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    みこう

    @mikou0213
    主に作業の進捗を投げる用。たまに落書きとか

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    みこう

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    ##凪茨小話

    過ぎる季節に身を寄せて 春といえば桜の季節だ。この時期になると、茨はアイドルとしてのイベントはもちろん、各業種でこの時期に備えて準備してあった季節限定商品やイベントの反応を見るので忙しくなる。凪砂や日和が学園を卒業してコズプロ所属のアイドルに専念する立場となって初めてのライブにも、それはもう力を入れていたように思う。そういった、ただでさえ忙しい彼はESにおける新体制を軌道に乗せることに夢中で、凪砂は放っておかれることが増えた。一部の上層を排除して彼の手駒を入れたこともあって業務の一極集中などは起こっていないものの、そもそも茨自身が前線で戦う事を好んでいるのだ。いつ見ても楽しそうに悪だくみしており、それを可愛いと思う反面、面白くないとも感じている。
    「……茨」
    「はいはい、なんでしょう!」
     仕事が終わった後の送迎社内で、隣に座っている茨に声をかけた。声をかけたと同時に返ってくる返事は元気だが、その目線はタブレットに注がれたまま。下校途中の彼を拾ってきているので、授業中に溜まったメールでも確認しているのだろう。今日はソロでの仕事だったが、偶然にも現場が秀越学園の近くで、これまた偶然にも茨の下校時間に近いタイミングだったのだ。
     そういった偶然が重なって茨と共にESビルへの帰路についているのだが、肝心の彼はタブレットに心を奪われたままだ。
    「……楽しそうだね」
    「それはもう! 叩けば埃が出るものを好きなだけ叩けますので。いやあ、モグラ叩きに夢中になる大衆の気持ちってこんな感じなんですかね! 生きてると実感いたします!」
     茨の仕事を中断させてまで済ませるべき用件も無く、見たままの感想を漏らした凪砂に茨の満面の笑みが向けられる。楽しそうなのはいいことだ。
     どうやら今日も構ってもらえないらしいことを察して、外を流れていく風景に目を向けた。
    「あ、すみません。二つ先の信号で右に曲がってください」
     ビル群に心惹かれるものはなく、ぼんやりと外を眺めていた凪砂の横から茨の声が響く。タブレットに夢中だったのではと思うと、彼はイタズラを企む子供のような表情を浮かべていた。
    「桜が見頃だそうですよ。五分しかとれませんでしたが、平日ですしそこまで人もいないでしょう」
     仕事の帰りに偶然みつけた穴場らしい。サプライズというにはささやかなそれに微笑ましいものを感じて、凪砂も笑い返した。
    「……いいね」
     花より商機の彼であるが、なんにせよ共に季節を感じるのも悪くない。
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