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    あさい

    @mtmt_shtn3

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    「かわいい女の子と大好きなキャラがくっついたらハッピーセット爆誕では?!」系のお人形遊び型夢女子
    二次創作の投稿先のひとつとして使います

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    あさい

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    こんな感じで本になるくらい書き連ねようか没にしようか迷い中のオールキャラほのぼの(未添削)

    今思っていること:「ほのぼの」を冗長であることの逃げ言葉として使うな

    #OVERREQUIEMZ

    PrisonLogbook 刑務の旅が始まって何日目のことだっただろうか。
    廃墟を目指してひたすらに歩き続け、日が傾けば良い場所を探して野営をする。とにかくそれを繰り返しと感じられるようになった頃合いのことで、かつ、まだどこの宿場にもたどり着いていない夜のことだったので、三日目か四日目くらいだったかもしれない。
     ドロシーの案内により今日も今日とて獣道に突っ込んだ一行は、あちこちに擦り傷を作りながらも穏やかな夕方を過ごしていた。
     人目を避けて街道を外れた森の中。巣へ戻っていく鳥たちの羽ばたきがいずこからか聞こえ、それを追いかけるような木々のざわめきが鼓膜の深いところを安らがせる。
     ユヒルは焚火から少し離れた倒木に腰かけ、まったりと涼やかな風を受けていた。ペースに気を遣ってもらえるおかげで一日歩きどおしでもどうにかやれているが、やわらかい足の裏だけは数時間も経つと痛くて痛くて、こうして座るだけでかなり楽になる。靴を脱いで風に当てると、体重と地面の衝突を歩数のぶんだけ受け止め続けて赤くなっていた足裏から余計な血が引いていくような心地がした。
    「ふぅ……」
    「寛いでいるね。野営にも少しは慣れたかな」
     足の指を開いたり閉じたりして感覚を戻していると、モリィがさくさくと踏み寄ってきた。
     ユヒルはいつ何時も変わらない微笑を見上げ、唇に同じような穏やかな笑みを乗せる。
    「慣れた、のかな。まだ助けてもらうことばっかりで申し訳なくなることも多いんだけど」
    「文句も泣き言も言わずについてくるだけで十分だよ。君は魔女様を見習ってもっと僕たちに頼ったらいいんじゃない」
    「ええ……今以上に頼るのは、ちょっと」
     子ども扱いともとれるほどに甘やかしを重ね、食事すら手ずから食べさせようとしてくるお兄さんに言われると頷けない。温かい声掛けには違いないので、ユヒルは眉を下げてはにかんだ。
    「長い旅になるんでしょ? ずっと頼りっぱなしじゃなくて、できることはちょっとずつでも増やしていくよ」
    「そう。君は頑張り屋さんで偉いね」
     モリィが眦を和ませる。完璧に美しい微笑ばかり浮かべている故に、かえって壁を感じさせる瞬間もある彼にしては、やわらかい顔の使い方だった。本心からの笑顔を見た気がして胸の中に花が舞ったようになる。
     見蕩れているうちにモリィの視線はすいと逸れ、ユヒルの頭の上を見た。
    「カイゼ、頷いているけど君もだよ。君だって初めての体験ばかりだろうに、率先して獣の対処までしてくれている」
    「へ、……わぁ⁈」
     視線を追って振り向いたユヒルは、首の角度を変えるなり顔のすぐそばに現れた黒衣に声を上げた。その拍子にバランスを崩して落ちそうになったところを、影のように背後に立っていたカイゼが受け止める。
    「お、驚かせてすまない……。君が不安定な姿勢でいたから、何かあったら支えられるようにと思って」
    「そ、そうだったんだ。隣に座ってくれて良かったのに」
     靴を脱いで足をぶらつかせていたので、確かにこうして傾いた時にすぐさま姿勢を立て直すのは難しい。心配された通り落ちそうになって彼に助けてもらった手前、心臓に悪いなどと苦情を言うのはためらわれて、ユヒルは口をもごもごさせる。
     隣、と繰り返した声は『その発想はなかった』と彼の素朴な驚きを宿していた。
     元通りに座らせてもらったユヒルは苦笑した。
     改めて隣を指し示すと、色白の頬をうっすらと染めた王子が横を回ってきて静かに腰を下ろす。気恥ずかしそうな横顔をあまり眺めても可哀想かと、ユヒルは焚火のほうを向いた。
     だんだんと日が暮れてきている。背の高い木々に囲まれた野営地は、真上から照らされなくなるとあっという間に暗くなる。こんな時間帯に見る焚火の明かりは、光が届く範囲を自らの領地にできたような安心感を与えてくれる。
