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    yamagawa_ma2o

    山側(@yamagawa_ma2o)のポイポイ部屋。

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    yamagawa_ma2o

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    Sub藍湛(作家)×Dom魏嬰(弁護士)のさぶどむ忘羨の途中②。ヤッてるとこだけ昔書いたやつをちゃんと書くので尻をたたいてくれたら嬉しいです。

    ##忘羨

    寤寐至福②「あんた、余計な事しなかったでしょうね?」
     魏無羨は藍忘機の家からの帰り道、自分の事務所に立ち寄って早々事務員の温情から痛烈な一言を浴びていた。魏無羨は彼女が律師だったら裁判は負けなしかもしれない、と思っている。
    「余計なことってなんだよ。サインを求めるとかならしてないぞ」
    「そういうのの方がよっぽど良いわよ。『お前は良い奴だな』とか『連絡先交換しよう』とかは言ったでしょ? 相手がSubだったら勘違いされるわよ?」
     Domである温情は、魏無羨にも遠慮なくものを言う数少ない存在だ。魏無羨が依頼にのめり込みそうになったり、クライアントから過剰に接近されそうになった時にしばしば頼りになる。この時も、魏無羨は図星を突かれて思わず黙ってしまった。
    「いや……言ったかも」
    「馬鹿ね。また面倒事を増やして。あんたそろそろDomの性質が強すぎることを自覚して、病院に行って見てもらった方が良いわよ」
    「でも藍湛は男だし、NeutralかDomだと思う」
    「ふうん。そう。なら良いけど……」
     温情は魏無羨の留守中の報告を済ませると、定時になったのを確認して退勤しようとした。
    「温寧、帰るわよ」
    「あ、はい。魏さん、明日の証拠提出の資料はこちらにまとめてあります」
    「おう、ありがとう! 温寧、温情、気をつけて」
    「じゃあね」
    「お先に失礼します」
     温情の弟である温寧はNeutralで、魏無羨の事務所で実習弁護士(※弁護士資格取得後、執務許可証を取るまでの研修中の身分)をしている。魏無羨は二人が帰って静かになった事務所で、クライアントを座らせるソファに転がるとスマートフォンをいじった。
    「――知り合ったばっかりの奴からの既読無視は初めてだよ。とっつきにくいと思ったら優しいし、優しいと思ったらとっつきにくいし。なんなんだ……」
     魏無羨は思わずSNSの藍忘機とのトークに拗ねたうさぎのスタンプを送った。どういうわけかすぐに既読が付くのだが、それ以降の反応がない。魏無羨はそれに無性に苛立って、同じうさぎのシリーズの様々なスタンプを連打した。
    『うるさい』
     三十匹ほどのうさぎの行列が藍忘機とのトークを埋め尽くしたとき、初めて藍忘機から返信が来た。魏無羨はその一言が画面に現れると、藍忘機が自分に無関心ではないという事実にすっかり嬉しくなってしまった。
    『ああ、やっと返事がもらえて嬉しいよ。なあ藍湛、画面を見ているのにどうして薄情なんだ?』
    『特に話す用事がないからだ』
    『用事がなくたって、話してもいいだろ?』
    『用事がなければ話すこともない』
    『じゃあ俺が話す用事を探すよ』
    『君は、用事を探してまで人に話しかけるのか?』
    『そうだよ。藍湛と折角知り合ったんだから話したいんだ。ああそうだ、来週、傍聴できる裁判があるから、予定が合えば聴きに来るといい。多分小説の役に立つよ』
     魏無羨がそう送信した後、トーク画面には既読の文字が付いたが、沈黙した。
    「ああ! もう、どうしてうんともすんとも言わないんだ!」
     魏無羨は初めて他人に構ってもらえなくて不安を感じ、寂しい気持ちになった。彼はいつも、誰かに話しかければ話しかけられた人から倍くらい親切にしてもらい、かえってそれを煩わしく感じてしまうくらいには傲慢でいられた。しかし藍忘機はどうだろう。直接話したときには「良い奴だ」と確かに感じたのに、今自分が話しかけても煩わしそうにするし、メッセージは既読無視する。魏無羨が再びいらいらし始めたところで、画面が更新されるのが目に入った。なんとそこには、魏無羨が先ほど送りまくっていたうさぎのスタンプがあった。かわいらしい二羽のうさぎが、『謝謝』という文字と共に笑っているではないか。
    「ハハハハハ! 藍湛の奴、もしかしてわざわざこのスタンプ買ったのかな」
     すっかりさっきまでの不安や苛立ちが解消された魏無羨は、同じスタンプを送ってスマホをジーンズのポケットに入れる。彼は寝そべっていたソファから立ち上がると、温寧が用意してくれた資料を鞄に放り込み、事務所を出た。


