その夜、江澄は白梅の隣の客坊を用意してもらい、そこに泊まった。
牀榻に寝転がり、天蓋を見上げたまま、江澄は一向に訪れない眠気にため息をついた。
昨晩は一睡もしていないというのに、高揚感が勝って、体が眠ろうとしてくれない。
夕方に目を覚ました白梅は己の胸に深々と刻まれた呪痕を見下ろし、しばらくは呆然としていた。
江澄は己の胸に手を当てた。この傷でさえ、見せたくないと思う人がいる。
まして女の体である。白梅の受けた衝撃を思うといたたまれない。
だが、それも長くは続かなかった。
彼女は笑ってみせたのだ。
「すっきりしたよ。御宗主、ありがとうございました」
「力になり切れず、すまん」
「そんなことはありません。ばちが当たったにしては、これだけで済んだのが不思議なくらい」
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