腐男子隊士荒巻真木造の受難~うちの三席五席はいつも仲良し~ オレは十一番隊十年目荒巻真木造、通称マキマキ。十年経ってもも平隊員のままなんて十一番隊に向いてないんじゃないか?とか、隊を異動すれば席官に昇格できるんじゃないか?なんて言われたこともあるが、俺は自分の役職とは関係なく十一番隊を愛している。正確に言うと十一番隊にいるニコイチ最強カプを心の底から愛している。
ちなみに十一番隊のニコイチは?と万人に聞いたら、万人がこう答えるだろう…
──「斑目一角×綾瀬川弓親」と──
そう、オレは生粋の腐男子隊士。そして草鹿副隊長殿に可愛がって頂いて早十年…時々副隊長殿の気まぐれで呼び出されて、遊び相手をさせられて…元い!させて頂いているお陰で、結構な頻度で斑目三席と綾瀬川五席が仲睦まじく過ごしている場面を目にすることができている。
「副隊長殿!どこに隠れて居られますか?」
「あはははは内緒!あたしのこと見つけるまでヒゲチョロが鬼だかんね」
今日は副隊長殿に誘われてかくれんぼをさせられて…じゃなくて、させて頂いていた。隠れるのがお上手な副隊長殿を探すのは容易でなく、オレは隊舎中を走り回って副隊長殿を探していた。
「ねぇねぇ、一角…お願いだよ…」
「何だよ…」
隊舎の隅々を探していると、なんと数メートル先を斑目三席と綾瀬川五席が二人並んで歩いている。しかも五席が三席の腕に自身の腕を絡めているではないか。いつもの事だが推しが白昼堂々イチャついている場面を見せてくれた神に、感謝し合掌した。
「一角…ナカが疼いて困ってるんだけど…挿れてくれないかな?」
「はぁ?こんな真っ昼間からか?風呂入った後の方が柔らかくなってやり易いだろ、夜まで我慢しろよ」
「無理だよ、奥の方が疼いてて落ち着かないんだもの…今じゃなきゃ嫌!」
「だったら自分でやれよ!」
「いーや、自分じゃ届かないとこだから一角にしてもらわないと無理」
二人の会話が聞きたくて追い越さない程度に距離を縮めると、とんでもない会話が耳に入ってくる。これは夜のお誘い(真っ昼間だけど)か?五席はあんなに大胆な誘い方をするのか?これが俗に言う誘い受けというやつか?考えれば考える程口角が緩んでしまう。
「執務室なら誰もいないよね?だったら執務室でしようよ…遠慮しないで奥まで挿れて♡」
「全く、仕方ねぇな…」
ここから一番近い個室は執務室、つまり自室でなく執務室でおっぱじめてくれるというのか?執務室のドアを開けた五席が三席の腕を引っ張って、二人執務室へ消えて行った。
「あっ…いっかく…んんっ♡そこ、好き…気持ちいい♡」
「だろ?何度も突っ込んでるからな、お前の好きなところは目隠ししてても当てられるぜ」
「んっ、んんっ…気持ちいい♡次は奥もお願い…ねぇ…だめ?良いでしょ?」
「ココ、もう大丈夫なのか?分かったよ…奥が欲しいんだな…」
執務室のドアに耳を当てると、五席の艶めかしい声が聞こえた。あんなに色っぽい声を出すなんて余程気持ちが良いのだろう。何度も突っ込んでて奥じゃない気持ち良いところって…つまり前〇腺?しかも三席は五席の好きなところは完全に把握している?流石としか言い様がない。更に五席がおねだりをしている声が聞こえる。
「あぁんっ♡…もっと、おく…激しく突いて…あぁっ…あぁんっ♡」
「もっと奥な…あんまり奥まで突っ込むと傷付けそうだから優しくな、激しいのも危ねぇだろ?」
「大丈夫…大丈夫だから、君じゃないと届かないから、激しくして…あぁっ♡」
「そこまで言われたら仕方ねぇな」
五席が奥をご所望とは、そして三席じゃないと届かないところとは、つまり…結〇責めってことで相違ないよな、オレのサイズじゃ到底届かない場所だ。そうだよな…三席の三席はさぞかしご立派なんだろうな。
「あぁっ♡…そこ…スゴくイイ…んんっ…あはっ…ん♡」
「お前の気が済むまで突いててやるよ」
「あぁんっ…んんっ♡…ふぅ…っん♡」
五席の喘ぎ声が室内に響き渡って、ドアの奥で繰り広げられている二人の痴態が容易に想像できる。気が済むまで突いたら五席が気絶してしまうのではないかと気が気でなかったが…先程からオレはドアを開けたい気持ちを抑えつつ、耳に全ての神経を集中させている。
「あぁんっ♡…はぁはぁ…いっかく…もぅ…大丈夫…んんんんっ♡」
「あんまりなかったな、昨日も一昨日もやってたからな。あんまりヤリ過ぎると傷付くからちったぁ我慢しろや」
「うぅ…我慢できるように努力するよ…ありがとう一角」
昨日も一昨日もって言いましたよね?お盛んじゃぁありませんか!しかも三席、言い方は荒々しいのに優しく五席を気遣ってる…スパダリか?
