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    Medianox_moon

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    ワタクシが猫で、アナタがネコで 13
    3話の終わりです。わりと気に入っているシーンなので書いてて楽しかったですw 次が一応の最終話シリーズになります~!

    ##ワタネコ
    ##ユントマ

    ワタクシが猫で、アナタがネコで 13 暗い月夜の埠頭。真っ暗な海がザアザアとさざ波の音を立てている。倉庫が立ち並ぶその暗がりに、二人の男の姿が有った。
     一人はユンユンだ。先日街に行く時に着ていたのと同じ格好で、暗い海の方を見ている。もう一人は……縄でグルグル巻きにされて逆さ吊りになっていた。
    「ひぃいいいい、た、助けてえぇええ」
     逆さ吊りにされているのはソウジだ。彼はクレーン車のクレーンに括りつけられて、海のほうにぶら下げられていた。暗いのに二人の姿が見えたのは、クレーン車の灯りのせいのようだった。
     ユンユンは長い煙管のようなものをトントンと振りながら、「で? その10万円は何に使うつもりアルカ?」とソウジに尋ねる。
    「しゅ、就職するんだってば! さっきも言ったろ⁉ スーツとかなんやかんやで結構使うんだよ! 面接受けないと話が始まらな、」
     ソウジが話している途中で、ユンユンが指をパチンと鳴らす。そうすると、クレーンが下がり始めた。ソウジは頭から海面に向かって落ちていく。
    「ひぃいいいいいいいッ!」
     悲鳴を上げていたソウジは、海面スレスレのところで止められ、また引き上げられた。ガクガクブルブルと震えているソウジに、ユンユンは煙管をヒタヒタと押し付けながら言う。
    「次は鼻まで浸けるヨ?」
    「ひぃいいっ、ホント! ホントなんです! 信じてくださいぃいい!」
    「ホントアルカァ? 誠意が感じられんアルナァ? そうやってこれまでどれだけウソをついてきたかわからんアルからナア?」
    「ホントに! ホントです! 本気なんですッ! ちゃんとした会社で、あのッ! 調べてみてくれたらわかるんで! ホント」
     ソウジが必死に会社名や代表の名前を喋った。その言葉にユンユンが後ろを振り返る。すると、どこからともなく黒服にサングラスの男たちが駆け付け、ヒソヒソと耳打ちをした。それを聞いて、ユンユンは頷きながらソウジに言った。
    「オマエ、騙されてるアルナ」
    「エッ⁉」
    「馬鹿なヒトを安く雇って、ネズミのように働かせ、使い古した猫じゃらしのように捨てる連中アル。最悪オマエが前科者になって終わりアルナァ~。コレは大変ネ、10万円返すどころか人生ドブに捨てることになったネェ」
    「そ、そんな、そんなぁ……!」
     オレ、オレ本当に今度こそやり直さなきゃってぇ。ソウジが泣き始めると、ユンユンは「フゥン?」と首を傾げた。
    「オマエ、やり直す気があるのカ?」
    「あ、有るっ、有ります! もうこのままじゃいけないって決めたんです! 借りた金だって絶対に返したい、トウマはオレの親友だから……ッ! なのに、こんな、騙された挙句中国マフィアに殺されるなんて……」
     うえぇええええ、と声を上げて子供のように泣き始めたソウジ。それを尻目に、ユンユンは黒服の男に何事か囁いた。黒服の男が何処かに電話をして、大きく頷いて見せると、ユンユンはソウジにニッコリと微笑む。
    「いいコトを思いついたアル。オマエ、ワタクシの店で働かんアルカ?」



