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    paferatte_

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    一番最初に書いたルキノトをテスト用に再投稿です

    ##ルキノト

    愛していると伝えれば

    出会って暫くは無反応だった。何も映さない瞳でただ一言、そうですか、と言う日もあったが、それだけだった。信じていなかったのか。興味がなかったのか。あるいは両方か。その時点では脈があるとは微塵も思っていなかったが、それでも心は惹かれ続けた。
    それから彼は目を逸らすようになった。表情筋は相変わらず死んでいたけれど。言葉も相変わらずつれなかったけれど。伝えた感情に何かの反応が返ってくる。それだけで飛び上がりそうなほど嬉しかったのを覚えている。
    ある日、揶揄わないでと言われた。揶揄ってなどいない。本気だと伝えた。君を愛しているのだと。彼は何度か瞬きをしてから俯くと、踵を返して逃げてしまった。去り際に見えた耳の赤さに、私も顔が熱くなってしまったのは仕方がないだろう。
    それからも少しずつ反応が増えていった。彼の心はおかしくなってしまったとか。彼の表情は偽物だらけだとか。そういった話を多々聞いていた事が信じられないくらい。ある時は頬を朱に染め。またある時は唇をきゅっと噛み。私の言葉に心を動かしてくれた。
    そうして今、目の前にいるノートン・キャンベルは。首まで真っ赤に染め上げながら、決意の籠った瞳で私を見上げている。
    「……ぼ、僕もだよ」
    そのたった一言を発するのに彼は数十分もかかった。途方もなく長い時間をかけて、彼は私の為に愛の言葉を紡いだのだ。これを幸せと言わずしてなんと言う。
    「ああ、ノートン……ノートン……嬉しいよ……何度この日を夢に見た事か……」
    心の臓が締め付けられて痛い。この歳にもなって視界が潤むのを感じるとは。狂おしくて温かい感情にゆったり浸かっている、そんな気分だ。恐ろしい麻薬に支配されているようでもある。
    「待っていてくれて、ありがとう」
    そう言った彼の顔は、喜びと愛に満ち溢れた、きっと誰にも想像出来ないであろう、生きているノートン・キャンベルのものだった。
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