ねこみっち小ネタ 武道がいつも通りキャットタワーの上で寛いでいた時だ。三途が仕事から帰ってきたらしく、ドアを開けリビングへと入ってきた。
最上階からひょっこりと顔を出し、おかえりと一鳴きしようとしてぴしりと動きを止める。
「おいくそドブ。帰ったぞ」
「……」
「……? おい?」
普段ならマイキーや鶴蝶程でないにしろ、ちゃんと出迎えをしてくれる武道がやってこない。キャットタワーの上からじっと三途を見るだけで、全く動こうとしないのだ。
小首を傾げつつキャットタワータワーへと近づいた三途は、武道を持ち上げようと手を伸ばす。
「シャーーーッ!」
「…………あ?」
その手を爪を立てていないとはいえ中々の力で叩かれ、さらには思い切り牙を向かれた。体をぎゅっと縮こまらせ明らかに拒絶している様子の武道に、三途はその体勢のまま固まる。
一体何が起こっているのか、呆然と立ち尽くす三途を見ていたココがその姿を哀れに思ったのか声をかける。
「あー……三途。多分だけどオマエ、よそで猫触ってこなかったか? もしくは犬」
「あ? よその猫なんて興味ねぇよ」
「触ってねぇの?」
「……擦り寄られはした」
「それだ。オマエ、マーキングされてんだよ。だからボスが怒ってんの」
「マーキング……?」
言われてみれば確かに、取引先にいた猫がやけに足元に擦り寄ってきていたなと思い出す。
つまりあの時三途は勝手にその猫にマーキングされ、そのせいで武道に威嚇されたらしい。
「……風呂入ってくる」
「着替えも忘れんなよ」
速攻でシャワーを浴び服を着替えて戻れば、遠くからじっとこちらを見ていた武道はのそのそと三途に近づいてきた。そのまま周囲をうろつき、ふんふんと鼻を鳴らして嗅いでくる。
その様子がまるで浮気を疑う女のようで面倒臭いと思いつつも、なぜか内心ちょっとだけ嬉しい三途である。
その後どうやら検査には通ったらしく、武道は触らせてくれた。ただ極力視線を合わせようとしない様子に、二度と外で猫は触らないと固く誓った三途であった。