『二人だけのひみつ』 彰人とキスをしていると、今まで自覚していなかった自分を知ることがある。自分がこんなにも口付けが好きな性質なのだと実感したのも、そのうちの一つだ。とりわけ、どちらかの室内で行う秘め事は格別だった。
彰人は警戒心の強い男で、いつも見えない鎧を身につけているかのようだった。社交的で友人が多いかと思えば、自覚があるのか無いのかめっぽうな秘密主義者で、大体のことを言うまでもないことだと判じて他人に打ち明けることをしない。本人がそんな調子だから、俺はそのぶん彰人の好ましいところや良いところを知ってもらうために、多くの人にそれを吹聴することになった。
それはさておき、そんな彰人も、相棒であり恋人でもある俺にだけは警戒心を弛めてくれる。まるで野生動物が懐いたようだなとも思うけれど、それを言ったらきっと拗ねてしまうだろう。
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