毎年お決まりの、クリスマスの礼拝。御降誕に思いを馳せる神聖な時間。
だと言うのに、シュミットはやや退屈していた。
そんなに敬虔な訳でもないシュミットからしたら、形だけの礼拝だ。
隣に座るエーリッヒを盗み見ると、前を向いて澄ました顔をして静かに過ごしている。
今、彼の心を占めるのは、自分ではなく神の御子なのだろうか、とシュミットは面白くない心地がする。
それでシュミットは、そっと手を伸ばし、膝に乗せた聖書の上に重ねられたエーリッヒの手に手を這わせた。
エーリッヒの視線がこちらを向く。
悪戯な微笑みを口元に浮かべ、シュミットは指と指を絡める。
「シュミット……いけません。神様が見ておられます」
エーリッヒがそっと顔を寄せて、耳元で囁いた。
シュミットは素知らぬ顔をしてまた前を向く。
聖職者の説教に集中している振りをしても、エーリッヒの手を離しはしない。
エーリッヒは、ふ、と息を吐いて、椅子の上に置いていたコートを、繋いだ手を隠すように膝に掛けた。
礼拝が終わり、外に出ると、空気は冷えきって雪が舞っていた。
「ホワイトクリスマスだ」
シュミットの吐いた息が白く凍る。
あっという間にかじかんだ指先に、エーリッヒの手が触れた。
「シュミット、はぐれますよ」
そう言って繋がれた手。
人混みに流されそうになる度に、強く自分を引き寄せてくれる、頼もしいエーリッヒの。
ああ、愛しいな。
シュミットはエーリッヒを見て微笑んだ。
エーリッヒも嬉しそうに微笑みを返す。
「お前、さっきは手を繋いだことを叱ったくせに」
わざと拗ねるように言えば、エーリッヒは
「叱ったつもりは。ただ、あなたと手を繋いでしまうと、礼拝に集中なんて出来なくなるので」
と取り繕う。
「ドキドキしたか?」
「しましたよ」
もう、と言うようにエーリッヒは困った顔を作って見せた。
シュミットはしてやったりと、ふふんとして、繋いだ手に力を込めた。