恋知らぬ令嬢 っは、っは、っは、と犬のように発せられる荒い呼気。
覆い被さるその逞しい肉体はミケランジェロの彫刻を思わせる。これが一人の女吸血鬼に与えられた食事が作り上げたのだと思うとなんだか感慨深いような、不思議な心地になってしまう。出会ったばかりの若さだけでなんとか保たれていた肌のハリやツヤも栄養バランスを考えた良質な食事によって磨き上げられ、健全な輝きを放っていた。職業柄あまり陽光に当たらないからか息を荒くして肌を真っ赤に染め上げていなければ、あんまりにも白くて本当に彫刻と勘違いして鑑賞してしまっただろうなと自画自賛を込めて眺めていたら、その獲物を狙う飢えた獣と目が合ってしまい、その瞳に射抜かれてしまった。
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