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    omotimoti29

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    omotimoti29

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    現パロ実玄 兄弟(ドロライ)

    本を読んでいる時の兄貴が好きだ。
    正確には、本を読んでいる兄貴を眺めるのが好き。一見、本なんか全然読まないように見える兄は、実は読書家で、ひと月に分厚い本を何冊も読む。短時間で集中してすごい量を読むから、本を読んでいる時に限っては、いくら兄貴のカッコいい顔をじっと眺めていたって、気付かれない。だから玄弥は、兄貴が本を読み始めると決まって、同じ部屋のちょっと離れた場所に移動してスマホを弄ったり、宿題を広げて悩んでいるフリをしたりする。
    ちょっと伏せられ気味の視線。鋭さのある目が隠れると、また違った印象になる。意外に長い睫の落とす影。血管の浮き出た手の甲。節くれだった指の関節。
    何を読んでいるのか、ふっと表情が緩む時もある。それは最高にレアで、貴重で、兎に角、そんな兄貴の顔を見れたら、ものすごくラッキーだ。うぉっしゃー!って、叫びだしたい位に玄弥は嬉しくなる。

    「・・・何見てやがる」

    けれど、兄貴は気配だとか視線だとかに敏い人だから、5回に1回くらいは気付かれる。でも、兄貴が読書している時の、尤もらしい台詞や言い訳はいくらでも容易してあるから大丈夫。

    「それ、面白い?」
    「・・・まあまあだな」

    兄貴は滔々と感想を述べるようなタイプじゃない。でも、楽しそうな感じはあるから、きっと気に入ってるんだなあって思う。兄貴は本当に本が好きだ。







    「お前って、意外に読書家だよな」
    「別にそうでもねェ」

    本屋に平置きされたハードカバーの本を適当に見繕って、レジに向かう。話題の長編ミステリーに、歴史小説、実用書。6冊で締めて1万三千円。それなりの出費だが、微塵も惜しくはない。

    「そんなに、面白いのか?」
    「さァな」
    「じゃ、感動系?」
    「いや、全く」

    なら、なんでそんなに熱心に買うのかと問われれば、答えは明白だ。

    「・・・弟がなァ、面白れェんだよ」

    実弥が本を読み始めると決まって近く迄寄ってきて、チラチラこっちを見てくる。それも、教科書でガードしてみたり、如何にも熱心に動画を見るフリをしながら。至極真面目な顔をしたかと思えば、ニヤニヤしたり。偶に、ふと、妙に幸せそうな顔をして笑う時もある。穴が開くほど熱心に見られれば、何やらくすぐったいし、尻の座りも悪い。けれど、迂闊な事を言って、ゆっくりと玄弥の観察が出来なくなるのは困るから、実弥はせいぜい平生を装って本を読む。

    「まあ…何ていうか、お前も苦労してんな」

    呆れ顔が言うで宇髄に、「まあな」と、実弥も肩を竦めてみせた。いい年をした大人が、幸せそうな顔を拝むだけで我慢するなど。自分でも、自分の辛抱強さに呆れてしまう。だがまあ、折角ここまで我慢して来たのだ。今更あと数年、食べ頃になるまで待つくらいのことは何て事もない。それに、我慢に我慢を重ねた分だけ、その後の食事は美味いと相場が決まっている。

    「まあ、気長に待つさ」

    右にさっき買ったばかりの本が6冊、左にさっき見つけた弟の好きなスイカ味のゼリー。「悪い兄貴だな」と言われて、実弥は愉快そうに笑った。




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    omotimoti29

    DONEさねげん版バースデー0107  現パロ
    笑い上戸に泣き上戸、怒り上戸に絡み酒。酒の酔い方は星の数ほどあるとは言うが。
    ・・・そうくるか。
    実弥は、こたつに突っ伏したまま、赤い顔で管をまく弟を遠い目で眺めた。

    「大体さぁ・・・兄ちゃんってズルいと思わねえ?頭いいし、格好いいし、筋肉もすごいしさあ」
    「うんうん、実兄ぃはかっこいいよねー」
    「おまけに家事もできて、DIYも出来て、料理なんかプロ並みだし」
    「そうそう、玄兄ぃ、よく分かってる!」
    「顔も超ぉカッコいいし。眩しいし・・・何か後光差してるし」
    「いよっ!実兄ぃの生き仏!」

    一体、これは何の羞恥プレイなんだと、実弥はしみじみ思う。例え世辞でも褒めてくれるのは有り難いが、ここまでくるともはや、嫌がらせだ。何が眩しいだ、生き仏だ。玄弥がそんなモンだから、妹弟達まで調子に乗って、やんややんやと囃し立てて、至極アットホームな雰囲気だったはずの誕生日会は、もはや宴会場と化している。ネクタイを頭に巻いたオッサン共が周りにいないのが、いっそ不思議なくらいだ。呆れながらも、お前も同じ顔だろと、実弥が言い返せば、案の定、酔っぱらいは「兄ちゃんは全っ然、分かってない!」と、こたつの天板を叩いてキレ始めた。
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    omotimoti29

    DONE現パロ実玄 先輩・後輩(ドロライ) ハロウィン
    「先輩、地味ハロウィンしましょうよ」と、可愛い後輩が可愛い顔をして言う。
    実弥はその言葉を知らなかったが、地味ハロウィンと言うのは、その言葉通り、あくまでも地味に、控えめに行うハロウィンの事らしい。仮装も、一目でそれと分かるような吸血鬼やカボチャ男、アニメのキャラクターなどではなく、それと言われて、ああ!と思うくらいの、さり気ないものでいいと言う。

    「ほら、宝くじのCMとかでやってるじゃないですか。女優さんがエプロンつけて、『宝くじ売り場のお姉さん!』みたいな」
    「あー…、何かあったな」

    言われてみれば、そんなCMもあったように思うし、地味ハロウィンとやらも、何となく理解できなくもないが、その面白さと言うものがさっぱり分からない。それなら、分かりやすいコスプレで構わないから、可愛い後輩が猫耳でも付けてくれないモンかと思うのが、折角だから、SNSでも話題の地味ハロウィンがやりたいと言ってきかない。いずれにせよ、今日一緒に飯を食いに行く予定は変わらないのだし、あわよくば『トリックオアトリート』と、悪戯するのもされるのも、吝かではない。実弥は頭の中でそう算段をつけて、可愛い後輩の可愛いお強請りに、如何にも仕方がないなという顔で頷いた。
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