九、背中(確認) まだ、指先が甘く痺れている。小竜はうっすらと目を開けている。やがて意識がはっきりしてくると、気だるい身体を起こした。目の前に先に起きていた大包平の裸の背中がある。小竜はぼんやりとした頭のまま、大包平の背中にもたれかかる。
「どうした?まだ眠っていていいぞ」
「起きちゃったから」
大包平の背中にもたれかかったまま、小竜が言う。ふと向けた視線の先に、自分が引っ掻いた痕を見つけた。大包平に愛された証拠だ。小竜はその背中の痕に唇を当てた
「小竜?」
背中にかかる小竜の体重を感じて、大包平は首をひねって小竜を見る。小竜は背中の真ん中のあたりに額をつけているので、大包平からは、はねた髪しか見えなかった。
「うん。いや、なんかその……」
ぐりぐりと小竜は触れていた大包平の背中を額で押す。
「好きだなって思って」
すこし頬を赤くしながら、小竜が言う。
「俺も好きだ」
正面に顔を戻していた大包平は、背中を撫でる小竜の細い髪を感じながら、笑顔で言った。
「うん。知ってる」
小竜は大包平の腰を両手で抱きしめる。
「俺も知ってる」
示し合わせたように、二人は声に出して笑った。
想いあっているなんて、そんなことは知ってる。それでも、その言葉が聞きたくて、何度も何度も確かめてみる。
「ねえ、大包平。もう一回好きって言って」
小竜は大包平に回した両手にぎゅっと力を入れる。
「何度でも言ってやる」
大包平は小竜の腕を外して、小竜と向き合う形になる。彼は、大きな手で小竜の両頬を包んで言った。
「おまえが好きだ小竜」
じっと大包平が小竜の紫の瞳を見つめて言った。
「俺も大包平が好きだよ」
小竜も大包平の銀の瞳を見ていった。そして、小竜は大包平の背中に手を回す。ぐいっと大包平の手も小竜の背中に回って抱き寄せた。
「小竜、好きだ」
「大包平が好き」
こつんと額をあわせて、お互いを見つめあったまま、また繰り返す。大包平の顔が近づいて来たので、小竜は目を閉じた。
大包平は、声には出さずに
(愛してる)
と唇だけで囁いて、小竜の唇をふさいだ。