    「ふぅ……」
    「おや、またため息」
     すっかりくつろいでいるのをからかう声をさせてモリィが笑う。それにユヒルが何か言おうとしたところで、焚火のほうから声がかかった。
    「そこの三人。夕食できたぞ、こっち来い」
     鍋をかき混ぜていた手を止め、クロードがこちらを向いている。良い子の返事をして靴を履くと、ユヒルたちはぞろぞろと集まった。
     クロードの作る干し野菜のスープは味付けが薄めで、胃の腑に温かく染み渡る。朝食の味噌汁を思い出すので、ユヒルはこれが好きだ。それぞれが出した食器によそっていく手元を見ながら、期待たっぷりに目を輝かせる。
    「ユヒル、メシん時いつも良い顔するよな」
     微笑ましそうなノイルが言う。ちらりと目を上げたクロードも似た顔つきで笑うので、少しの恥ずかしさを覚えながら誤魔化し笑いをする。
    「お腹すいちゃって。クロードのスープおいしいし」
    「お粗末さま。そうやって喜んでもらえると作りがいがあるよ。本当に単純な、料理とも呼べないものだけどな」
    「あ? 料理だろ。うまくて腹にたまって元気が出る。今日も任せちまってワリィな。明日のメシはオレが担当すっか」
     スープカップを受け取りながらそんなやりとりをして、全員に行き渡るのを待つ。体の大きさと運動量に相応しくよく食べるノイル。皆と囲む温かな食事にそっと目を細めるカイゼ。少食だからあまりよそらないでほしいと毎回告げるモリィ。
     続けてドロシーのぶんをよそろうと手を出したクロードは、いつまで経っても彼の食器が渡されないので、怪訝そうに顔を上げた。
     そこで一同は気が付く。全員焚火のほうを向いて腰を下ろしているのに、ドロシーだけはなぜか丸めた背中を向けている。
    「ドロシー? ごはんだよ?」
     ユヒルが声をかけると、ドロシーは数秒手を動かしてから振り向いた。利き手にはペンを握っている。
    「ああ、すみません。面倒ごとがあったのを思い出しまして」
    「面倒ごと? 何だか知らねぇが食った後にしろよ」
    「だって食べたら絶対眠くなるじゃないですか。あとでお嬢様のマッサージだってしないといけませんし。ねぇお嬢様」
    「えっ、私その話知らないんだけど」
    「言ってませんからね。でも足、おつらいんでしょう。寝る前にマッサージするだけで翌日ずいぶんと違いますから」
     離れた位置にいたのに、足を風に当てていたのを見られていたらしい。なんだかだらしないところを見つかったような気分で、ユヒルは頬を赤らめた。
     ドロシーがそれを見つめ、蜂蜜色の瞳をそっと撓ませる。
     羞恥に耐えかねて顔を逸らす仕草さえ大切そうに眺める彼へ、クロードが手のひらをずいと突きつけた。
    「とにかく今はカップを出してくれ。スープが冷める」
    「あとちょっとなのでお待ちいただけます?」
    「どれくらいかかるんだ」
    「そうですねぇ、今日まで溜め込んでしまったので……お先に召し上がっていただいていいですよ」
    「溜め込む?」
     首を傾げたカイゼが、ドロシーの体の影を覗き込んだ。
    「その冊子はなんだ? 監視の役割に関係のあるものだろうか」
    「鋭いですねぇ。刑務日誌です。旅が終わった時に報告書代わりに審問会に提出するんですよ」
    「刑務日誌? オレたちの悪行でも報告すんのかよ、ちょっと見せてみろ」
    「あっちょっと!」
     抗議の声を無視して冊子を取り上げたノイルが、真新しい表紙をめくる。どうせろくなことが書かれていないと思ってのその行動だったが、文字を追うにつれてその表情がなんとも言えないものに変わってゆく。
     眉を寄せ、不気味なものでも見たような顔で気まずげに冊子を隣のモリィへ流す。
    「オマエこれ、ユヒルの観察記録の間違いじゃねぇか」
    「どれどれ。……『初日。平熱。体調に自覚的な問題なし。左大腿にベルトとの摩擦による赤みが見られる』……。なるほど、主語すらないんだね」
     これには流石のモリィも若干引いたように笑みを薄れさせた。旅に出て数日。ずっと会話しているわけでもなし、人となりを細かく把握するには足りない時間ではあるが、ドロシーがこういった異常行動をとるならばその対象は確実にユヒルであろうという共通認識は出来上がっている。
     モリィから手渡されたカイゼも少し読むと気遣わしげに表情を曇らせ、「ユヒルの了解がいる内容だと思う」とやんわり窘めるように言った。横から覗き見たクロードも顔を顰め、「一周回って実験動物扱いじゃないか」と身も蓋もない感想をこぼす。
    「お前、毎日こんな記録をつけるつもりだったのか? これを審問会に出すなんて正気の沙汰じゃないぞ。学会関係者の中には喜ぶ奴もいるだろうが、なおさらこんなもの出すな」
