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    seki_shinya2ji

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    二度寝する赤北赤

    【赤北赤】春の水辺で愛と寝る春の微睡を感じる土曜日。少し続いた長雨も止んで久しぶりの日差し。洗濯物を一気に乾かす時である。
    今日は体育館の定期点検で部活動は休み。その土曜日休みができた路成のマンションに1人、半分液体のようになっている男がいた。白い髪は日に当たると透けて見える。チラチラ、キラキラ。白い肌が、レースカーテンから溢れた陽だまりの中でふんわりと微睡んでいる。普段キツイまである目力も今日はオフモード。温い緩い、まるで日に温められた用水路の水のようだった。
    「みちなり」
    半分寝惚けているような声で路成のことを呼んでいる。いつもならもっと芯があって背筋が伸びるような声なのに。昨晩のこともあってか声が丸い。次の日が休みと分かればすることなんて一つだ。
    洗濯物は毎日出る。教員という、生徒の前に出て手本になる人間が皺のついたシャツを着れるはずがない。慣れないアイロンもいつの間にかできるようになってしまってもなお、手伝ってくれることになんだかくすぐったい思いがする。花粉症で鼻がむずむずするような不快感ではなくて、タンポポの綿毛で鼻をくすぐられるような感じ。
    「はぁい」
    その洗濯物を室内に干していた路成。路成だって人のことは言えない。欠伸混じりな声である。春眠暁を覚えず、は、大人になると嫌に実感してしまう。先ほど起きたばかりなのにもう眠たい。おかげでパン、と洗濯物の皺を伸ばすのも億劫になってしまう。
    「ん」
    振り返ると半液体の北が路成を見ていた。どうやら隣に来いという。北は自らが寝転ぶラグを叩いて呼んでいる。そのラグは路成のものだというのに我が物顔だ。しかし据え膳は食わねばナントヤラ。呼ばれたのならご相伴に与らないといけない、せっかくのお誘いを無碍にするほど路成は鬼じゃない。それに基本が堅実的な性格故に疲れやすい性格だ。ようやっと時折面倒だと思ったら面倒、疲れたと思ったら休む、ができるようになった。それを今、思い切り発揮する時だ。
    「ちょい待って」
    そう声をかけて寝室へ。薄手のブランケットを持って北の元へ舞い降りた。
    「気ぃ効くやん」
    「あったりまえやろ。俺を誰や思てん」
    「ほな俺の考えとることやかぜぇんぶお見通しなんやな」
    陽射しが反射する大きな瞳。昔は路成だけ違う色のユニフォームを着て優越感と責任感を感じていたが、今では同じ服の色違いを着てもらわないと落ち着かないし焦燥感に駆られるほどだ。態とらしく袖口を口元に持っていってまで何をアピールしているのか。ふふ、と目を細めて笑わなくたって言いたいことくらいわかる。
    「ほな、その手ェ退けてや」
    これやったらまともにキスもできんやん。そういうとその手が路成の首に回された。正解だったらしい。コツリと額が当てられてまたふふ、と笑われる。ずいぶん上機嫌だ。鼻と鼻を擦り合わせてみせたら、これまた態とらしく真似をされる。そしてそのまま、軽く短く触れるだけのキス。「内容が大事なんは当たり前やけど、毎日ちゃんと好きやから何回も軽いのしてほしい」というのが北の持論だ。一向に深く重ならないのは質量を求めていないのと、昨晩盛り上がった分、ただ触れるだけの時間が欲しいだけだ。
    「あ〜ぬくい」
    ブランケットを引っ張ってさらに体を密着させる。ブランケットの中は既に孵卵器のように温まっている。路成は腕の中でクスクス笑う時鳥をブランケットで包んでやった。すり寄せられた足は人肌に温まっており温い。低体温ではない、代謝の良い健康体なのはお互い様だ。高校生の時から冷え知らずだと知っている。
    「ちょっと寝よや。マジで眠い」
    「さっき起きたばっかやん」
    「朝飯食うてええ感じに眠い」
    「まぁ今日はどこにも行けんようにしたしな」
    北は腰に手を当てて困った顔をしている。北が煽ったのだから路成に当たるようなことはしない。自業自得だ、と北自身が思って恥ずかしくなっている顔だ。
    「な。寝よや信介」
    「……ん、分かった」
    スマホに手を伸ばして2時間のアラームをセットする。起きる頃には昼が近づく時間だ。それまで、温まってきた水の中で揺蕩うような眠りにつくことを2人は選択した。
    その前に、と触れた唇。路成がすれば北もする。うっすらと開いている瞳から視線が絡めば、やっぱり欲が出て少しだけ舌も絡める。やっぱり体温は心地のいいもので、眠気がズルズルと引き摺り出される。
    そのまま大欠伸を一つして、伝染った北も噛み殺すような欠伸をする。食われるような感覚も慣れたものだ。
    そのまま流れるように二度寝についた。次に起きるのは2時間後。その時になれば昼飯のことで頭がいっぱいになるだろう。




    #【水温む】
    春になって池や湖の水温が少しだけ上がること
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