その後しばらくお店に行けなくなった そういえば絆創膏が無い。そう気付いていつもとは違う店舗のドラッグストアへ寄る。同じ店でも微妙に棚の位置が違ったりするが、おおよそは一緒なもので。
「えー、と…あ、これだ」
適当に気になったスナックを入れたり少なくなってきたマスクを放り込んだり、とそれなりにカゴはいっぱいだ。そこに使い勝手の良かった絆創膏を追加して、ついでにガーゼとテープも放り込む。時々絆創膏では隠しきれなくなるからだ。…噛み跡、とか。
「…………」
思い出して独り頬に熱を集めてしまった。マスクしててよかった。
ちら、と棚の左側に視線をやる。そこにあるのはスキンやらローションの類で、実は一番必要なものだったりする。とはいえあんまり目の前で立ち止まるのも憚られ、絆創膏やら包帯やらを眺めつつ横目でパッケージを確認した。ローションは普段使っているものとは違うらしく、買おうかどうしようか迷うところだ。スキンは前に見たことがあるパッケージがいくつかあり、使い心地を思い出してようやくひとつを手に取った。
確か、これはすんなり入ってくれたはず。カゴに入れようとした時、その手を後ろから掴まれた。
「残念、それはサイズが小さいね」
「っ!?」
幸い声も出せない程驚いたから叫ばずに済んだ。バッと振り向いてみれば可笑しそうに笑う恋人の姿がある。
「な、んで…」
「絆創膏切らしてたよなー、ってね」
同じ理由で訪れているとは思わなかった。
「キミはどうして?」
「…同じですよ。絆創膏無いなって思って…ついでに、色々と…」
「そっか。じゃあこれでおしまいだね」
「あっ…」
スキンは棚に戻され、カゴは奪われた。
「うん?…それ、使って欲しいの?」
「あっ、いえ、そうではなく…その…えと、ローション、が…」
「ああ、それならもう買ったから大丈夫。ゴムも買ってあるから心配しないでね」
「え」
「通販しておいたんだよ。今はそれを受け取ってきた帰りなんだ」
なるほど、通販という手があったか。
結局カゴは返って来ず支払いも済まされ、大人しく車に乗せられて帰った。後部座席に置かれた小さな段ボールが妙に存在感を放っていて落ち着かない。
「なぁに、緊張してるの?」
また可笑しそうに笑って、初めてでもないのにそんな初心な反応するんだねぇ、なんて。
「いくつかまとめて買ったから、ひとつずつ試してみようね」
今夜はいくつ試そうか、などと楽しそうに言うものだから、何と言えばいいのかわからずただ黙っていた。