ペット麿水(お出かけの段)「清麿、行ってはダメだ!」
「え、いきなりどうしたの?水心子」
「今出かけたら清麿は雨に濡れる」
「こんないい天気なのに?」
「猫が顔を洗うと雨が降るんだ」
「うん、知ってる。でも水心子は毎日顔を洗ってるよね」
「なっ…」
清麿の返事に水心子は答えにつまる。今日は久々の休みで甘え倒そうと思っていたのに清麿は出かけようとしている。すぐ帰ってくると言うが清麿不足の水心子は甘えたくて仕方がない。かと言って素直に甘えたいと言えるかと思えばやはりプライドが邪魔をする。ここで自分が本当に猫だったら足にしがみついて邪魔するのに。このからだでも出来なくはないがやはり恥ずかしい。ということで最もらしいいいわけを思いついて出かけるのを邪魔してるのだがそう簡単にはいかないわけで。
素直に甘えられたらどんなに楽だろうか。ふと思いつくのはこないだ清麿に出来たモデル友達と見るからに胡散臭い自分と同じ猫。見目が良いのをわかってるのか飼い主にその猫にメロメロになっていた。飼い主の気を引くためなら女装すら厭わないというのだから相当飼い主が好きなのだろう。自分も清麿のためなら女装の一つや二つ、いや自分は由緒正しい血統書付きの猫だ。いくら飼い主の気を引きたいからと言って女装はない。女装は。
「水心子、直ぐに帰ってくるから、大人しくよいこで待っててね」
清麿は水心子を外に出したがらない。理由は好奇の目で見られるからだ。人型の猫は今でこそ多いが好奇の目で見られることは少なくない。それとはまた別にもう一つの理由がある。清麿はそれを水心子の前では口にしたがらないが。自分の恋人がその手の性癖持ちの人間にモテモテなんて喜べない。ましてや一度被害にあってるのだ。水心子は忘れてしまって覚えてないが。
家から出ようとしてる清麿を見て水心子は決めた。清麿のそでを両手で掴み上目遣いして清麿を見て一言。
「清麿、行かないで。お願い。僕のそばにいて」