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    kinari_random

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    kinari_random

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    ラブイジワンドロ
    第2回お題『ハロウィン』

    ふよ、と視界に入り込んだ青白い光を追いかけて振り返る。そこに痕跡や発信源と思しきなにかがあれば事は簡単だったのだが、それらしきものは見当たらなかった。周囲を見渡してみたが、飾り付けられた電飾は暖かな色合いばかりでどうにも噛み合わない。錯覚だろうかと目元をこすれば、隣を歩いていた人物が心配と疑問をないまぜした声で問うてきた。
    「なに、どうかした?」
    「いや……見間違いだとは思うんだけど」
    今しがた目にしたばかりの光についてざっくり話せば、彼もまた同じように辺りを見回した。成果はなかったようで、小首をかしげながらも口を開く。
    「サブスタンスかな。街中の計測器に反応はないみたいだけど」
    スマホを取り出したかと思えば淡々と指先を動かして何かし始めた。内容は分からないが、目まぐるしく振れる瞳が見て取れる。メンターとメンティーでは情報伝達の優位もあるため、念のため自分の端末にも目を通す。オフとはいえ緊急事態ともなれば連絡のひとつくらい入ってくる。とはいえ端末が静まり返っている以上、今のところ気を張る必要はなさそうだ。
    ポケットにしまい、今度は少しだけ意識して辺りの音を探ってみる。いつもより密度の高い喧騒に溶ける子どもの高らかな笑い声、店先から響くおどろおどろしいメロディー、そこから危ぶまれるものは感じられない。目の前に意識を戻せば、画面から目を離したフェイスがほっとしたような息を吐いて顔を上げるところだった。
    「……うん、騒ぎが起きている様子もないみたい」
    「そっか。ごめんな、変に気を使わせちゃって」
    「別に。おんなじ仕事して、おんなじこと気にしてるだけでしょ」
    だから今後もひとりで黙り込むことはしないでほしい、と小さく続けられた言葉に目を瞠る。驚きを隠そうともしないこちらの挙動に、なに、と少しだけ拗ねたような声を上げるところが堪らない。頼もしく感じられて嬉しかったと素直に伝えれば、それはそれでまごついて見せるところが飽きないなぁと思う。
    「なんだったんだろうな。幽霊、っていうのはベタだけど」
    「そうだなぁ、ウィルオウィスプ……なんて説はどう?」
    「なんだっけ、それ」
    「天国にも地獄にもいけなくなった魂だよ」
    ジャックオランタンの方が耳馴染みがいいかも、と口遊みながらフェイスは店先に並ぶカボチャの飾りをつつく。すこし滑稽な笑い顔でオレンジ色の光を発するそれは、なにも考えなければ愛らしいものに思えたのだろう。虚のなかに火を宿して、見せかけの魂を装っている。宗教には詳しくない、縋ったこともあまりない……だが、憐れな見世物であることはきっと罰のひとつなんだろう。
    ふと通りすがった親子連れの腕の中にいた赤ちゃんが、それを目にした途端にぐずり始めた。いやいやと怖いものを見るように、飾り付けから顔を背けようとしている。
    「アハ、ランタンの顔って結構怖いからびっくりしちゃったのかな」
    「……フェイスも小さい頃に怖がったりしたのか?」
    「ないけど。……え、ブラッドがなんか言ったとかじゃないよね」
    「あはは! ちがうちがう、あいつはそういうこと吹聴したりしないよ」
    ふたたび視界をかすめる光に気付きはしたけれど、口にはしなかった。目の前であったにもかかわらず、フェイスが反応を示さなかったからだ。幻覚のたぐいであればそれはそれ、ノヴァさんに検査をお願いするなり休息を多めに取るなり考えようはある。ただもしも、人を選んでその姿を見せている存在だったなら。
    誘われているのではと思った。あるいは、この身が果てたときに訪れる結果のようにも。天国にも地獄にもいけない、許されない、さまよってさまよって禊ぎの日さえ訪れないまま。
    「ハァ……無駄に疲れちゃった。もういいよ、早く移動しよう」
    「うん、ごめんな」
    答えが見つからないときは人に尋ねるのが一番だ。こと賢くて機転のきく友人たちに囲まれてきたからこそ、手段として選ぶことをためらいはしない。無いのだけど……でも、人並みの情緒は備えている。だから黙ってしまった、これも君にとっては悪いことになってしまうのかな。

    (自分が死んだとき、どちらに召し上げられると思う? もしくは──)
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    Replies from the creator

    kinari_random

    DONEヌヴィリオ。カプと言いつつ+も同然です。
    キャラストや伝説任務もろもろのネタバレを含みます。
    「濾過の果て」俺が望む”正解”は存在しないかもしれない、そんな無知ゆえの諦念を一瞬で奪い去っていった男がいた。己を……いや、水の国におけるすべての罪を裁定する者。存在だけは耳にしていたその象徴を目に映したのは、あの場所に立たされたときが最初だった。証言台に立つには不釣り合いな背格好に対して、なんとも形容しづらい悲嘆と畏怖がさざなみのように注がれたのを覚えている。ゆえに……拙い物語の主役として祀りあげられてしまったのだから、役割をまっとうするしかないと考えたのは本音だ。
    それはカーテンコールまでここに立ち続けてやろう、という意味でしかなかったが。残念なことに、歌劇には一流の作品もあれば三流以下の作品だって存在する。愉快さも滑稽さも足りない、ただ事実だけを読み上げる朗読劇を果たして観客たちがどう感じたか……それはもちろん、推して知るべし。テコ入れをしようとした彼らの雑音を薙ぎ払ったのは、澄み切ったひとつの声だ。最高審判官と諭示機が答え合わせをして、そうして下された結論によって裁判はつつがなく終幕を迎えた。惜しみない拍手を送ってやりたかったよ、だって彼が、あんまりにも考え込んでいる様子だったから。たとえば長い一曲のなか、たった一音の素晴らしい演奏をした者に送られるべき称賛のように。
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    kinari_random

    DONEフェイディノ未満、一瞬だけ嘔吐ぽい要素。ほぼ医務室で話してるだけ。
    ディノの耳の良さ(仮定)と西ルーキーの音系攻撃って相性悪くない?という発想から練ったお話。
    【倣いごと】



    身を投げ打つ予定なんてものは己の中に存在していない。つい数ヶ月前にやった行動はなんだ、と過去が囁くのを一笑に付しながら思う。あのときはまだ生きていくことを想像していなかったせいだ、と簡潔な答えを添えてしまえばすべて解決する。
    だからみんなと共に歩んでいくと約束した今になって、そんな手段を選ぶことはないと。そんな悪行は棄て置いたつもりで、けれど……と思考がつんのめる。頭のどこかで、それをきちんと理解していないような酩酊が泳ぐ。いざとなれば許されるのではないかという甘えが、果たしてつま先ほどにも残ってはいなかったかと。
    「──ディノ!前に出んな!」
    友人が珍しくも鋭く叫んだ言葉に、こういった場面において本当に的確な指示が出来るやつだ、と感心した。それに反応が遅れてしまったのは、ひとえにこちらの不足でしかない。距離感が速度か、あるいは能力自体の把握か。自身のそれもルーキーたちのそれも知っているつもりだった。そんな慢心から生まれた状況が、決して致命的ではないというのも瞬時に察せてしまった。それもまた油断に他ならないと、もう一人の友人なら口を挟んでくるかもしれないな。
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