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    omotimoti29

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    omotimoti29

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    現パロ実玄 他人(ドロライ)

    「今度こそ、お前の事は絶対に守る」

    唐突な決意表明を受けて、玄弥は面食らった。鬼だとか、鬼狩りだとか。そんな絵物語みたいな事を言われても、サッパリ意味が分からない。

    「あの、・・・急に守るとか言われても…俺、男だし、」
    「何寝惚けた事言ってやがる。男も女も関係ねェ。ヤられる時はヤられんだ」

    それは確かにそうかもしれない。何かにつけて、男だから、女だからと分けて考えてしまうのは、古い考えかもしれない。根が素直な玄弥は、直ぐにそう思い直した。男だって女だって、不意を突かれたら一溜りもないし、どんな時だって用心するに越した事はない。玄弥は深く頷いた。

    「だから、今日からてめぇの門限は19時だ」
    「・・・それは、流石に早すぎるんじゃ?」

    19時など、クラブ帰りの中高生は勿論、塾帰りの小学生だって歩いている時間だ。けれども、「文句あンのか?」と、怖い顔で睨まれれば、とても文句など言えそうにない。加えて、ちょっとすれ違っただけでしつこく付きまとわれれ、盗撮をされ、挙句に、しっかりと戸締りをしたはずの家に忍び込まれて犯された被害者の話を、耳に胼胝ができるほど延々と聞かされては、それなりに身長もあってガタイのいいはずの玄弥とて、恐ろしくもなると言うもの。成程、夜道には気を付けるべきだろう。分かったか?と問われて、これまた素直に首を縦に振る。素直なのは、誇るべき玄弥の長所だ。

    「わ・分かった」
    「分かればいい。それと、誰かと何処かに出掛けるときは、必ず事前に俺に相談しろ。俺が許可した奴以外との接触は禁止だ」
    「え”」
    「大丈夫だ、今お前が付き合ってる学校の友達に関しては、調べはついてるから、全員ギリセーフって事にしておいてやる」
    「ギリ?・・・ってか、俺の交友関係を、全部知って?」

    竈門に、我妻、嘴平。それに、甘露寺さんや、胡蝶さん、栗花落さん。
    驚いた事に、俺の交友関係は完全に把握されていた。なんで知っているのかと言うと、俺のスマホの履歴やSNSの遣り取りで確認したらしい。ちゃんとロックはしておいたはずなのに。そんな俺の疑問は、有難い事にすぐに解決した。

    「百年以上、お前の事は見て来たんだ。お前の思考くらい、簡単に読める」

    不敵な笑みを浮かべるその顔は、つい見惚れてしまうくらいにカッコは良かったのだけれど。何だかすごく怖い事を言われてる。取り合えず、スマホの暗証番号だけは直ぐに変えようと心に誓う。

    「言っておくが、暗証番号を変えようなんて思うなよ?」
    「な・なんで?」
    「俺が中見れなくなるだろーがァ」
    「・・・そっかぁ」

    分かりやすく顔を引き攣らせた玄弥に対する配慮だろうか。「その代わりと言っちゃぁ、なんだが」と前置きした上で、俺のスマホも好きにしていいと、徐にスマホを差し出されたので、恐る恐る最新機種と思しきiph●neを受け取る。確か、13万くらいするヤツだ。すげえ。因みに、暗証番号は自分の誕生日と同じだったが、きっとこれは偶然の一致と言うヤツだと思う。うん。中のSNSには当然の様に俺の連絡先が入っていて、写真フォルダには上から下までギッシリと俺の写真が詰まっていた。

    「あの・・・これ、」
    「ああ、それか。昨日のヤツだな」
    「・・・どうやって撮ったかとか、訊いても良い?一応」
    「何言ってんだ。昨日も一緒に寝ただろ?」

    何言ってんだと言われても、全く、記憶にない。記憶にはないが、四角い画面の中にうつる自分の寝顔は、どう考えても至近距離で撮られたものなので、きっとそれは事実なのだと思う。昨日も、って事は、毎晩一緒に寝てたのか。知らなかった。夜は一番危ねぇからな。その言葉は、そっくりそのままお返ししたい。硬い表情でスマホを握りしめる玄弥の姿を、凡そ5分も掛けて、何処からともなく取り出したもう一台のスマホに収め、玄弥が握りしめた方のスマホを丁寧にジプロックに仕舞って、「いい加減、もう寝ろ」と、ベッドに促される。いやもう、どこからツッコんだらいいのか、分からない。言われるがままに、いつの間にか用意されていたお揃いのスウェットに着替えて、洗面所で歯を磨く。余談ではあるが、コップに立てておいた歯ブラシは、知らぬ間に2本に増えていた。

    「・・・あのさ、寝るのはいいんだけど。枕とか布団とか。全部、一つしかないんだけど、」

    歯を磨きながら、控え目に試みた一人で寝たいという玄弥の主張は、当然のように通らなかった。問題ねェ。確かに、その言葉通り、玄弥には筋肉質な硬い腕枕が用意されていたので、何の問題もなかった。布団も、玄弥にはこれまた温かな筋肉布団が用意されていたので、まったく問題はない。むしろ、普段より温かいくらいだった。頭上で、ピッと、動画の撮影モードが入る音がする。どうやら、今日は玄弥の寝顔を動画に収めるつもりらしい。一体、それをどうするつもりなんだろうか。気にはなったが、聞かない方が良いような気がしたので、聞かないでおく事にする。

