幽霊みつやとたいじゅくん#2【月曜日】
昨夜の出来事は頭がイカれた俺の幻覚、もしくは夢であれと願いながら重い瞼を上げたが、あいにく現実であった。目を開けた先にニコニコとだらしねえ顔で笑う三ツ谷の姿。ベッドに頬杖をついて「おはよ」と上機嫌なこいつは、もしやずっと俺の寝顔を見ていたんだろうか。見ていたんだろうな。昔もこうして俺が目覚めるのを飽きもせずじっと待っているような奴だった。
「相変わらずかわいい顔で寝てんね大寿くん」
「うるせえド突くぞ」
「ははっ寝起きの機嫌が悪いのも変わらねえ」
朝っぱらから鬱陶しく絡んでくる三ツ谷の横を抜け洗面所へ向かう。強く蛇口を捻れば水滴が服に飛んでシミを作った。……俺が変わらねえのなんて当たり前だ。俺はいっそ哀れなほど何一つ変わらなかったというのに、三ツ谷だけが変わっていった。不良にしては周囲から常識人扱いされていた三ツ谷は完全に闇に身を沈め、犯罪に手を染め、そして死んだ。
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