新たな明星 「あら、置いていくなんてひどいわ」
涼しげな声に思わずカロルは振り返り驚きの声を漏らす。隣にいたユーリも驚いたようで、呆れたようなそんな声を出した。
「じゅ、ジュディス!?置いていくってその…いいの?」
「私も凛々の明星のメンバーだと思っていたのだけれど…違ったのかしら?」
その言葉にカロルは首を横に振った。
「でも、ジュディスも行くとことかあると思って…」
「確かにミョルゾには顔を見せたいとは思っていたけれどそれとギルドメンバーであることは両立しないのかしら」
「ううん、そんなことない」
「なら私も連れて行ってくれる?首領?」
そう言って手を差し出すジュディスの手をカロルは握る。
「うん、これからもよろしくジュディス!」
「ーーで、そこの首根っこ掴まれたおっさんはどうしたんだ?」
話がおさまったところで気になっていたことをユーリが問えば涼やかな笑顔のまま掴んでいた襟を離しぐぇ、とレイヴンは声を上げた。
「ふふ、いやね。本当はついていきたいくせに素直になれないようだったからお手伝いしてあげたの」
「手伝いって…」
「素直になれないって?」
「ほら、レイヴン。うちの首領にはちゃんと言わないと伝わらないわよ」
「はいはい、分かってますよ…あー、えっと、少年?」
顔を逸らしたままだったレイヴンはちらりとカロルの方を向く。それにカロルはこてんと不思議そうに首を傾げた。
「…シュヴァーンはあの時死んだし、俺自身【天を射る矢】に戻るつもりはない…し、俺はその…凛々の明星の預かりになってるんだろ?」
「それって…」
「あー、だから、その…少年さえよければ…俺を凛々の明星に……」
「いいの!?」
言い終わる前にカロルにそんなこと言われてしまいレイヴンは面食らってしまい瞬きを繰り返した。
「嬉しい!僕、レイヴンと旅をまだ続けられることが!」
「少年…」
「ひどいぜ、カロル先生。俺とは嬉しくないってことか?」
「そうよカロル、ひどいわ」
感動するレイヴンを他所によよよ、と泣き真似をしてカロルに抱きつくユーリとジュディス。そして二人はにやりと笑ってレイヴンを見て、レイヴンもおかしそうに笑った。
「ま、よろしくたのんますよ首領」
「うん!ってことでまずはミョルゾだね!」
二人から解放されたカロルは手を空に突き上げて言う。
「その後は仕事探しか?」
「とはいえ魔道器がなくなったんだし仕事は山のようにあると思うわ。特に魔物相手とか」
「ジュディスちゃん物騒〜!」
「わふっ」
そうやって笑い合う四人と一匹。そして一体の始祖の隷長の旅はまた新たに続いていくーー。
-Fin-