君は僕の癒しスポット「ったく、マスターくんと言えど人使いが荒くないかい?」
ぶつくさと呟きながらも種火パーティーの奴らよりはマシだなと思いつつ廊下を歩く。歩いていると何やら大きな荷物を抱えた僕の妻ーー、雅子の姿を見つけ声をかけた。
「雅!」
「!し、晋作様…おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま…っていや、今はそういうのじゃなくて…すごい荷物だけどどうしたの?」
籠の中に入っているのはシャツやらシーツやらそういった類のもので問えば困ったように雅は眉を下げた。
「カルデア職員様たちの洗濯物でございます。英霊のも、職員様のもこの大所帯ですからかなり出るようで…時間を持て余していたので代わりにしていたのですけれど…」
そう言って雅は汗を拭った。
「と言うわけなのでお出迎えも出来なくて…」
「いやいや、君が謝ることはないだろう?年中人手が足りてなさげなのは見て分かるし…」
「ありがとうございます、晋作様」
そう言って頷くと仕事があると言って僕の前を立ち去ろうとする雅。そんな雅を僕は引き留めた
「し、晋作様?」
「人手が足りてないんだろう?だったら僕にも手伝わせてくれよ、雅」
にっこりと笑って僕は雅にそう言ってのけるのだったーー。
***
「晋作様にこんな仕事を手伝わせるなんて…義母様になんて言ったらいいか…」
「いいじゃないか。僕がしたいって言ったんだし、今は幕末のあの時代じゃないんだし」
「そ、それはそう…ですけれど」
うぅん、と雅は悩みながらもテキパキと仕事はこなしていきあっという間に洗濯ものたちは棚の中へと仕舞われていった。
「晋作様のおかげで早く終わりました」
「そうかい?僕としてはあまり役に立った気はしないけれど…」
「そんなことはありません!」
そう力説され、僕は思わず苦笑した。
「ま、雅がそう言うんならそうなんだろうね…ともかく、だ。これで雅の時間は空いたね?」
「え?あ、はい」
「じゃあ行こう!すぐ行こう!」
そう言って僕は雅子の手を取ると部屋へと向かって歩き出す。
「し、晋作様…?」
不思議そうな顔をして雅は首を傾げる。僕はそんな雅を二人きりの部屋でぎゅうぎゅうときつく抱きしめた。
「え、えっと…?」
「あー…癒される…」
ぐりぐりと雅の胸に頭を押し付ける僕を雅は戸惑いがちな手つきで頭を撫で、髪を梳いた。
「随分お疲れなんですね?」
「そりゃあもう!あのマスターくんったら、人使いが荒いったらないよ!全く」
「あらあら…」
珍しい、と言って楽しそうに雅は笑った。
「君はマスターくんに何かされてないだろうね?嫌なことだったり疲れたりしたらすぐ僕に言うんだよ?代わりにクエストに出るくらい造作ではないとも」
「私とあなたではクラスが違うではないですか」
「うぐ…だ、だが…」
「頼られるのは嫌いではないので。大丈夫ですよ」
「君は我慢強いからなあ…心配だ」
「大丈夫ですったら」
そう言ってくすくすと雅は笑う。その顔をよく見たくてぐるりと身体を反転させ僕は雅に膝枕をしてもらう。下から見る雅も絶景だと思いながら腕を伸ばし雅の頬に触れた。
「雅、」
そう名前を呼べば雅の顔が近づき、僕と雅は口付けを交わす。離れた唇と真っ赤に染まった雅はやはり絶景でなかなか膝から頭を退かせられない僕だった。
-Fin-