    「そもそも刑務日誌として成り立っていないよね」
    「つか提出された側も困んだろ、こんなモン」
    「ユヒルにとっても気持ちのいいものではないだろう。その、もう少し内容を検討したほうがいい」
     温度感は違えど異口同音の指摘を食らい、ドロシーは憮然と日誌を奪い返した。カイゼの隣へ移動して中身を見ようとしていたユヒルが「あっ」と残念そうな声を上げるが、一同は黙殺した。本人のためである。
     ドロシーは深くため息をつくと、日誌とペンを脇へ置き立てた膝に頬杖をして投げやりに言う。
    「じゃあ皆さん書くの手伝ってくださいよ。不平不満ばかり言ってないで、協力的な刑務態度を示してもらわないと」
    「常々思ってたがお前の頭はどうなってるんだ。どうやったら今のやり取りからその言葉が出るんだ」
    「俺だってクロードに同じこと思う時ありますよ」
    「ああそうか両想いだなんて心から嬉しいよ」
     今度はクロードが深い深いため息をついた。しかし思うことがあったのか、渋々といった様子ではあったけれども、手慰みのように鍋をかき混ぜながら再び口を開く。
    「で、本来どんなことを書くものなんだ」
    「え……?」
    「あ?」
     カイゼが意表を突かれたようにクロードへ視線を注ぐ。ノイルも驚きを浮かべた。
     何か言われる前から、クロードも苦々しい顔をしている。
    「おいクロード、まさか書いてやる気かよ?」
    「このままユヒルの記録を出させるわけにはいかないだろ。言っておくが俺一人ではやらないからな。持ち回りだ」
    「あ、ちょっと楽しそうかも。それってみんなで交換日記するみたいじゃない?」
     ユヒルがにこにこと口を挟むと、一瞬場が静まり返る。モリィが小さく首を振る仕草をし、ノイルは腕を組む。カイゼは困った顔で視線をさまよわせた。
     失言をしたかのような空気にユヒルが一気に戸惑い顔になるが、ドロシーだけは美しい満面の笑みを浮かべる。皆それぞれ違う反応ではあったが、奇しくも男たちの考えたことは一言一句違わずに同じだった。
     曰く──ユヒルがやりたいなら仕方ない、と。
     ドロシーが頬ずりでもしたそうな笑顔でユヒルへ頷いた。
    「ええお嬢様、交換日記みたいなものです。刑務日誌と言っても厳密に内容が指定されているわけじゃありませんので、その日あったことや感じたことを自由に書いていただければそれで構いません」
    「それでいいんだ! 基本的にみんな一緒に行動はしてるけど、それぞれ感じてることは違うもんね。みんながどんなこと書くのか楽しみだなぁ」
    「本当にそんなことでいいのか」
    「ええもちろん。死刑囚であるあなた方に書いていただくことで心境などもわかれば、釈放手続きも早く済むでしょう」
     すらすらと答えるドロシーに対してはまだ過半数が疑いの目を向けていたが、方針について異を唱える者はもういない。カイゼだけが戸惑った目をしていたが、彼も拒否は延べなかった。
     こうして死刑囚一行の日誌作成が決定した。順番を決めてメモに残してから、やっとドロシーはカップを出してきた。
     結局冷めたスープに舌鼓を打ちながら、勇んで一番目を買って出たユヒルは考える。こういうものは最初が肝心である。二日目以降の当番は初日の様子を見てだいたい同じように書くだろう。充実した交換日記、ないし刑務日誌にするためには、今晩の自分がきちんとした内容を書かねばならない。
     朝からの記憶を順々に掘り起こす。起きて、野営の片づけをして、歩いただけの日とも言えるけれど、見たものや話した内容は毎日違っているから。
     いつになく静かに、そして真剣な顔で口を動かすユヒルは、さながら齧歯類の小動物のようだった。口はずっともぐもぐと咀嚼しているのだけれど、その手にはちぎられたパンがずっと握られており、食事自体は止まってしまっている。
     隣のカイゼの熱視線にも気が付かない彼女へ、焚火の反対側からモリィが声をかけた。
    「ユヒル。食事がおろそかになっているよ」
    「ん?……んぐ、ごめんなさい」
     やっと現実へ帰ってきたユヒルが、こくりと呑み込んでばつの悪そうな顔をする。
    「考えながら食べるのが大変ならお兄さんがあーんしてあげるよ。隣へおいで」
    「だ、大丈夫! ちゃんと食べます。……ごめん、クロード」
     一見甘やかしに聞こえる言葉の含意を正しく理解して、ユヒルは食事を用意してくれた相手に小さく謝った。体温が移るほどにずっと持っていたパンを口に放り込んではスープに口をつける。今度は急いで食べ始めたことにモリィが何か言いたそうな目をしても、彼女は気が付かない。
