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    緘黙_

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    緘黙_

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    前に言ってたやつ、ようやく書き始めました。すみません。

    あなたの言葉がわからない ある朝気がかりな夢から目ざめた悠真は、ベッドの上で硬変した己の腕をその瞳に映した。甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、不気味な結晶がテラテラと光っている。鋭利な結晶が掛け布団をすっかり押し潰して、その刃面で切り裂かんとしている所だった。普段の大きさの二倍ほどもある硬質な足が、眼前に燦然と鎮座していた。
    (な、なんで、)
     動揺した声は震えていたが、生憎夢ではない。少し小さすぎるがまともな自室が、よく知っている四つの壁のあいだにあった。ローテーブルの上には昨日飲んだままのptpシートが散乱していて、上方の壁では時計が無機質な時を刻んでいる。

     悠真の視線はのろのろと窓へ向けられた。陰鬱な天気はすっかり憂鬱を連れてきて、雨垂れが窓枠に突貫する反響音を聞いていた。もう少し眠り続けたら、こんなバカげた幻想を忘れてしまったらどうだろうかと考えたが、そうは問屋が下さなかった。というのも、彼は右下で眠る習慣だったが、いくら身体を捻っても仰向けの姿勢にもどってしまうのだ。百遍もそれを試みて、油の切れたような関節がきしきし啼くのを聞いていた。
     馴染んできた身体を操って床に足を下ろす。エーテルに覆われた爪先がフローリングに突き刺さって、ミシリと音を立てた。驚いて飛び退るも、新たな穿孔を生むだけだ。そろりそろりと這いながら、鏡のある洗面所へと向かう。いつもより低くなった天井に、気を付けながら上体を起こす。鏡の中には空虚なコア越しにこちらを見つめる化物がいた。
    (……ッ‼︎‼︎)
     はくはくと口が戦慄くが鏡像には何の動きもない。現実なのか、とうとう運命に追い付かれる日が来たのか、混乱する脳をシャットアウトするように、ぶつりと意識が切れた。


     妙な夢を見た気がする。ベッドの上で目を覚ました悠真は、黒い結晶を生やした己が身体を目の当たりにした。甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると不気味な結晶がテラテラと光っている。鋭利な結晶が掛け布団をすっかり押し潰して、その刃面で切り裂かんとしている所だった。普段の大きさの二倍ほどもある硬質な足が、眼前に燦然と鎮座していた。動揺から不気味な足を引き寄せようとするが、布団を切り裂くだけに終わった。暗い部屋に埃と羽毛が舞う。

    (な、なんで、)
     ガチガチと震える奥歯もなくなっていた。見知った内装、見知った家具。ローテーブルの上には昨日飲んだままのptpシートが散乱していて、上方の壁では時計が無機質な時を刻んでいる。
     悠真の視線はのろのろと窓へ向けられた。土砂降りの雨がカンカンと窓枠を叩いて、すっかり眠気を取っ払ってしまった。諦めて床に足を下ろす。油の切れたような関節がきしきし喚いていた。

     エーテルに覆われた爪先がフローリングに突き刺さって、歪な穿孔を産む。おっかなびっくり這いながら、鏡のある洗面所へと向かった。小さくなった空間に気を付けながら上体を起こす。鏡の中には奥歯を震わせながら真っ青な顔で見つめ返す自分がいた。
    (……ゆめ?)
     そうだ、そうに違いない。ホロウ外で急にエーテリアスに急変することなどあり得ないのだ!だからこれは悪い夢で、はやく、覚めなきゃ
     処理能力を超えた脳は、ぶつりと意識を落とした。


     首筋を伝う脂汗に、悠真は跳ね起きた。まるで自分がエーテリアスに変貌したような、妙な夢を見た気がする。いつも通り右腕を下にして就寝した筈なのに、いつの間にか仰向けの姿勢になっていた。震える手で掛け布団を捲る。見慣れた夜着に包まれた肌が、粟立ちながらそこにあった。見慣れた自室は生き物の気配を感じられない。無機質な時計の針が、七時を指して催促している。
     窓のサッシには雨粒がへばりついていて、昨夜の驟雨を表すようだ。きしきしと煩い関節は油の切れたブリキのようだ。

     柔らかな爪先がフローリングにそっと下ろされる。青く透けた肌は柔らかで、冷たくとも生物の温度を保っていた。ぺたぺたと間抜けな足音を立てながら、洗面所へと向かう。もう何年も暮らしているのに、大きく感じる空間に違和感を覚えた。
     人工的な電灯に照らされた鏡には、化物でも見たような顔の自分がいた。
    (いつも通りだ。夢見が悪いのも、心臓が不自然に跳ねるのも、全部いつも通り。)
    蛇口を捻って冷水に頭を突っ込む。管理された雨が急速に身体と心を冷やしていく。夢だ。ただの悪い夢。芯が冷えて震え出しても、幽鬼のような面持ちは、変わらなかった。
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    緘黙_

    PROGRESS前に言ってたやつ、ようやく書き始めました。すみません。
    あなたの言葉がわからない ある朝気がかりな夢から目ざめた悠真は、ベッドの上で硬変した己の腕をその瞳に映した。甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、不気味な結晶がテラテラと光っている。鋭利な結晶が掛け布団をすっかり押し潰して、その刃面で切り裂かんとしている所だった。普段の大きさの二倍ほどもある硬質な足が、眼前に燦然と鎮座していた。
    (な、なんで、)
     動揺した声は震えていたが、生憎夢ではない。少し小さすぎるがまともな自室が、よく知っている四つの壁のあいだにあった。ローテーブルの上には昨日飲んだままのptpシートが散乱していて、上方の壁では時計が無機質な時を刻んでいる。

     悠真の視線はのろのろと窓へ向けられた。陰鬱な天気はすっかり憂鬱を連れてきて、雨垂れが窓枠に突貫する反響音を聞いていた。もう少し眠り続けたら、こんなバカげた幻想を忘れてしまったらどうだろうかと考えたが、そうは問屋が下さなかった。というのも、彼は右下で眠る習慣だったが、いくら身体を捻っても仰向けの姿勢にもどってしまうのだ。百遍もそれを試みて、油の切れたような関節がきしきし啼くのを聞いていた。
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