「紫になった?」
舌を出せば歌姫が首を横に振る。
「一口じゃ無理じゃない?」
そう言ってクスクスと笑う。
催促するように口を開ければ、歌姫が次から次へとブルーハワイ味のかき氷を俺の口に放り込む。
吐き出すわけにもいかず飲み込めば、ものの見事に三叉神経が刺激され、頭にキーンとした痛みが走った。
それを見て歌姫が笑う。
「最強の男も氷には弱いのね」
「ツッコミすぎなんだよ」
「まだ、食べる?」
「いらねーよ」
俺の言葉にクスクス笑いながら歌姫がかき氷をすくって、自身の口に運ぼうとする。
口に触れる直前で、思わずその手を掴んだ。
俺が口に含んだ無機質な物が先に歌姫の口内に触れることに酷くムカついた。
真意を知ればきっと歌姫にまた笑われる。それでも俺は自分の気持ちを止めることはできなかった。
「なぁに?やっぱり食べたいの?」
歌姫が首を傾げて俺を見る。
「うん」
「仕方ないなぁ」
柔らかに笑う歌姫に募る感情。
パクッと食べて、歌姫の手からかき氷を奪い取る。
キョトンとする歌姫に舌を出す。
「どう?」
「うーん、紫っていうか、ピンクに青が重なった感じかしら?」
「歌姫の舌は?」
そう言って見せられた舌は青に染まっている。
「なあ?」
「ん?」
「俺と歌姫の舌絡めたら、紫になるのかな?」
直接的な言葉に歌姫が頬を赤くして目をそらす。
「……バカ」
「試して、い?」
華奢な肩を抱き寄せて、頬を撫でる。
潤む緋褐色が俺を見上げた。
「やだ、って言ったら、聞いてくれるの?」
「歌姫が本気で嫌ならしない」
「じゃ、やだ」
歌姫の言葉に喉奥で笑う。
本気で嫌なら歌姫なら平手打ちの一発でも食らわすくせに。
付き合い始めて三か月。
年上の彼女のツンデレ具合もだいぶ理解したと思う。
「照れるなよ」
額と額を合わせてそう言えば、頬を膨らませる。
「……照れるわよ」
そう言いながら首裏にまわる細い腕。
「いい?」
「いちいち聞くな……」
「はいはい」
「はいはいっか、ん……」
言いかけたお小言を、文字通り唇で塞ぐ。
遠くで花火の音が聞こえた気がした。