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    dps94kakuriyo

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    クラノス、サテヨモ、フククワのネタ帳からSS化したものをここにあげたり、文庫の作業場だったり。他にもいろいろ。

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    誰もいない海は、優しいけれど終着点では無い

    #サテヨモ
    iwomo

    ラストシーン 六月半ばの、静かな海辺。
     遥か水平線を船が通ったり、海鳥の姿が見える。温い塩風が、この場に似合わぬヨモツザカの白衣をはたはたと揺らした。

     歩みの遅いヨモツザカを追い越したサテツが、進行方向でじっと立っていた。ヨモツザカが気に留めないそぶりでそこまで辿り着くと、逞しい両腕が待ちわびたように痩躯とフラスコを抱きしめた。
    「なんだ、どうした?」
    「こうしたかっただけです」
     サテツは柔かに笑って、満足したのか、
    「誰も居ませんから」
     と、ヨモツザカの右手を大きな左手で捉えて、そのまま、またゆっくりと海辺を歩き出す。ヨモツザカが懐に抱いたフラスコの中で、灰色の塵がサラリと音を立てる。
    「……そうか、誰も居ないか」

     ヨモツザカは、徐に顔の仮面を取って眼鏡に掛け替えると、改めて海を見た。梅雨の晴れ間、青空と水平線が溶けて重なる。
     ヨモツザカとコロと、サテツしか居ない海辺の砂浜に、二人の足跡だけが点々と続いていた。


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