「なにをしているんだ、卿は……」
その日もまどろんでいた。城の外に出れないとなると、暇な時間ばかり持て余してしまう。たまには部下を見に行きもするが、この城のなかでは実際に足を運ばなくても様子が分かってしまうのがいけない。うとり、うとりとまどろむ時間は増え続けていた。そう、まどろんでいたのだが。
ぐ、と半身に重みがかかったのに、自然と意識が浮上する。いつぶりの覚醒だろうか。まばたき一つのようにも、永遠にさめぬのかと思う程長かったようにも思える。
そうして、自身にぺっとりとひっついて眠る男を視界に移して、あきれた表情を浮かべたのだ。
「今日はニートの日なので」
それ以上口にするつもりはないらしい。この友人はそこそこに愉快な思考回路を持っているので、またなにかおかしなことを思いついたのだろうなあとすこし笑う。
「なんだ、休暇だとでも?」
「この世で私が一番せわしなく動き回っているのだから、こんな日くらいは休んでも良いと思うのですよ、獣殿」
そういうものだろうか。しかしそれはおおむね自業自得と言うのではないだろうか。なにせ自分の都合であれこれと暗躍しているのだから。
「そうか、私はひとりで寝たいのだが」
声をかけてみても反応はない。眠ったとも思えないので、狸寝入りだろうとは思うものの、変につつくのも面倒だった。既視感がうずいて、こうささやくのだ。
こういう時のこの男は、ずいぶん面倒くさいと。
ならばもう知らぬふりで、眠るしかないだろう。