     その翌週、藍忘機は魏無羨に案内された裁判の傍聴に訪れていた。あの時以来、魏無羨と藍忘機は連絡を取り合っていなかったが、魏無羨は傍聴席に藍忘機を見つけると、目を合わせてにっこりと笑った。藍忘機はそれを見て手に汗をかいている感覚に気付き、ハンカチを握った。
    「含光君、耳が赤いですよ。どうしたんですか」
    「……大丈夫だ」
     藍忘機を心配して付いてきてくれた聶懐桑に尋ねられて、藍忘機は短く答えると沈黙した。兄同士が親しいとはいえ、藍忘機は専ら小説家とその担当の距離感で聶懐桑を信頼している。彼に対して魏無羨との関係について相談することなど考えられなかった。
     公開された裁判は、痴情のもつれから生じた傷害事件だった。被害者は被告人と五年ほど交際していたが、被告人の両親の出自を理由に結婚を断ったため、激昂した被告人に全治二か月の怪我を負わされた。この日は法廷弁論が行われ、まずは公訴人と被害者の訴訟代理人である律師が、被告人の殺意と犯行の悪質性について述べた。魏無羨はその後、法廷調査で提出された証拠に基づき情状酌量の余地を指摘した。
    「――以上の証拠から、被告人の両親は北西部の農村の出身で、苦労を重ねながらも移住先で成功し、被告人を大学まで出しました。一方、被害者は生まれてこの方ずっと都市に暮らしており、被告人への好意はあったが農村出身の被告人と結婚する気はありませんでした。被告人がプロポーズをした際に、被害者から田舎者と結婚する気はないと激しく詰られた上、苦労して被告人を育てた被告人の両親を侮辱されたことが犯行の原因です。被告人の犯行の根底には被害者の悪意を持った行動があり、情状酌量の余地があります」
     何度か公訴側とのやり取りがあった後、被告人の最終陳述が終わり、休廷が宣言された。公判期日までに判決が言い渡されるという。犯人が深く反省を示している上、被害者が入院中で出廷していなかったこともあり、法廷弁論はドラマのような過激さがあるわけでもなく、藍忘機が思っていたよりも淡々と進んだ。しかし藍忘機は、SNSでやりとりをしていた軽薄な魏無羨とは全く異なる、彼の仕事での一面から片時も目が離せなかった。律師という仕事は、言葉尻で遊ぶような口喧嘩をすることもあるのだろうと思っていたが、魏無羨の法廷での姿は、理路整然として分かりやすい弁論をし、被害者の感情にも寄り添った上で被告人への正当な量刑を求めるものだった。
     法廷を出て、藍忘機は聶懐桑が取ってくれたメモを受け取った。
    「含光君、珍しく全くメモを取ってなかったじゃないですか。びっくりしましたよ」
    「うん」
    「『うん』って……。とりあえず僕が取ったので良ければどうぞ。次の打ち合わせまでに三章まで進めるって約束、大丈夫ですよね?」
    「うん」
     藍忘機は喉が乾くような感覚を覚え、生返事をした。駐車場に停めていた車に乗り、聶懐桑に送ってもらう道すがら、ずっとぼんやりしてしまった。
    「含光君、刑事事件は生々しかったですか? でも何度か裁判の傍聴には行ってますよね?」
    「うん」
     聶懐桑は、自身や編集部が含光君と綽名している、新進気鋭の担当小説家の何かがおかしいと思いつつも車を走らせた。藍忘機は今まで一度も〆切を守らなかったことがない優秀な作家であるが、今回ばかりは少し心配する必要がありそうだと感じた。

