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    れお。

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    開催おめでとうございます〜!
    片想いから両想いになる五悠

    #五悠
    GoYuu

    燃やしたい 俺は五条先生のことが恋愛的な意味で好きだけど告る気は一切ない。ないけど想いは溢れる一方で吐き出す場所も相手もいない。もし伏黒や釘崎に五条先生を好きなんだよね、なんて言ってもあっちは対応に困るだろ。だからこれは俺の心に留めるだけに限る。でもそれじゃあ結局貯める一方で、限界突破したら俺は何を口走るか分からない。なら、紙に書けばいいのではと天才的発想に至ったためノートやメモ帳に丁寧に書き始めた。

    「好き過ぎるだろう、俺…」

     丁寧に書きまくったそれには微量ながら残穢があり我ながら呆れた。ある一定の量まで増やしたら燃やして捨てようと小さな箱に積み重ねる。そうすると小さい呪力の塊ができるそれが自分の想いが可視化されているようだった。1回でその時の感情をぶつけるように大量に書くもんだから直ぐに貯まる。少しだけ想いを溜めていく箱が器に思えて、俺じゃんとと箱に対して親近感が湧いてしまった。多分、恥ずかし過ぎてバグってたんだと思う。
     書いて呆れて貯めて猛烈な羞恥心に襲われては燃やしてを繰り返して何度目か。燃やすのは先生へ向ける想いを昇華させるためなのに、やはり書けば書くほど増す一方。
     
     そんなある日、清々しいほどに晴れていたから変わることないだろうと天気予報を見ずに外へ出てしまったため、帰りの道中雨に降られた。全身びしょ濡れなせいで、学生寮の屋根の下で伏黒が居ないから誰にタオルを持ってきてもらおうか服の裾を絞っているとき、無限を張って雨の中をのんびりと歩いている五条先生と目が合った。

    「どうしたの悠仁」
    「五条先生」

     挨拶をした後の俺の様子を見た先生は盛大に笑い写真を撮った。満足したらようやく悲しげに濡れた経緯を聞いてくれて、それが終わると俺のことを仔犬と称したあと代わりに俺のタオルを取りに行ってくれた。

     何も考えてないのがいけないんだと思う。
     
     先生に会ってしまったがために待っている間も先生のことで頭いっぱいになって、早く部屋に戻って書いて吐き出して燃やしたいなって考えたとき思い出してしまった。もうあと数枚も書けば貯まる箱の存在を。呪力の籠ったあれを。あの特別製な瞳を持つ誰よりも敏感な先生が気付かないはずがない。教師だから生徒のプライベートなところを覗かない。とは言い切れないのが五条先生だ。むしろ好奇心から見る可能性の方が大アリな訳で。

    「うゔ~~」

     びしょびしょに濡れた自分では寮内を走って止めに行くことすらできない。靴を脱ぎ捨てて走ることができたならどれだけ良かったか。何で好きの二文字だけを書けばいいのに、名前や好きなところも書いてしまったんだろうか。今更ながら後悔する。恥ずかしさと自分の馬鹿さ加減に誰もいないことをいいことにしゃがみ込んで唸る。
     ほぼ諦めの境地だが見ていないことに賭けよう。うん。部屋に戻ったら速攻燃やそうと心に決める。今は吐き出すことより証拠隠滅の方が最優先。心に決め立ち上がったところで床の軋む音が聞こええる。段々と近付いてくるそれがカウントダウンのようで心臓がバクバクと煩い。

    「持ってきたよ~」

     じっと待っているとタオルとビニール袋を片手に五条先生がヒョイと現れた。だけど予想と反して先生の様子はいつも通りで蓋を開けることはしなかったのかもしれない。いやでも、先生にとって面白いことは最後に出してくることが多いからまだ安心はできない。

    「助かったー!ありがと先生」

     そちらが変わらないなら俺もいつも通り振る舞い拭いてあげるという申し出を丁重にお断りする。しょげる五条先生から受け取ったタオルで頭から順に拭き、一緒に持ってきてくれた袋に上に着ていた制服やパーカーを入れる。女子はいないから別に上裸でも誰も気にしない。腹筋凄いねなんて話し掛けてくる先生と変わらず会話して一通り拭き終わったところで、んじゃ僕職員室行くからと別れた。もちろんお礼は言った。んで、そこで終わった。
     
     そう、終わった。

     先生にしてはやけにあっさりとした別れに、ん?とは思った。だけど、意外と見ないもんなのかなぁ…なんてちょっと先生のこと見直した。一度部屋で着替えてから洗濯しに行ったあとそれが終わるまでの間に燃やしちゃおうと箱を見たとき違和感があった。
     今朝の呪力の塊とは少し違う気がして。少し躊躇いつつも蓋を開ける。見た感じ前回封印した時と変わりない。気のせいかと思って一枚手に取れば、「好き」と書かれていた。毎回必ず書く2文字。

