愛しい愛しい君の寝顔 朝、目が覚め隣ですやすやと眠る雅を見て雅を起こさないように僕は小さくガッツポーズをした。生前、雅は僕に寝顔を見られるのは恥ずかしいだとか無様だとかなんとか言って初めて寝顔を見た以降は僕の後に寝て僕より先に起きるということを徹底していた。元々、僕があまり雅の側にいなかったせいで本当にあの可愛い安心しきった寝顔を見ることができたのが一度きりというのは小さな僕の未練の一つだった。しかし、カルデアで再会し第二の生。もう僕の妻ではないと言い、自分は悲しむし怒るし泣くし嫉妬もする。もう我慢はしないと宣言した。そして宣言の形として僕の隣で眠ってくれることが何よりもの報酬だった。僕が雅を傷つけ悲しませたのは事実でそれは戒めとして僕の中には残り続けるもの。けれどそれ以上にこの笑顔を独占できるのはやっぱり嬉しいと思ってしまう。
「……う、しん、さま……?」
瞼をこすりながら雅は目を覚ます。
「ああ、ごめん。起こしてしまったかな」
「いえ、そんなことは…」
そう言って雅は首を横に振ってじっと僕を見た。
「えっと…何か?」
「いや、君の可愛い寝顔を見ていただけさ。」
「…そんなつまらないものを見て笑っていたのですか?」
むっと眉をひそめる雅だったが僕は「ああ」と言って笑って雅の頬に口づけをする。
「僕は初めて見た時から雅の寝顔は大好きなんだよ。だから生前は残念だったものさ」
「……いつか、飽きてしまいますよ」
「それこそする必要のない心配さ」
「ふふ…変わった人」
そう言って今日初めての笑顔を雅は零す。それが綺麗で愛おしくて僕は目を細めぎゅうぎゅうと雅を抱きしめた。
「ああ、本当にかわいいなあ…!僕の奥さんは!」
「まあ」
寝ぼけているのかふふふ、と雅は笑う。その綺麗な笑顔が一等好きで僕だけの星を愛し尽くそうとそっと心の中で誓う。
「僕はね、僕の横で安心しきった顔で寝る君もそうやって僕に笑顔をくれる君も大好きなんだよ」
「私はあなたが私を見ていなくても好きですよ」
「そこは君を見る僕が好きとかいうところじゃないかい!?」
「あまりそばにいなかったもので」
「うぐ…それはその、ごめん…」
「ふふ…私も、私を愛おしそうに見てくれるあなたが好きですよ」
二人しかいない部屋だというのにそっと僕の耳元に顔を寄せて雅は囁く。そんないじらしいところが僕は大好きで、理性だったりムードを守りたい僕の気持ちはガラガラと崩れ本能が顔を出し。朝だというのに、僕は雅を朝餉のようにぺろりといただいてしまうのだった。
ああ、悪いとは思ってるよ?けど夫婦の営みとして許してくれないものかなあ。…だってあんなに可愛い雅がよくないよ、うん。
-了-