「ねぇ、一角…僕にもさせてよ。君も気持ち良くなろうよ」
「いや、いい…」
いや、いい…って良いわけないでしょ、してもらって下さいよ。五席が三席にすることってフェ〇ってことですよね?遠慮する理由が分からない。
「ねぇ、ちょっと!遠慮しなくて良いからさ」
「遠慮してねぇ!こないだお前に突っ込まれて膜が破れるところだったんだぞ!絶対嫌だ!」
「あの時はごめんって…今日は先っちょ程度にしてあげるからさ」
「断る!お前に突っ込まれるくらいなら自分でやった方がマシだ!」
はぁ?突っ込まれただと?…どゆこと。膜とは…処〇膜?三席にそんなものがあるわけないだろうが!もしかして二人はリバ?オレさ…リバ地雷なんだよ!
「推しがリバなんて耐えらない!オレは左右完全ドドドド固定なんだー!うわぁー」
あまりのショックに心の声がダダ漏れしてしまう。推しの地雷シチュを目の当たりにする前に、オレは脱兎のごとく執務室を後にした。
「あー、ヒゲチョロ見っけ!あたしのこと全然見つけてくれないんだもん。つまんなかったからお仕置!」
「ぐゲッ!」
夢中になって隊舎の廊下を走っていると、膨れっ面の副隊長殿が仁王立ちしてオレを迎え撃つ…そうだった、オレかくれんぼしてたんだ。副隊長殿が美しい跳躍をしたと思うと、オレの後頭部に高圧電流のような刺激が走る。お仕置と称したドロップキックにオレの記憶中枢は破壊されたような気がした…
えーっと…三席と五席がイチャついてて、その後何か耐え難い事実を目の当たりにしたような気がしたけど……何だったかな?忘れてしまった。きっと忘れたままが良いんだろう。
三席五席…オレはお二人を一生推しますからね!
◇◇◇◇◇
申し出を断った一角が、廊下から聞こえた下品な雄叫びなど気にも留めずに、僕の膝を枕にして執務室の畳の上でゴロ寝している。
「何で遠慮するかなぁ」
「逆にお前怖くねぇのか?人に耳の穴の奥まで耳掻き突っ込まれるのなんてよ…俺は無理だ」
「気持ちいいのに…」
「俺はお前に鼓膜破られそうになってからトラウマなんだよ!」
「もう、ごめんって」
自分で耳掃除をするのが苦手な僕は、特に利き手と反対の耳を掃除するのがとにかく苦手だ。利き手じゃない手で耳掃除するのは恐怖でしかなくて、かと言って利き手で反対の耳を掃除しようとすると奥まで届かないし、やりにくい。ある時、一角にお願いしてやってもらったら凄く気持ち良くて、すっかり癖になってしまった。耳掃除してもらっている時の一角の膝枕は筋肉隆々過ぎて少し高めなんだけど、慣れたらそれも悪くない。
「またやってやるけど、耳垢溜まるまでしばらく我慢しとけ!」
「分かったよ…ところで一角、僕の耳掃除を断っておいて膝枕だけ続けるのはどういうつもりだい?」
「あ?ダメだったか?嫌じゃねぇなら暫くこのままでいさせてくれ」
「もう、仕方ないなぁ…」
自身の膝から伝わってくる一角の体温が心地良いのと、執務室の窓から射し込む春の陽射しが温かくて、僕はいつの間にかこっくりこっくりと船を漕いでいた。
──春だなぁ──
一角と出会って何度目の春が来ただろうか、数え切れない程の時間を共に過ごしてきた。僕の日常の延長線には必ず一角がいてくれる。
ねぇ、一角…これからもずっと一緒だよ、離れないから離さないでね。