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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    お題箱 https://odaibako.net/u/palco87

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    palco_WT

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    神田×弓場

    #かんゆば
    driedBeancurd

    欲しいものはおまえだけ「弓場さん、何か欲しいものはありますか」
     そう告げたのは、何度か訪れたホテルでの二時間だけの逢瀬の、その終を迎えた後だった。
    「なんでェ、いきなり」
     クリスマスは終わったばかりだぞ、とシャワーから戻ってきた弓場は、濡れ髪を手でかきあげながら眉をひそめ、まだベッドに寝転んだままの神田の傍らに腰を下ろした。
    「……って、おい、こら」
     神田は腕を回し、浴びた湯のせいか、それとも情事の名残か、まだ熱をとどめる弓場の体を後ろから抱き込むと首筋に顔を埋めて囁いた。
    「次に来るあんたの誕生日、一緒にはいられないから、先払いしておこうかと」
    「先払いときたか。もう少し情緒のある言い草はできねえのか」
     弓場は笑って体を返すと、年下の情人イロの頬をつまみ上げる。
    「痛い、痛い、痛いですって」
    「あいにくだが、おめェーから巻き上げるモノなんてねェ―よ」
     伝法な物言いではあったが、その言葉からにじむのはただ温かさだけで、それを伺えない神田でもなかった。下がり気味のまなじりを一際させて、どこか甘えるように愛しい男へと告げる。
    「俺があげたいんすよ」
    「おめェ―にはさんざん、色んなモンをもらっちまってるのにか?」
    「そうなんですか?」
    「そうなんだよ」
    「そうなんだ」
     かつては部下でもあった男はほろほろと口の中で溶けるパウンドケーキのアイシングみたいな甘い笑みを浮かべて、弓場の頬を分厚い掌で撫でた。弓場はそのまさぐるくすぐったさに身と心も預けたい衝動に、しかし委ねることはなく、だがその掌を奪って唇を押し当てる。
    「だったら、おめェーと一日一緒に過ごしたい、って言ったらどうする?」
    「え」
    「一分一秒も惜しい受験生の時間をまる一日借り切りだ。これ以上の贅沢なプレゼントはあるめェ―よ。しかもおめェ―だけしかくれられねェしな」
     その一分一秒を今もこうして奪っているというのに、なんて業腹なことを俺は言ってんだろうな、と弓場は腹の中で自嘲する。もちろん冗談めかした口調に韜晦してはみたものの、だ。
     だが。
     今さら何が欲しいものか。彼からはもう返せないほどの多くのものを捧げられた。忠心、献身、誠心、そして恋慕の情と。
     もうすぐここを発ち、離れる愛しい俺の男。慕われ、応え、育んだ時間がどれだけ弓場にとっても豊穣なものだったか。
     分かってもらえなくてもいい。いや、分からなくてもいい。俺はおまえの枷にはなりたくない。彼のまことを疑うべくもないが、もし、あちらで生きるという選択が生まれたとしても、振り返ってなど欲しくはないのだから。
    「いいですよ」
     だが、軽やかに答える神田の、しかし弓場を見据えるまなざしは重く、熱く。
    「冗談に決まってんだろ」
     そう告げて、弓場はその唇に自らの唇を押し当てた。
     俺こそ、おまえにくれてやれたものなど、この身ひとつだけだったというのに。
    「残念」
     触れる刹那に、果たして、唇が象った「嘘つき」という言葉は気づかぬふりをすることだけが弓場がしてやれることだった。
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    related works

    palco_WT

    DOODLE合コンの頭数合わせに呼ばれてうっかりした弓場ちゃんが神田に回収されるの巻。
    (https://twitter.com/palco87/status/1331039561263181824)
    合鍵を貰っておいて良かった、と居酒屋から何とかか彼の部屋まで連れて帰ってきた弓場をベッドに横たえて、水やタオル、万が一嘔吐した時のことを考えてバケツと新聞紙をその傍らに用意する。
    「すまねェ」
     一度も聞いたことのない弱々しい弓場の声に、神田は眉をひそめながらもベッドの近くに引き寄せた椅子に腰かける。
    「大丈夫ですか?」
    「こんなことなら手ェすべったフリでもしてグラスを倒すほうが利巧だったかもしんねェな」
    「?」
     意味が分からずきょとんとした顔の神田に、店に迷惑かけるしなァと、弓場は言い足し、
    「俺の隣に座ってた女が化粧直しに立った隙に、反対側に座ってた奴が一服盛った気配があってな」
    「は!?」
     話には聞いたことはあるがそれは犯罪では???と神田はまなこが落ちそうなくらいに目を剥いた。
    「胸倉掴んで鼻骨のひとつもへし折ってやっても良かったんだが、幹事の知り合いの諏訪さんたちの顔ォ潰すわけにも行かねェーからな。間違ったフリして俺が呑んじまえばいいやと思って、一気に空けちまったんだが、睡眠導入剤ってやつだっけ? 結構効くもんだな。未成年だってェーのは言ってあったから酒呑むわけにはいかね 966

    palco_WT

    MAIKING今宵星がきみに降りるから

    高三弓場ちゃ、神田や蔵内、王子たちが二年のまだ旧弓場隊の頃のクリスマス前後。
    弓場が大学進学が内定したあたりで王子は独立する予定。六頴館だからもう決まってるのかな……
    六頴館高校から本部へと、部下の神田と蔵内を共に向かう道の途中、弓場がふと足を止めたのは青果店の前だった。
    「神田、蔵内、おまえら、リンゴ好きか?」
    「……? 好きですよ」
    「ええ。王子がたまに淹れてくれるアップルティーを楽しみにするくらいには」
    「そうか。なら、キャラメリゼして……」
     何事か小さくつぶやいた弓場は少し考えてから、一見梨にも見えそうな薄い黄色の皮の林檎を幾つか買い求めた。
    「煮るんなら紅玉みてェな酸いリンゴのほうが味が際立つんだが、甘みが強いならキャラメルソースにも負けねェだろ」
     星の金貨、と書かれた林檎を掌に納めて、弓場は透明なレンズの奥の天鵞絨《ベルベット》のようなしっとりした夜の色でありながら品の良い光沢を備えた瞳を細めた。
    「星の金貨……? っていうと昔のドラマの?」
    「関係ねェよ。見た目が金貨みたいな淡い色だからそう名付けたって話だ。品種名はあおり15だったかな」
    「弓場さん、農学部にでも行くんですか」
    「ねえだろ、三大《サンダイ》には」
     何言ってんだと弓場は笑いかけた蔵内にひとつ手渡し、もうひとつには軽くキスをしてから、神田へと放り投げた。お手玉をするよ 720