人魚の恋デザインが好きだ。
何かをこの何も無い手から作り出す喜びは何ものにも代えがたい。
天職だ…なんておこがましいから、せめて『好きこそものの上手なれ…故の職業』位は言い張りたい。
懸命に、誠実に、仕事をこなしていく。
いつかアトリエを持って、自立してブランドを立ち上げるのが夢。
三ツ谷孝の毎日はめまぐるしく走り続ける事で前へ、前へと進む。
努力して手に入るものならば、努力を惜しんでどうする?
それこそ呆れるほど。山のようにある。
だからデザインの専門学校のツテで雇って貰ったデザイナーのアシスタントとして懸命に働く毎日を送っていた。
毎日が死ぬほど充実して、死ぬほど忙しかった。
どう足掻いたって、背伸びしたって、手に入らないものはこの世の中に沢山ある。
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