     モリィとユヒルの間で幾度か視線を往復させたカイゼが、助け舟を出すようにそっと話題を振った。
    「……ドロシーが言っていた足のマッサージだが、できれば俺も習得したい。この後ユヒルが受けるところを見学してもいいだろうか」
    「えっ、カイゼも誰かにマッサージするの?」
    「俺はこの見た目だから、受けてくれる者がいるかはわからない。だが、誰かの疲れを癒す方法は知っておきたいんだ」
     合間に会話が挟まることで、ユヒルの食べるペースが落ち着く。感心したように目を丸くするユヒルの向かいで、モリィは優しく目を細めてカイゼの気遣いを褒めるように微笑んだ。
    「そっか。もちろん見学いいよ。というか、それなら私もちゃんと知っておきたいから、ドロシーに教わりながらマッサージしあいっこしようか?」
    「えっ……」
     良い思い付きだとばかりにユヒルが人差し指を立てて言うと、カイゼは固まってしまった。その頬に見る見るうちに熱が上り、少しだけ見開かれた瞳はユヒルに釘付けになっている。
     だんだんと回数を減らしてきたとはいえ、カイゼはいまだに、ユヒルのせいで緊張や混乱を与えられると悪役の演技が出てしまう。物理的に思いきり触れ合うようなことを言ってはまずかったかと、ユヒルは苦笑した。
    「ご、ごめん。私とじゃないほうがいいね」
    「……あ、いや、その……その」
    「その?」
    「その……、その勇気だけは褒めてやろう……。この指でお前の柔肌に触れてしまえば、ひ弱な魂を摘み取ることなど至極容易。せいぜい恐怖に震えて乞うがいい、憐れな声でねだれるのならば可愛がってやるのもやぶさかではない」
     案の定不敵な笑みを浮かべ始めたカイゼにあごを掴まれ、ユヒルの手元でちゃぷりとカップが揺れる。ユヒルの反対隣にいたクロードがすぐさま手を伸ばし、ユヒルの手ごとカップを水平に保ってやる。
    「わわっ、スープこぼれちゃう。ごめんねカイゼ、困らせること言っちゃって。お、落ち着けそう……?」
    「……! すまない」
     頬を染めて目を見開いたカイゼが、背中を丸めて小さくなってしまう。そのまま夕闇に溶けてしまいたいそうな顔をして俯くのを気遣って、ノイルが会話に混ざった。
    「マッサージ習うんだったらオレも混ぜてくれよ。普段から自分で揉んだり伸ばしたりはしてっけど、医術の心得があるヤツから教わる機会ってのは貴重だし。よろしければ、カイゼ様はオレと練習しませんか」
    「ノイル……! ああ、よろしく頼む。ありがとう」
    「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」
     ノイルとカイゼが微笑みかわす。言葉遣いだけでなく、その笑顔にも最大限の敬意と親しみがこもっている。こうして騎士らしい品のあるところを目の当たりにすると、モリィの胸には安堵と反感が去来した。
     それを顔には出さず、聞き役に徹しているクロードへ水を向けた。
    「じゃあ、ユヒルの練習相手は僕かクロードということになるのかな」
    「は……?」
    「だってそうだろう? こういうのは二人一組だよ」
     今まさに口をつけようとしていたスープカップを少し浮かせ、クロードが警戒したようにモリィを見る。話題は至極穏やかなものだったが、この青年の言うことを手放しに了承するのは危険だと、これまでの数日で感じ取っていたためだ。
    「疑ってかかるのは学者先生の性分かな? 心外だなぁ」
     対するモリィは苦笑して、言葉を足した。
    「僕は疲れていないから、ユヒルのマッサージは君が受けたらいい。人を誑し込むのが得意そうな君がそんなふうに触れるのを、怖ーい北の魔女様が許してくれるかはまた別の話だけど」
    「いや、許可以前に、マッサージをお教えする話自体了承してないんですが。まあお教えしますけど。それとクロードが妙な動きをしたら魔女の権限で刺しちゃいますけど」
    「ないだろそんな権限、どんな国なんだここは」
     先ほどのカイゼとノイルに比べて、年長者三人のやりとりは社交的ながらもすっぱりとしている。
     その対照的なやり取りを眺めて、ユヒルは口元に笑みを浮かべた。
    「カイゼ、ありがとう」
     まだ先ほどの恥じらいを引きずりながらも、ノイルのお陰で持ち直した様子のカイゼに言うと、カイゼはユヒルとお揃いの目を瞬いて不思議そうにした。
    「カイゼが言い出してくれたおかげで、今日の日誌良い感じに書けそうだから」
     わくわくした顔つきで笑いかけるユヒルに、カイゼが日陰の花のごとく目を細め返す。
    「……ああ。君がどんなことを書くのか、今から楽しみだ」
     カイゼの実直で温かい人となりが伝わってくる穏やかな声音に、ユヒルの笑顔はますます深まる。
     こうして、残照の下、講習会が開催された。




