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    tonanashi_1074

    マイ武

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    POIPOI 14

    tonanashi_1074

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    マイ武ワンライ12 
    お題 ペット

    #マイ武

    ピーチャン!ソイツは、突然現れた。

    「くぅ~、いい天気!」
    「タケミっち、その言い方オッサンみたい」
    「はぁ? オレがオッサンだったら、オレより年上のマイキーくんもオッサンですけど!?」
    「オレは窓を開けながら伸びをしたりしないもん。だから、オッサンじゃ無い」
    アラサーが二人、朝っぱらから不毛な言い合いを繰り広げる。なんの変哲無い一日の始まりだ。開けっ放しの窓からバサバサと羽音を響かせた侵入者が勢い良く飛び込んでくるまでは。
    「うわっ?!」
    「なに?」
    それぞれに悲鳴を上げる武道と万次郎をよそに、出しっ放しの洗濯ハンガーの上に留まった鳥――オレンジと緑のカラフルな体毛を持つインコは元気に自己紹介をした。

    「ピーチャン!」

    インコはおしゃべりで、次から次へと色んな言葉を並べた。普段かけられているであろう赤ちゃん言葉、夫婦喧嘩の場面が浮かぶ台詞、果てはどこで使う場面があるんだ?と疑問に思うような不穏な決め台詞。どうやら、どこぞの家庭で買われていたペットのインコが逃げ出し、迷子になったようだ。そう二人は結論づけた。
    インコは何故か二人の部屋から出る素振りを全く見せなかったため、最寄りの交番に相談して迷いインコの届け出を受理して貰ったものの、飼い主が見付かるまでは二人が面倒を見るということで落ち着いた。

    「ピーチャン、ご飯だよ~」
    武道がひそひそと控えめな声量で話しかけるも、ピーチャンは元気一杯だ。
    「ゴハン! ピーチャン、イイコ! ゴハン!」
    「わ~~! お願い、もう少し静かに」
    「ピーチャン!」
    「あぁ、駄目っすよね……」
    インコにすら言葉を遮られ、武道は肩を落した。視線の先には、未だ寝息を立てている万次郎の姿がある。昨日はスポンサーとの会合があっただとかで帰りが遅く、できることならゆっくりと寝かせてやりたかったのだが。そんな人間の都合はインコからしたら知ったことではないのだろう。幸いにも、万次郎は小さく唸り声を上げたものの、すぐに再びすぅ、と穏やかな寝息を立て始めた。ほっと胸を撫で下ろす。
    「……ね、ピーチャン。万次郎、オレの旦那様なんだ。カッコイイでしょ?」
    ひそひそとピーチャンに話しかけるも、彼女はきゅるんとした瞳で武道を見つめ、小首を傾げるだけだ。それだけの仕草がとても愛らしくて、武道はもしピーチャンの家族が見つからなかったら、オレ達の家族になってくれないかな、なんて少し不謹慎なことを思った。

    出会いと同様に、別れもまた唐突だった。ピーチャンの飼い主を名乗る若い男性が、武道達のアパートを訪れてきたのである。ピーチャンが一目散に近寄り、肩に留まって彼の髪の毛を猛然と噛み始めた様子を見ても、本物の飼い主で間違いないだろう。話を聞けば、窓が開いたままなのを忘れて檻の掃除をすべく鍵を外してしまい、ピーチャンを逃がしてしまった、とのことだった。
    ピーチャンを助けてくれてありがとうございます。もう会えないかと思って……二度とピーチャンを危険にさらすような真似はしません。
    涙ながらに何度も感謝と反省を述べ、可愛いペットとの再会を喜ぶ姿に武道の胸は一杯になった。無事に二人が再開できたことへの安堵と、ピーチャンとの別れへの寂しさ。そんな武道の心情を察したかのように、するりと万次郎の腕が腰に回され、あくまで自然に引き寄せられる。彼はツンと澄ました顔をしていたが、その優しさに思わず顔が綻んだ。

