デバフ専門魔導士と辺境の研究家客が来たよ。遠くから弟の声がして、オリバーは顔をあげた。
「うん、こっちに通してくれる」
そろそろ来る頃だと思っていたけど。カレンダーの印に目を止め、小さく息をつく。
「オリバー君」
よく通る声。腰に付けたいくつもの試験管が涼やかな音を立てる。いらっしゃい、ととりあえず椅子の上の物を机に移動させた。
「……まめねこ、オリバー君のとこまでたどりついていたんですか」
ふよふよと、人魂のような、煙のような影が揺れた。こちらの頭の周りをくるくると回って、そのまま彼の手のフラスコに吸い込まれる。
「きみの声は聞こえてたからね」
それに、僕の家を訪ねるのに、先触れなんて出したことないのにどうしたの。
「どうしたもなにも。すっかり雰囲気が変わってたから、家主が代わったのかと思いまして」
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