貴方は貴族「300米?」
鯉登は素っ頓狂な声をあげた。
「300米先の人間の頭と胸の狙いなど、角度の差にして1度にも満たないぞ? 恐ろしい精度の射撃だな……機械よりも正確なのではないか」
尾形はうっそりと、絡んできた新任の上官を見上げる。
「角度とは?」
「三角関数だ」
「……申し訳ないですが、無学なもので、仰ることが今ひとつ」
「距離と高さから斜辺の角度を出す。あるいはその逆だ。工兵はやるだろう? 三角関数を知らないということは、理屈でなく純粋に技術のみなのか。ほんとうに機械のようだ」
尾形はがりがりと後頭部を掻いた。
「理屈を知っていても実践できなけりゃ意味ないでしょう」
「勿論だ。だが兵器の精度を上げることはできる。そうすれば練度の低い兵でも今の尾形のような射撃ができるだろう」
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