Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    みこう

    @mikou0213
    主に作業の進捗を投げる用。たまに落書きとか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 27

    みこう

    ☆quiet follow

    ##凪茨小話

    平身低頭の猫被り 好きだと言うと、茨は決まって「自分などには勿体無い」と言う。
     いつだったか自分は愛される資格が無いと言っていたのを覚えているが、その言葉の在り方が想像とは違うニュアンスを含んでいると気付いたのはつい最近だ。
    「愛してるよ、茨」
    「自分も閣下を敬愛しておりますよ! 敬礼〜!」
     この言葉を茨に告げるのは、およそ二ヶ月ぶりになるだろうか。凪砂の誕生日に向けてイベントの企画などを張り切って行っていたので、可愛いなと思っているうちにポロリと落ちてしまっていた。
     頭がまだ仕事モードなのか、機敏な動きで振り返って敬礼して、キチッと静止してから姿勢を崩す。彼の様子は驚くほど普段通りで、かつて可愛いと言われたくらいで訴訟だなんだと慌てていたのが懐かしくなってしまう。
    「……茨は、まだ自分が愛される資格を持たないと思っているのかな」
    「まあ、こんな最低野郎ですから。推して知るべしというものです」
    「ふぅん」
     凪砂の言葉に少し首を傾げて、やはり彼はニヒルに笑う。その顔は、虎視眈々と獲物を狙う獣に似ていた。
    「茨が欲張りなのは知っているけど──」
     座っていたソファから腰を上げて、茨へと歩み寄る。凪砂の様子に気付いた彼がタブレットを机に置くよりも早く、その手を取って引き寄せた。
     腕の中に収まる彼との体格差は出会った時と変わらなかったが、彼の内面を知った今ではその双眸がいかに遠くを鋭く見据えているかがわかる。冷たく光っていると思っていた茨の瞳は、一万の火花が散っているのだ。
    「君の求めるいただきは、私よりも高みにあるのかな」
     幼い頃、自分が愛されなかったのは最下層にいるからだと考えた茨は、その資格を得るために高みを見ている。どこまでも上り詰めて、自分の力でそれをもぎ取ってやるのだと、かえって燃えるのが茨という男であった。
     彼の闘争心と向上心は強く、きっと現代社会で安らかに生きるだけでは息苦しくなるだろう。そういう意味だろうと気付いたのは、茨を誰よりも近くで見ていたからに他ならない。
    「私以上に君を愛せる人、本当にいると思ってる?」
     そんなわけがないだろう。そう確信して顎を掬い上げる手を拒まれないのが、なによりの答えだ。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💞💞💞💞💞💞💞💞💞💘💖💖💖💖💖💖💖💖💞💞💞💞💕💞😍💕💞
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works