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    nanana

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    年越しライブ後のあるばちゃん。

    #シモ樹
    merchantPine
    ##ハンセム

    砂礫、またたき、宝石(シモ樹) 午前四時、年明けの賑わい冷めないソウル中心部のホテルの上層階。有名になってからは一人一部屋大きな部屋が与えられているというのに、どうしてだかアルバは樹の部屋に集合しがちだ。打ち合わせでもしているのかというくらいに同じような時刻に同じような顔をして、ヒジュンもシモンも我が物顔で樹の部屋でくつろぐ。そういうのにももう慣れた。
     歌っている時以外はステージ上でもお眠の顔をしていた我らがヘッドはすでにあどけない顔をして夢の中だ。眠気でふらつきながらも自分の部屋でシャワーを浴びて律儀にも樹の部屋のインターホンを鳴らしたヒジュンは、そのままポスンとベッドに横になった。そのすぐ後にインターホンを鳴らしたシモンがそのほっぺたを人差し指でつつきながら「これもう朝まで起きないって」とケタケタと大声で笑っていたけれどぴくりとも反応しなかったから本当にそうなのだろう。
     普段ならそのまま一緒にベッドに横になって眠っているところだったけれど、年越しの浮かれ気分がまだ抜けない体は一向に眠気を訴えない。仕方なく部屋に備え付けれた冷蔵庫からアルコールを取り出して、大きめのソファーに沈み込む。当たり前のようにシモンもヒジュンのほっぺたを触るのをやめてその隣に腰掛けた。
    「お疲れタツキ」
     薄いガラスのグラスを押し当てる。チン、と美しい鈴の音のような音を立ててそれは触れ合った。曇り一つない透明なそれになみなみと注がれた薄い琥珀色をした液体が窓の外のネオンを反射する。
     今日のライブさ、あれ最高、ヒジュンが、そういえば始まる前に、音響さんが、まーじで焦ったけど、それで、それから、あれも、思い出したけどあのとき――
     アルコールがあってもなくてもシモンの口はよく回る。とりとめのない話を弾切れのない弾丸のように打ち出してケタケタと笑い転げる。樹と言えばそれに三回に一回、いや五回に一回くらいの割合で適当な相槌を打つだけなのだけれども、それを特に咎めもしなければ気にする様子もない。
     ふと会話が途切れる。沈黙を不審がって隣のグレイの瞳を見つめれば、シモンは蕩けそうに笑みをこぼしながらゆっくりと瞳を細めていく。
    「好きだよ、タツキ」
     どうしてこうも沈黙の後の言葉はきらきらと輝くのだろうか。まるで宝石のようにきらめいて胸の底に重さを残していく。無造作に投げ出されていた手の甲、その上を少し長めのシモンの指先がなぞるように触れて指先を絡ませ合う。
     二人きりならば口づけの一つや二つ交わして、事に及んでいたかもしれない。けれどこの部屋にはヒジュンもいる。それがお互いにわかっているからそれ以上はない。羞恥心や遠慮からではない。勿論関係性をヒジュンに隠しているからでもない。ただひとかけらたりともヒジュンに、自分は邪魔ではないのか、と思わせるような行動をとりたくない。つまるところ二人ともヒジュンのことが可愛くて仕方ないだけなのだ。
    「今年もよろしくね、タツキ」
    「それはアルバとして?それとも恋人として?」
    「勿論どっちもに決まってるじゃーん」
     ケタケタとグラスのアルコールは少しも減ってはいないくせに笑い続けるシモンに、こちらこそよろしくと言葉を返して窓の外を見る。
     ネオンの光しかなかった夜の街に、東の方から昼の光が差し込んでいく。交じり合ったピーコックグリーンの空を見て、ようやく芽生え始める新年の実感。酔いが回ってきたせいなのかライブの興奮が冷めてきたせいなのか、少し火照った身体が重い。
    「そろそろ寝るか、夜も収録だし」
     ソファーから離れる二人分の体重。二人でベッドに倒れこんでもお高いベッドは少しも軋みはしない。
     真ん中ですやすやと眠り続けるヘッドを囲んで、安いホテルに三人部屋しかとってもらえなかった昔と同じように、アルバ三人は明ける夜を背にようやく眠りについた。
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    nanana

    DONE「愛してるゲーム」をバラエティ番組でするあるばちゃん
    ベッドでのそれとよく似ていたから(シモ樹) 可愛い可愛いヒジュンと、恋愛の意味でも大好きなタツキに「愛してる」だなんて言われてしまえばもう抗うことなんてできやしない。

     バラエティ番組の企画で行われた「愛してるゲーム」。愛してると言われて照れた方が負け、だなんてふんわりざっくりしたゲームは見事に俺の大敗で終わる。
     どれだけ「愛してる」「可愛い」「大好き」と言葉を並べても、まっすぐな瞳で「知ってる」「僕も」と返されるばかりでヒジュンは一つも照れやしないし、いつもは頼み込んだって滅多に「好き」も「愛してる」も言葉にしてくれないタツキに壁に手をつかれて、一言「愛してる」と言われてしまえばもう床に崩れこむことしかできない。
     結局最後はヒジュンとタツキの一騎打ち。何ターンか粘っていたけれど、一向に変わらないヒジュンの顔色とあざとく言葉を重ねられるたびに口が回らなくなっていくタツキに勝負は見えた。両手で頬に触れながら「愛してる、だからずっと僕の隣で半分死んでて」というヒジュンの言葉がとどめだった。それを言われたらダメだって、と笑い転げているタツキの横で誇らしげな顔をしているヒジュンがこれまた愛しい。
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