    こんこん小山の 子うさぎは なぜにお耳が 長うござる・・・

    ズリズリと固い胸板に引き寄せられて、玄弥が身を固くしていると、何故か子供の様に背を叩かれて、子守唄を歌ってくれた。まるで意味が分からない。でも、ちょっぴり怖い見た目に不似合いの子守唄は、ひどく心が安らいだ。背を撫でる掌は大きく、その声は何処か懐かしい。三か月前までは全く顔も知らない、赤の他人だったお隣さんなんて、到底思えないくらいだ。何でだろうと、玄弥は不思議になる。不思議といえば、どうやってこの人は家に入ったんだろ?鍵、ちゃんと閉めてたのにな。

    「玄関から。合鍵で」

    勿論、合鍵を渡した覚えはない。因みに、合鍵を作る前はベランダから入っていたらしい。うん、犯罪。眠いから、今日はもうしないけど、明日になったら一番に通報しようと、心のメモに刻み込む。確か、不死川さんの反対隣りは、女の人だったから、まだ俺で良かった。でも、なんで俺なんだろうか?ストーカーなんてしなくたって、全然モテそうなのに。

    「さあなァ・・・もしかしたら、お前が死んだ弟に似てるからかもな」

    頭上に零れ落ちてきた声は、吃驚するほど切ない響きを持っていた。本当の話なんだろうか?幾つの時の話だろう?こうやって、弟さんの事も可愛がってきたのかなあ、なんて。弟さんを守り切れなかった反動が、この人を悲しきストーカーにしてしまったんだろうかと思うと、ついつい絆されてしまいそうになるが、やっぱり不法侵入は困るし、盗撮も盗聴も犯罪だ。ここは、この人の為にも、ちゃんと言うべきだろう。

    「・・・明日からは、もう付きまとわないで下さいね」

    眠りに落ちる寸前の声で、釘を刺す。隣の不死川さんは、目を細めて「嫌だ」と笑った。





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    omotimoti29

    DONEさねげん版バースデー0107  現パロ
    笑い上戸に泣き上戸、怒り上戸に絡み酒。酒の酔い方は星の数ほどあるとは言うが。
    ・・・そうくるか。
    実弥は、こたつに突っ伏したまま、赤い顔で管をまく弟を遠い目で眺めた。

    「大体さぁ・・・兄ちゃんってズルいと思わねえ?頭いいし、格好いいし、筋肉もすごいしさあ」
    「うんうん、実兄ぃはかっこいいよねー」
    「おまけに家事もできて、DIYも出来て、料理なんかプロ並みだし」
    「そうそう、玄兄ぃ、よく分かってる!」
    「顔も超ぉカッコいいし。眩しいし・・・何か後光差してるし」
    「いよっ!実兄ぃの生き仏!」

    一体、これは何の羞恥プレイなんだと、実弥はしみじみ思う。例え世辞でも褒めてくれるのは有り難いが、ここまでくるともはや、嫌がらせだ。何が眩しいだ、生き仏だ。玄弥がそんなモンだから、妹弟達まで調子に乗って、やんややんやと囃し立てて、至極アットホームな雰囲気だったはずの誕生日会は、もはや宴会場と化している。ネクタイを頭に巻いたオッサン共が周りにいないのが、いっそ不思議なくらいだ。呆れながらも、お前も同じ顔だろと、実弥が言い返せば、案の定、酔っぱらいは「兄ちゃんは全っ然、分かってない!」と、こたつの天板を叩いてキレ始めた。
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    omotimoti29

    DONE現パロ実玄 先輩・後輩(ドロライ) ハロウィン
    「先輩、地味ハロウィンしましょうよ」と、可愛い後輩が可愛い顔をして言う。
    実弥はその言葉を知らなかったが、地味ハロウィンと言うのは、その言葉通り、あくまでも地味に、控えめに行うハロウィンの事らしい。仮装も、一目でそれと分かるような吸血鬼やカボチャ男、アニメのキャラクターなどではなく、それと言われて、ああ!と思うくらいの、さり気ないものでいいと言う。

    「ほら、宝くじのCMとかでやってるじゃないですか。女優さんがエプロンつけて、『宝くじ売り場のお姉さん!』みたいな」
    「あー…、何かあったな」

    言われてみれば、そんなCMもあったように思うし、地味ハロウィンとやらも、何となく理解できなくもないが、その面白さと言うものがさっぱり分からない。それなら、分かりやすいコスプレで構わないから、可愛い後輩が猫耳でも付けてくれないモンかと思うのが、折角だから、SNSでも話題の地味ハロウィンがやりたいと言ってきかない。いずれにせよ、今日一緒に飯を食いに行く予定は変わらないのだし、あわよくば『トリックオアトリート』と、悪戯するのもされるのも、吝かではない。実弥は頭の中でそう算段をつけて、可愛い後輩の可愛いお強請りに、如何にも仕方がないなという顔で頷いた。
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