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    hinoki_a3_tdr

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    エハミナ尻切れ

    「ミナセって何がしたいの?」
    ミナセは間抜けな顔でこちらを見上げた。

    つい先日、珍しいものを拾った。何と人間。しかも元討伐部隊だ。いや、正式に脱退した訳では無いから今もか。劇的な経緯なんて特にない。彼いわく、生き延びたいから長いものに巻かれてみた、という程度だ。俺の認識とも差異がない。
    正直に言うと、それもブラフでいつか寝首をかかれるだろうと思っていたのだ。俺たちに強い憎しみを抱くやつなんて五万といる。そういう連中は手段を選ばないし、味方を切って捨てるなんて朝飯前だろう。
    だが、そんな兆候は現れず、ミナセは大人しい。今だって、俺の分と合わせて野営の準備をしている。俺は何もせずぼやっとしているのに文句も言わずだ。
    「いや、訳わかんないこと言ってないで手伝ってくださいよ」
    「文句も言わずは間違いだったか」
    「はあ???」
    「こっちの話」
    呆れたという態度を隠しもせず、かといって俺に何か言うでもなく、ミナセは引き続き作業に没頭する。程なくしてテントの準備が終わった。続いて日を起こし始める。
    「まじでなんもやんねぇし……」
    「何も言われなかったから」
    「言うだけ無駄だからですよ。ったく……」
    ミナセの態度は気安いものだ。同じ討伐部隊でも、もう少し気を使うものだろう。実際、あの廃墟での彼はまだ控えめだった。
    「ミナセって不思議だよね」
    「まだその話続いてたんですか」
    「答えて貰ってないからね」
    「あ〜ハイハイ。なんでしたっけ?」
    「ミナセって、俺が怖くないの?」
    ミナセは手を止めることなくこちらをちらりと見た。でも、それだけだ。彼の手元でチリチリと火種が生まれる。すかさず彼は燃料へと移した。それ一瞬でごうごうと音を立てて焚き火へと様変わりした。ミナセは一息ついたように、手持ちの水を口に含んだ。
    「怖いか、怖くないかって言われたら、怖いですね」
    「……その割に普通だよね」
    「怯えて欲しいならそうしますけど?」
    「そうじゃないよ。ただ分からないだけ」
    「そりゃ怖いでしょ。あんたは俺を一瞬で殺せる。なんの躊躇もなくだ」
    「そうだね」
    「否定しないし……。まあ、逆に言うと、怯えようが何しようが殺される時は殺されるでしょうから。なら俺なりに過ごそうかなってだけです」
    「人間ってそういうものなの?」
    「人によりますね。あんたらこそ、みんな同じなんすか?」
    「個体によって意識は違うかな。思想みたいなのは同じだと思うけど」
    「思想?」
    「本能とでも言うべきかな? 地球の言葉は難解だ」
    「俺よりお上手ですけどね?」
    「なら君が下手なんだ」
    ポンポンと続く会話とは心地よいものなのだとミナセと出会ってから知った。人間は殺すだけの存在で同胞もまた似たようなものだ。そう思うと、案外貴重な存在なのかもしれない。
    「君が君であり続けてくれるのなら、当分は大丈夫だと思うよ」
    「だといいんですけどね」
    なんにも期待していないからこその軽口。それが真実だということに気づいたらこの子はどんな顔をするのだろうか。
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