    そして、いよいよお別れとなったとき、事件は起こった。ピーチャンがおしゃべりを始めたのだ。いつも通りの内容であれば微笑ましい限りだったのだが、よりにもよって今回は違った。
    「マンジロー、カッコイイ! タケミッチ、アイシテル! アイシテルヨ!」
    「えっ?」
    「はっ?」
    ピシリとフリーズする二人を余所に、ピーチャンは止まらない。いつものマシンガントークで永遠と二人の名前と共にカッコイイ、アイシテルを言いまくる。
    「ちょ、ちょっと待って! マイキーくん、いつの間にそんなこと言ったんすか? オレ、ぜんっぜん記憶に無いんですけど?!」
    「それはオレだってそうだよ! あれか、寝てる時に言っただろオマエ! 起きてるときに言えよ、ちゃんと!」
    「それはマイキーくんだってそうでしょぉっ?! ってかスミマセン、ヘンな言葉覚えさせちゃって……! ほんとにわざとじゃ無いんです、まさかこんなことになるなんて思って無くって。あぁ、どうしよう……」
    慌てて頭を下げる武道に、目を丸くしていた男性は我に返ったようでいえ、こちらこそすみませんとぺこぺこと頭を下げてきた。
    なんでも、ピーチャンが覚える言葉は完全にランダムで、言って欲しい言葉は何度教えても覚えてくれないのに、覚えなくてもいいというか、むしろ覚えて欲しくない言葉に限って覚えがいいらしい。例にあげれば、ピーチャンが再現して見せた夫婦喧嘩の様子がそうだ。むしろ、お二人のパーソナルな部分に踏み込んでしまって、と彼はひたすら申し訳なさそうだった。

    とはいえ、一度覚えてしまった言葉を忘れされるにはどうすればいいのだろうか。二人揃って頭を抱える武道達に、彼はあの、と切り出した。
    「あの、私としては問題無いんです。お二人が、ピーチャンのことを大切にしてくれていた証のようなものですし、なにより悪い言葉じゃ無いから。……よければ、ですけど。今度、ウチに遊びに来てくれませんか。お礼もしないといけないですし、ピーチャンがこんなに他の人に懐くなんて、正直珍しくって。彼女もきっと喜ぶと思います、ね、ピーチャン?」
    「ピーチャン!」
    むしろ、オレ達のほうが大丈夫じゃ無いです。
    そんな言葉が口先まで出掛かったが、飼い主がそう言うなら武道達は頷くしかない。そもそも、インコに覚えた言葉を忘れさせる手段なんて、いくら頭も捻っても思い浮かばなかったし。

    連絡先を交換し、また後日、と頭を下げて帰路につく男性とピーチャンと見送ったあと。
    「マイキーくん、オレのこと愛してるんだ……」
    「~っ、オマエだってオレのことカッコイイって思ってるくせに!」
    「そりゃそうですよ、悪いっすか?!」
    「なんだよその言い方! あ~、可愛くない!」
    「なんですと?!」
    アラサー達の不毛な言い合いは続く。

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    tonanashi_1074

    DONEマイ武ドロライ5

    お題 花見/花の雨より、花見をお借りしました。

    マイに喜んで欲しいみっちの話

    加筆修正してあります
    さくら不良はお祭り好きである、たぶん。
    オレの偏見である。皆で集まってワイワイ騒ぐことが好きな連中が多いから、その口実になりそうなことは大概なんでも好きなのだ、と思う。もちろん花見もその一つで、テレビで開花予報が流れはじめると同時に東卍のなかで「満開になったら花見しようぜ!」という浮き足だった声が上がったのも当然と言えば当然であった。それももう、一ヶ月ほど前の話だけれど。



    「桜、もうぜんっぜん残ってないじゃん!!」

    ピンク色などもうほとんど見当たらない、綺麗な緑色の葉を繁らせる桜の木々を前に怒りの声を上げる我らが総長、佐野万次郎。その姿を横目に、武道はそっとため息をついた。
    時が過ぎるのはいつだってあっという間だ。命知らずにも東卍の隊員にちょっかいをかけてきたどこぞのチームの連中を万次郎たちが叩きのめすまでの間に、桜の見頃はとっくに過ぎ去ってしまったのである。結果、お祭り騒ぎをしたい心だけが取り残された彼らはそれでも花見を決行することにしたのだが、万次郎はすっかりふて腐れていた。つまらない連中のせいで、楽しみにしていた祭りのメインが奪われたことが気にくわないのだろう。
    2207

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