     数日後、藍忘機はパソコンに向かっていた。キーボードで何文字か打っては右上のバックスペースキーを押し、また何文字か書き直してはそれを消し、視界の外に置いていたスマートフォンに手を伸ばすとその画面を見た。あの裁判の傍聴席に藍忘機が来たことに気を良くして以来、魏無羨は毎日のように藍忘機のSNSを騒がせており、藍忘機は明らかに彼によって振り回されていた。しかし、藍忘機は魏無羨に振り回されていることを妙に心地よく、それがどうしてなのか分かってしまっているので余計に困惑した。
     彼は、Domの魏無羨にSubの藍忘機として好意を持ち始めている。
     もちろん、仕事で知り合った人とプライベートでパートナーになってはいけないという規則は、細かな家規があり非常に厳しい藍忘機の実家を含めてどこにも存在しない。しかし、藍忘機はどうしても自分がSubであることに面と向き合うことが出来ずにいた。家族以外のDomと知り合う機会がなければ、一生Neutralのように第二性を気にせず生きていけるとさえ思っていた。
     書いていた小説の主人公は当初の設定からさほど逸れずに書くことが出来ていたが、主人公を弁護する律師の口調や振る舞いが、読み返すたびに魏無羨のようになっている気がしてくる。藍忘機は何度も律師の台詞を書き直しては、以前書いた話を読み直して違和感が出ないようにしなければならなかった。けれども、執筆中も構わず届く魏無羨からのメッセージを読んでから作業すると、また彼に近付いてしまう。藍忘機は窓からスマートフォンを投げ捨てたい気持ちと、また新しいメッセージを期待する気持ちで心がぐちゃぐちゃになりかけていた。
    『なあ藍湛、ちょっと休憩しなよ。さっきから俺のメッセージが届く瞬間に既読つけてるけど、集中力切れてるだろ?』
    『休憩する。君はずっと休憩中のようだが、何をしているんだ』
     藍忘機は返事こそ彼に抗っていたが、左手はノートパソコンを畳んでいた。
    『えらいぞ。良い仕事は十分な休息から生まれるって相場なんだ』
     画面越しの文字の羅列にもかかわらず、魏無羨に褒められたと錯覚してしまい、藍忘機は思わずスマートフォンを床に落としそうになった。同時に、魏無羨の口元からその言葉が再生されるかのような幻覚と幻聴が襲い掛かってきて思わず眉間に皺を寄せた。藍忘機が暫く返事をしないでいると、魏無羨はまだ喋りたいことがあるのかメッセージを送ってきた。
    『今日はオフ。そうだ、なあ、さすがに一日中執筆作業という訳にもいかないだろ? 食事でもどうだ?』
    『外で食事はしない』
    『じゃあお前の家に行くよ』
    『なぜ』
    『お前と飯が食いたいから。だめか?』
     だめか? という念押しを見て、藍忘機は思わず唸った。魏無羨がプライベートで会いに来るということは、藍忘機にとって非常に嬉しいことであるが、彼はそれを果たして喜んでいいのだろうかと疑問を抱いた。魏無羨に他意がないのであれば、藍忘機は自分がどうなるか分からなかった。ひたすら彼に揶揄われても良いと思えるような自制心を持っていようと心がけているものの、もし自制できないようなことがあればと思うと恐ろしい心地がした。
    『十九時以降』
     藍忘機は震える手で返事をした。
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    yamagawa_ma2o

    PROGRESS花怜現代AU音楽パロ完結編。幸せになあれ~~~!!!!!って魔法をかけながら書きました。ハピエンです。
    すみませんが、③以降は原作(繁体字版とそれに準ずるもの)読んだ人向きの描写がはいっています。

    金曜日くらいに支部にまとめますが、ポイピク版は産地直送をコンセプトにしているので、推敲はほどほどにして早めに公開します。
    よろしくお願いします。
    花を待つ音④(終) コンサート本番、謝憐はどういうわけか花城の見立てで白いスーツを着ていた。
    「哥哥、やっぱり俺の予想通りだ。すごく似合ってる!」
    「本当かい? なんだか主役でもないのに目立ち過ぎないかな?」
    「俺にとっては哥哥が主役だからね」
     そう言って笑う花城はというと、装飾のついたシャツに赤い宝石と銀色の鎖のついたブローチをつけている。ジャケットとスラックスは黒いものだったが、ジャケットの裏地から見える光沢のある赤い生地が華やかさと季節感を演出していた。
     師青玄も白いスーツだったが、彼の方が生成色寄りで謝憐は雪のように白いものという違いがあり、共通点と相違点が適度に見えて舞台映えする。師青玄は中に緑色のシャツを着ていて、謝憐はあまり中が見えないが、薄い水色のシャツを着ていた。
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    yamagawa_ma2o

    DONE天官賜福(英語版)読破記念&日本語版3巻発売おめでとうにかこつけて書いた初書き花怜。何でも許せる人向け。帯の言葉をどうしても入れたくて捻じ込みました。ネタバレというほどではないけど暮らしている場所とかが完走した人向けです。捏造モブ神官(名前なし)がちょっと出てきます。
    太子殿下弹奏古筝(太子殿下、琴を奏でる)「ガラクタや不用品を回収しています。お家の中に処分に困っているものはありませんか?」
     ガラクタ集めは、色々なことが終わった後の今でも彼の暮らしの中にある。八百年の中で染みついた行動は、中々変えることが難しいのだ。そういうわけで、謝憐は今日も朝からガラクタを集めていた。
     昔と違う点は、必ずしも生活をするためのガラクタ集めをしているわけではないことだ。謝憐はガラクタ集めに関してあまり苦労したことはないが、その昔は換金性の高いものが集められないと少しがっかりすることもあった。けれども今は、千灯観か極楽坊に持って帰って楽しめそうなものであれば、謝憐は何でも集めている。
     それに、ガラクタ集めからは人々の暮らし向きが見える。神々の噂話の書物を拾うこともあれば、打ち捨てられた小さな神像にこっそりと居場所を提供してやることもあった。貧しい村では拾った本を子どもに読んで聞かせたり、売れそうなものを自分たちの神像の横にこっそり置いていったりすることもあった。
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