笑い上戸に泣き上戸、怒り上戸に絡み酒。酒の酔い方は星の数ほどあるとは言うが。
・・・そうくるか。
実弥は、こたつに突っ伏したまま、赤い顔で管をまく弟を遠い目で眺めた。
「大体さぁ・・・兄ちゃんってズルいと思わねえ?頭いいし、格好いいし、筋肉もすごいしさあ」
「うんうん、実兄ぃはかっこいいよねー」
「おまけに家事もできて、DIYも出来て、料理なんかプロ並みだし」
「そうそう、玄兄ぃ、よく分かってる!」
「顔も超ぉカッコいいし。眩しいし・・・何か後光差してるし」
「いよっ!実兄ぃの生き仏!」
一体、これは何の羞恥プレイなんだと、実弥はしみじみ思う。例え世辞でも褒めてくれるのは有り難いが、ここまでくるともはや、嫌がらせだ。何が眩しいだ、生き仏だ。玄弥がそんなモンだから、妹弟達まで調子に乗って、やんややんやと囃し立てて、至極アットホームな雰囲気だったはずの誕生日会は、もはや宴会場と化している。ネクタイを頭に巻いたオッサン共が周りにいないのが、いっそ不思議なくらいだ。呆れながらも、お前も同じ顔だろと、実弥が言い返せば、案の定、酔っぱらいは「兄ちゃんは全っ然、分かってない!」と、こたつの天板を叩いてキレ始めた。
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