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    mori

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    mori

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    めぐゆじになるものを書きかけのまま発見されたので…
    当時と今じゃちょっと解釈違う気がする

    #めぐゆじ
    landOfOnesBirth

    無辜 人間性に絶望してはならない。我々は人間なのだからと、かのアインシュタインは言った。だがどうして、人間というものはこんなにも愚かなのかとつくづく思うのだ。
     人間の醜悪さは何度も目にしてきた。もちろん伏黒は自身を清廉潔白だとは微塵も思っていない。だとしても呪いを生み出すのは他でもない人間だ。人間が生み出したものを人の手で祓う。つまるところ最初から破綻している。
     破綻はしているが、祓わなければ呪われる。害を成すものだ。呪いを受けることが因果応報の人間もいれば、中には理不尽に呪われて人生を捻じ曲げられて悲惨な運命を辿るものもいる。

     伏黒恵はどちらかと言えば人間が好きなほうではない。
     周りにいた大人はろくでもないのばかりだったし、それでもまだ力を持たぬ子どもがクソみたいな世の中で生きていくためにはそのろくでなしたちの思惑通りになるしかなかった。そんな折にデリカシーも常識のかけらも感じさせない白髪の男、五条悟が現れた。五条は禅院家のことを帳消しにしてくれた。だがそううまい話があるわけがない。将来伏黒が呪術師として働くことを担保として金銭面の援助をしてくれることになった。馬鹿馬鹿しい。どいつもこいつも反吐が出る。当初はそう思っていた。
     しかし、姉の津美紀が呪われた。呪われてから後悔した。偽善だ、綺麗事だと鼻で笑っていたことを恥じた。伏黒が助ける人間を選ぶように、津美紀も伏黒を選んだだけだ。選んで大切に思っていてくれた。今ならわかる。だから津美紀を助けるために呪術師として生きている。人間を語る上で性善説と性悪説が古来から持ち出されるが、それについて言うならば伏黒は性悪説側だ。人間など一皮剥けばみんな嫉妬、欲望、嫌悪……と汚い欲と妬みにまみれている。みんなが一線を踏み越えないように日々を生きる裏側では呪詛やあらぬ噂があちらこちらに生まれる。
     人間などそのようなものだ。別にそこに期待もしていない。だが、その中でごく稀に損得などに捕らわれず己を貫こうとする人間がいる。それで自身が窮地に陥ることになろうとも、苦しむことになろうとも「為すべきことを為す」そんな人間がいる。
     虎杖がそうだ。決して善人であろうとしているわけではない。己の心の在り方に従って行動している。それでたとえ自身が損なわれようと、報われなくてもいいのだ。だが、いくら見返りを求めなくても伏黒は嫌だった。そんな人間こそ報われてほしい、救われてほしかった。なのに、人を想う心を持つ津美紀は呪われ、虎杖は宿儺の指を取りこんで死刑になる。
     この世は理不尽でできている。エゴだとしても、二人には報われてほしかった。

     虎杖は優しさや他者を労わる心を持ち合わせているが、まともかと言われればそうではない。そも、まともであれば宿儺の指を身の内に入れたりしない。
     だが、呪術師としてこちら側に足を踏み入れた虎杖の心が少しずつ軋んでいくのがわかった。そして同時に心身ともに大きく成長を遂げているのも事実だった。出会った頃とはもう違う。虎杖は覚悟を決めた。——あの日出会わなければ、虎杖はこんな重荷を背負わずに平穏な高校生活を送っていたのかもしれない。たらればを言ってもしようがない。そんなことは百も承知だ。でも思ってしまう。宿儺の指を取りこんで死ぬために生かされる、仲間たちの命が呪いによって蹂躙され、目の前でいくつもの死を見ることになる。元々呪術師の家系に生まれたわけでもなく、この暴虐に耐えろと言われて耐えられるのだろうか。……いや、虎杖は歯を食いしばって前を向く。そして伏黒や釘崎に「大丈夫か」と声をかける。そんな奴だ。
     出会えてよかったと思う気持ちと、出会わずにいたほうが幸せだったのかもしれないと心がせめぎ合う。
     しかし何を言おうが、後悔を積み重ねようが時計の針は前にしか進まない。虎杖に心の内を吐露するつもりはない。きっと虎杖の中ではすでに終えた問答だろう。それを今更横から突くのは野暮だ。宿儺の指を取りこみ、死刑になる。そんな未来が怖くないわけがない。逃れられない未来がすでにある。それでも伏黒は生きて欲しいと思った。他でもない、虎杖に生きて欲しい。

    「虎杖」
     短い期間の間にすっかり口にするのが慣れた名前だ。呼べば人懐っこく「どした? 伏黒」と側に寄ってくる。なにも考えていないようでいて、実は繊細だ。虎杖悠仁という人間を一言で言い表すのは意外と難しい。お人好しで、好意的、そしてきっちりイかれている。呪術界とは無縁の世界で生きてきたのに、一歩足を踏み入れてからの順応の早さには驚かされる。その一方で、心根が優しいのも事実だ。命を天秤にかけること、人を殺すこと。呪術師にとってはときにはどちらも必要となる。虎杖は苦しいとは言わない。
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    mori

    MAIKINGめぐゆじになるものを書きかけのまま発見されたので…
    当時と今じゃちょっと解釈違う気がする
    無辜 人間性に絶望してはならない。我々は人間なのだからと、かのアインシュタインは言った。だがどうして、人間というものはこんなにも愚かなのかとつくづく思うのだ。
     人間の醜悪さは何度も目にしてきた。もちろん伏黒は自身を清廉潔白だとは微塵も思っていない。だとしても呪いを生み出すのは他でもない人間だ。人間が生み出したものを人の手で祓う。つまるところ最初から破綻している。
     破綻はしているが、祓わなければ呪われる。害を成すものだ。呪いを受けることが因果応報の人間もいれば、中には理不尽に呪われて人生を捻じ曲げられて悲惨な運命を辿るものもいる。

     伏黒恵はどちらかと言えば人間が好きなほうではない。
     周りにいた大人はろくでもないのばかりだったし、それでもまだ力を持たぬ子どもがクソみたいな世の中で生きていくためにはそのろくでなしたちの思惑通りになるしかなかった。そんな折にデリカシーも常識のかけらも感じさせない白髪の男、五条悟が現れた。五条は禅院家のことを帳消しにしてくれた。だがそううまい話があるわけがない。将来伏黒が呪術師として働くことを担保として金銭面の援助をしてくれることになった。馬鹿馬鹿しい。どいつもこいつも反吐が出る。当初はそう思っていた。
    1968

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