    「そ、ソウジ、ダメだそれ、ダメな流れだっ!」
     トウマは飛び起きかけて、それで「ぐあああああ」っとまたベッドシーツに沈み込んだ。全身が痛い。特に両腕から肩、背中に腹筋、ああやっぱり全身がとんでもなく痛い。プルプルしながら辺りを見渡すと、真っ暗なそこは夜の埠頭などではなく自分の部屋のようだ。
     ハァハァ呼吸をしていると、ナァン、とユンユンが後頭部に擦り寄って来た。ぐりぐり額を押し付けられている気がする。それで、夢か……と安心する。きっと「オシオキ」が激しすぎたのと、ソウジが心配だったからあんな夢を見たのだろう。
    「……ユンユン、心配かけてごめんな……」
     そう言うと、ザリザリ首筋を舐められた。そういえば首輪も外れているし、寝間着も着せられている。痕になってなきゃいいけど……と思いつつ、身動きを取る気がしない。そう考えたのがわかったのか、ユンユンはぴょいとトウマの上を跳んで、どすんと正面に降り立つ。すりすりとトウマの手のひらの中に頭を押し込んできたから、それを撫でてやった。
     こういうところはとても甘えん坊の猫だ。トウマにはどうも、ユンユンのことがよくわからない。そういえば、これまで一度もキスもされていないし、挿入もされていない。猫である彼にとって、人間はそういう対象ではない、ということなのだろうか。
     ゴロゴロと喉を鳴らすユンユンのことを、世界一可愛いうちの猫だと思う。同時に彼のことがよくわからない。どんな生い立ちで、これまでどう生きて来たのか。何故トウマを選んで、こうして一緒にいてくれるのか。一度ゆっくり話をしてみたい気もするけれど、色々聞いたとしても、いつもの調子ではぐらかされるだけのような気もする。
     ただ、今回ユンユンは本当に怒っていた。それはわかる。だから、トウマのことを本当に思ってくれているのだ。たぶん『にゅ~る』のことを心配していたのではないと思う。たぶん。
     とりあえず、ユンユンをモチーフにした小説、結構ダークヒーローにしたら面白そうだなあ、とぼんやり考えながら、トウマはまた眠りに落ちていった。



    「トウマ! コレ!」
     それからしばらくして。ソウジが部屋にやって来るなり、すぐに封筒を差し出してきた。中を見ると、いくらかのお札が入っているようだ。
    「ソウジ、」
    「これまですごい迷惑かけたけど! ようやく返済できそうだよ! 全額は時間がかかっちまうけど……必ず、少しずつ返すから……」
    「お前……!」
     トウマは目頭が熱くなった。正直に言えば、ソウジが金を返すようなことは無いだろうと思っていたのだ。髪まで黒く染め直したソウジが、照れ臭そうにしているのを見て、心から「良かったなあ」
    と呟く。
    「その、言ってた仕事、上手くいったのか?」
     ベッドに腰掛けたソウジに、お茶や菓子を持って行きながら問う。今日はユンユンはまだ怒っていないのか、ソウジからは少し離れた床に丸くなって寝ているようだった。
    「いやそれが」
     ソウジはお茶を一口飲んで語る。
    「中国マフィアみたいなのに絡まれて」
     そこまで聞いたところでトウマはお茶を噴き出しそうになった。んぐ、と耐えてソウジを見ると、頭を掻いている。
    「いや~、死ぬかと思ったけど、そのマフィアみたいなやつが良い人でさ、なんかよくわかんねえけど、銀行の雑用係みたいなのに斡旋してくれて」
    「銀行」
    「あんなマトモな仕事に就けるなんて思ってなかったからさ! オレ、人生やり直すつもりで頑張ってるんだ。そしたら職場の人にも優しくしてもらえてさあ……ホント、あれから何もかも上手くいってて夢みたいだよ」
     トウマはチラリとユンユンに視線を移した。彼は、大きな欠伸をしただけで、特に何の反応もしていなかった。

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    Medianox_moon

    MOURNING田中と宇津土とスキスギ君 っていうタイトルの、全くBLでもなんでもないコメディを書こうとしたものです。
    0 サラリーマンゾンビと神ベースとうっすい名刺 終わった。終わっちまった、何もかも。
     全てを失った……と言っても過言じゃない。俺はそう……一言で言って絶望に打ちひしがれ、孤独なサラリーマンゾンビのようにフラフラと歩いていたわけさ。
     街はすっかり日が暮れて、暗闇を街灯や店の照明が華やかに彩っている。道行く人は足早に駅へと向かう者と、逆にこれから夜を楽む者とでごった返していた。止まらない車の列は台風の日の河みたいに吸い込まれそう。そんな表通りは、サラリーマンゾンビと化した身には酷だ。
     そんなわけで、俺はその波から逃れるように、路地を曲がった。
     道が一本違うだけで随分静かになるもんだ。とはいっても、まだまだ繁華街の端。それなりに人は歩いていたし、暗い顔をして佇んでいる人影や、都会を生き抜く野良猫の姿も有る。通り一本挟んだ大通りの、人混みや車列がたてる音ははっきりと聞こえた。騒音だ。今の俺には、まごうことなき騒音。やけに大きく聞こえるから耳を塞ぎたくなったその時、俺の耳にボォン、と音が聞こえた。
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