    記録者:ユヒル

     今日から刑務日誌を持ち回りで担当することになりました。昨日までドロシーがつけていた分は理由があって提出できないので、ページを破り取ってここを一ページ目にします。
     今はひとつめの宿場を目指して歩いている最中で、クロードによると明後日には着けそうとのことです。(クロード、案内ありがとう!)実は途中で道に迷ってしまって、進みが遅れています──。
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    あさい

    MAIKINGこんな感じで本になるくらい書き連ねようか没にしようか迷い中のオールキャラほのぼの(未添削)

    今思っていること:「ほのぼの」を冗長であることの逃げ言葉として使うな
    PrisonLogbook 刑務の旅が始まって何日目のことだっただろうか。
    廃墟を目指してひたすらに歩き続け、日が傾けば良い場所を探して野営をする。とにかくそれを繰り返しと感じられるようになった頃合いのことで、かつ、まだどこの宿場にもたどり着いていない夜のことだったので、三日目か四日目くらいだったかもしれない。
     ドロシーの案内により今日も今日とて獣道に突っ込んだ一行は、あちこちに擦り傷を作りながらも穏やかな夕方を過ごしていた。
     人目を避けて街道を外れた森の中。巣へ戻っていく鳥たちの羽ばたきがいずこからか聞こえ、それを追いかけるような木々のざわめきが鼓膜の深いところを安らがせる。
     ユヒルは焚火から少し離れた倒木に腰かけ、まったりと涼やかな風を受けていた。ペースに気を遣ってもらえるおかげで一日歩きどおしでもどうにかやれているが、やわらかい足の裏だけは数時間も経つと痛くて痛くて、こうして座るだけでかなり楽になる。靴を脱いで風に当てると、体重と地面の衝突を歩数のぶんだけ受け止め続けて赤くなっていた足裏から余計な血が引いていくような心地がした。
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    PrisonLogbook 刑務の旅が始まって何日目のことだっただろうか。
    廃墟を目指してひたすらに歩き続け、日が傾けば良い場所を探して野営をする。とにかくそれを繰り返しと感じられるようになった頃合いのことで、かつ、まだどこの宿場にもたどり着いていない夜のことだったので、三日目か四日目くらいだったかもしれない。
     ドロシーの案内により今日も今日とて獣道に突っ込んだ一行は、あちこちに擦り傷を作りながらも穏やかな夕方を過ごしていた。
     人目を避けて街道を外れた森の中。巣へ戻っていく鳥たちの羽ばたきがいずこからか聞こえ、それを追いかけるような木々のざわめきが鼓膜の深いところを安らがせる。
     ユヒルは焚火から少し離れた倒木に腰かけ、まったりと涼やかな風を受けていた。ペースに気を遣ってもらえるおかげで一日歩きどおしでもどうにかやれているが、やわらかい足の裏だけは数時間も経つと痛くて痛くて、こうして座るだけでかなり楽になる。靴を脱いで風に当てると、体重と地面の衝突を歩数のぶんだけ受け止め続けて赤くなっていた足裏から余計な血が引いていくような心地がした。
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