兄者の手紙。続きの続き「
…だが、解せぬ。それでは解せぬのだ。
俺が正しくない弟ならば、兄者はまずはこの本丸の在庫の俺をお調べになればよかったのだ。
なのにあの方はそれをせず出て行ってしまわれた。
『もっと“こういう”弟だと思っていたのに』とも言わず。
顕現されるのは、最初の一振。
それが、真の対であると、俺は疑いもしなかった。
兄者も、そうだっただろうと思う。でなければ、このような手紙を書くほど、俺を想ってはくださらなかっただろう。
決まった物が揃うという一説と、徐々に増えていく同一在庫を心に留めるまでは。
…あぁ、ああ! 髭切様!もしや、俺も
…俺も、何振り目かの膝丸なのだろうか?
そうか、そうなのかも知れんな。
二振一具の数が合わぬのは、俺の方なのかも知れぬ。
兄者は、もう何振りもの俺を見て、そして見送ってきたのかも知れぬ。
いつかご自分の真の対が顕現されるのを心待ちにして。
だが、俺、は、違っていたのだ。きっと。
兄者のお心に添える弟ではなかったのだ。
また。
あの方のお心は、源氏の兄弟というもの、一対の重宝ということに、疲れてしまわれたのかも知れぬ。
」