    「でもこれ」

     だけど、この文字は俺の字じゃない。これは、この達筆な文字は五条先生のものだ。他の紙も手に取って確認すれば全て俺が書いたものではなく、五条先生の書いたものに代わっていた。
    『人懐っこい犬みたいで可愛い』『イカれっぷりが最高』『笑顔が可愛い』『躊躇いのなさが好き』『駆け寄って来る姿が可愛い』『優しいところが好き』『素直なところが可愛い』『悪食なところも好き』『思ってることが素直に顔に出ちゃうところが可愛い』などなど…

    「いや、8割くらいの内容が可愛いって何。俺こんな風に思われてたん?」

     読み進めれれば男として欲しいカッコいいという単語は一切なく、可愛いのみだった。下の方に置かれていた紙には「好き」と「大好き」で溢れていた。まさかあの短時間で書いていたのだろうか。専用でわざわざ買ったメモ帳を見れば目視でも分かるほど確かに枚数が減っていた。てか、これってもしかしなくても俺が書いたやつって先生が持って行ったりしない?

    「燃やさなきゃ」

     五条先生がどういう意味で好きとか書いてくれたのかよりも燃やしたい一心だった。ライターを持って再び濡れることをを気にせず学生寮を飛び出して職員室に向かった。別に行き先を言わなくてもいいはずなのに態々報告してから向かった五条先生。頭も良い人だ。俺がこうして突撃しに行くのも想定内なのかもしれない。それでもとにかく燃やしたかった。

     恐らく測ったら人生で一番速いだろうタイムを出したおかげで外にいる時間が短かったので通常よりも服への被害は少ない。玄関マットで靴の水分をしっかりと吸収させてから、校内を少しだけスピードを落として走る。今この時ばかりは廊下を走っちゃいけませんはクソ食らえだと思う。
    「っ五条先生‼︎」
     4年生は知らないが多分いないし3年生は停学中らしいから、実質この学校の担任は五条先生と日下部先生しかいない。だからってのもあるけど、俺は力加減も忘れて職員室のドアを思いっきり開けた。バンッ!と周辺に響くほど大きな音を立てるもんだから煩い。まぁ俺がやったんだけどね。

    「あれ、意外と早かったね」

     幸いなことに日下部先生はいなかったようだ。五条先生はやっぱり予想していたらしく、グデッと背もたれに背中を預けながら俺が書いたものだろう紙を読んでいた。だって、身に覚えしかない紙達が机の上に山を作ってるんだもん。俺はもー、聞いてよ悠仁ぃなんて隠す気のないニヤけ面する先生を無視して、その山に手を伸ばす。けれど、それもあと数cmのところで見えない何かに阻まれる。つまり五条先生の無限に阻まれているということだ。

    「何しようとしてんの、ゆーじ」
    「…先生、術式邪魔」
    「嫌だね」

     先生はわざわざ目隠しを取ってベッと舌を出す。俺がしようとしていることが何か検討は付いているのだろう。それでも俺はその上で無理だと分かっていても手を伸ばすことを止めない。

    「こんな熱烈なのどうして捨てなきゃいけないのさ」
    「捨てるんじゃなくて燃やすから頂戴!」
    「ダメでーす。これはもう僕のものでーす」
     そう言って余分なほどある長い手足を使って俺から遠ざける。あまりにも大人気ない行動に大人気ない!と叫ぶがどこ吹く風。
    「僕が大人だと誰が言った?」
    「見た目はアレでも歳はもうアラサー目前なんだから」
    「ねぇ待って。見た目がアレって何。あとアラサーやめて」
    「目がガチじゃんウケる」

     いやウケないからと目も声のトーンもガチ目な先生に少しだけ溜飲を下げる。だからといって諦めるわけないけどな!恥ずかしいもんは恥ずかしい。

    「悠仁は僕からのラブレター読んでくれた?」
    「読んで中身まるッと入れ替えられてたのを知って急いで来たんでしょ!」

     何か今の俺は猫のおもちゃを吊り下げられてそれを捕まえるために必死になってる猫の気分になってきた。呑気に感想は?と聞いてくる先生には、先生って意外とヘタレなんだなーって伝えるとピタッと動きを止めた。一瞬の絶好のチャンスを逃すはずもなく、五条先生が手に持っていた紙を1枚手に入れて何が書かれていたかを一応確認する。

