悪夢のあとに 酷い悪夢だった。
もっとも忌諱する記憶。それがねじ曲がり、虚構が混ざり合い、あたかも真実のように展開される。B級どころかC級以下の胸糞悪い映画だ。
強制的に離脱したのに、目覚めた時には完全に脳がエラーを起こしていた。頭にいつまでもこびりついて離れない。一言で云って最悪の気分だ。
ふと、隣の彼が起きていることに気付いた。
「……どうした」
「……いえ、俺も目が覚めて」
譫言でも漏らしていたのだろうか? なら申し訳ないことをしたかも知れない。いっそ忘却してほしいものだが。
「眠れそうですか?」
「わからん」
「じゃあ……散歩に行きますか?」
空は白んで居た。
昔ならコロを連れて散歩に出ていた時間だ。のそりと身を起こせば、背中に手が添えられた。昨日は普通に寝ただけだから、体は特に痛くは無いんだが。ただ、掌の温度が心地良かった。
眠そうな視線が近づいて来る。
「こら」
キスは歯磨きの後だ。と言えば、彼は人好きのする顔でふにゃりと笑った。