夢花火6「ふむ……」
霊幻は顎に手を当て、歴戦の強者のごとく威厳たっぷりに大黒様の像を凝視する。
「ど、どうですか先生……」
像を”霊視”してるであろう霊幻に、女性はおそるおそるといった風に声をかけると。
「……なるほど」
霊幻は像を見つめたまま、何やら意味深の言葉を吐きつつ、鷹揚に頷いた。
「何かわかったんですね!流石霊幻先生!やっぱりあの動画は本物だったのね!ああ、よかった、ここを選んで!」
暗かった女性の表情が一気に明るくなり声が弾む。
そんな女性に対し、霊幻は大物オーラ醸した笑顔を浮かべていたが。
……ぜっんぜん、わかんねー!
霊感ゼロの霊幻には何も視えず、何も感じなかった。
再度エクボの方を見る(※このときのエクボは視えないモードで霊幻にしか見えてない)
エクボは霊幻と目が合うなり、ニタアと悪い笑みを浮かべ。わざとらしく大きなあくびをしながら、鼻をほじっていた。
こ の や ろ う
くっ、雑魚悪霊に頼ろうとした俺が馬鹿だった。
こうなったら少しでも依頼人から呪いの情報を聞き出して、俺一人でも華麗に解決してやる!
「ちなみに呪われてるとおっしゃっておりますが、具体的にはどんな感じに?」
「この像を玄関に飾りだしてから、つわりが酷くなって……体が怠くて仕方ないんです……それに」
スウと女性は息を吸ってーー
「毎日義母から電話で色々言われるし、家にくるときはいつも連絡なしで、勝手に家中チェックして嫌み言うし、仕事だって夫の稼ぎだけで暮らすのは難しいから共働きしてますって何度も説明してるのに全然わかってくれなくて、『嫁のくせに夫の母親に口答えなんて生意気』ってヒスられるし、夫は夫で家事の手伝いしないどころか、『妊娠は病気じゃないから甘えるな」って妊娠中なのに私に全部家事押しつけて。義母のことだってそう!何度義母にいびられてるって相談しても生返事で何も言ってくれないし、『母さんだって悪気はないんだ。義母の味方ばっか、なんなのあのマザコン男!この像の件だって、『せっかく母さんがお前のために用意してくれたプレゼントなのに、それを呪われてるとか失礼なこと言うな』って、逆に叱ってくるって本当何様なのあいつ、……とにかく私が妊娠中で気が立ってるせいだろうって夫も真剣に考えてくれないんですよ」
ーーノンストップで一気に捲し立てた。
……よほど鬱憤がたまってたらしい。
「もうなんだかこの像に力と運、全部吸い取られてる気がしてきて……」
呪い云々というより、家庭の問題なのでは?なんて無粋な突っ込みを入れることなく
「それは間違いなく呪いのせいですね!」
霊幻はドヤ顔100%で依頼人の悩みを全肯定した。