    「あれ、白紙」

     わざとダミーを用意していたのかと、相変わらず静止して無限も解かれてる先生の手から次々と取っては確認してを繰り返す。しかし、全部白紙だった。

    「まんまとしてやられた…」

     別にレモン汁で書いたわけじゃないから炙ったところで文字は浮き出てこない。紙達に罪はないので大人しく先生の机の上に盛った。盛り塩みたく。ここに無いとしたら先生の部屋かな。

    「ねぇゆーじ、僕が何だって?」
    「アラサー?」

     ゆらっと揺らめいた五条先生に何となく危機感を覚えて咄嗟に先生が求めているだろう答えの1個前の会話から回答する。もちろん不正解。そもそも俺は五条先生のことが好きでも付き合う気なんて一切ない。

    「僕が何だって?」
    「顔面の圧が凄いけど無駄だよ先生」

     チッと短く舌打ちした先生は近付けていた顔を引いて、この僕をヘタレって言ったの悠仁が初めてだよと俺を物理的に見下ろす。先生の初めて貰っちゃったキャッて悪ノリしたら?とキレられた。少し前までの余裕ぶってた先生はどこへ行ったの。お陰様で俺が落ち着いたよ。

    「いいかい悠仁」
    「ん?」

     教師らしく生徒を導くような声を出す。導く方向間違えてるけど。

    「僕はね誰かを好きになることなんてなかったんだよ。僕の持論だけど、愛ほど歪んだ呪いはないと思ってんの」
    「うん」
    「こんなクソみたいな世界でしか生きてないもんだから結構感性死んでるし、まず僕自身誰かを好きになる僕が想像できなかった」

     そう言えば五条先生は毎度毎度懲りずに五条家にセッティングされる見合いの場をぶち壊して帰ってくるって伏黒が超機嫌の悪い先生を見て教えてくれた。それも一因なのかもしれない。目の前の五条先生から過去の五条先生に意識を向けていたら、なのにね!ってガシッと肩を掴まれた。爪が食い込んで地味に痛い。

    「あんなに尻尾振って五条先生〜!って笑顔で来られたり、何でもない五条悟を心配してもらったら堕ちる以外の選択肢ないじゃん。でも、悠仁はまだ学生だし若人の青春は邪魔したくないしさぁ…」
    「…本音は?」

     分かりたくないけど少しだけ察してしまった自分が憎い。この人は建前と本音のギャップが激しいのも知ってるから。

    「悠仁に告って気持ち悪がられたりでもしたら友人以外の生物殺しちゃう」
    「こっっっわ」

     向けらえた瞳にゾッとした。これはマジの目だ。青い瞳がさらに冷たい印象を与える。今までどうこの恋心を昇華させようか考えていたはずなのに、今ほど心底安堵したことはあるだろうか。

    「二十八歳の初恋だよ?たとえ少し奥手になったとしてもどんな手を使ってでも成就させたいよね」
    「手段選ばなすぎだろ…」

     暗にお前が承諾しないと滅ぼしちまうぞと脅されているようなもんだ。やりかねない力を持っているものだから尚更。と唐突に五条先生は一歩後ろに下がると、まず右膝を床につけた。次に左膝もついて両足の踵と尻をくっつけた。ようは正座をしたのだが、さすが御三家の当主。姿勢が大変素晴らしい。普段は子供っぽいのにこういう時々見せる所作が綺麗なとこが好きなのだ。そして、手を前に付いた。まさか、これはもしかしなくても。

    「虎杖悠仁くん。愛してます。僕と結婚を前提に付き合って下さい」
    「わぁ…」

     そうして頭を下げた。大人の、本気と書いてマジと読む本気の土下座を見せられた。この人が土下座する姿なんて全く想像出来なかったし、プライドが高い人だから一生しないだろうと思ってた。そもそもどうにか相手を丸め込んでさせてそうだし。でも必死なのが伝わってきて、あぁこの人は本当に俺のことが好きなんだなって分からされた。この気持ちを墓場まで持っていくという決意はポキッとあっさり折れた。だから俺は周りからチョロいとかって言われるんだろうなって今更ながら気付くがもう遅い。

    「俺も好きです。こちらこそよろしくお願いします」

     土下座はしなかったけど、深々と頭を下げた。俺の言葉を聞いた五条先生はすぐに立ち上がって俺を力強く抱き締めた。俺も抱きしめ返すが、俺か五条先生かミシって聞こえたのは気のせいだと思う。

    「ありがとう悠仁…!」
    「俺もありがとう…でも、やっぱりあれは燃やさせてッ!」
    「嫌だね!」

     どうやらこの戦いの終戦はまだ遠い未来らしい。
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