家政夫パロ「朝ごはんは冷蔵庫の一番上に置いてあるからちゃんと温めて食べてね、あとスーツはシワになるからちゃんとかけて」
水心子正秀。25歳。ブラック企業に務めて早数年。いとこが心配して雇った家政婦に胃袋を掴まれました。
水心子が彼と出会ったのは悪夢の6連勤が終わった時だった。帰ってきて適当に風呂に入ろうとしたその時ベルがなってそれで、その後の記憶が無い。気づいた時はベッドの上で真横に知らない男。知らない男を連れ込む趣味はないが昨日は疲れていたし、もしかしたらと考えていたら寝ていた相手が目を覚ました。
「おはよう」
「…ええと、その君は一体」
「僕はね、君の従兄弟に雇われた家政夫だよ」
「家政婦??」
水心子の記憶違いでなければ家政婦というのは女性がやるものではなかっただろうか。目の前にいる性別不明の人間は胸がないところを見る限りどう見ても自分と同じ男だ。じっと見つめていたら青年はくすくす笑いながら「今はそういうの関係ないんだよ。僕の他にも家政夫やってる人いるから」と答える。どうやら考えていたことが顔に出てしまったらしい。それからお互い自己紹介を済ませ、彼の作った朝食をすませると、自身の名を名乗った彼、源清麿はここに来た経緯を語った。
いとこと言っていたが水心子にはいとこはいない。心当たりがあるとしたら孤児院の仲間だろうか。
「南海先生って知ってる??その人から頼まれたんだ。」
南海先生。水心子の勘は当たった。南海先生は水心子がいた孤児院のオーナーだった。小さい頃はそれなりに従っていたが歳を重ねるにつれそれは変わっていった。南海と水心子の間には切っても切れない縁がある。半分血が繋がっているのだ。水心子の母親は南海の父親の妾だった。そして南海は正妻の息子。妾の存在を正妻がよく思う訳もなく成人するまでちゃんと育てるという妾の脅しの元水心子は成人するまで孤児院で育てられた。どうやら妾の子供というのは権力者にとって邪魔な存在らしい。
「もう義兄さんとは呼んでくれないのかな」
「誰が呼ぶか。お前との縁もこれまでだ」
そう言って孤児院を出たのが20歳の時。それから南海とは音信不通のはずだ。なのに源清麿は南海に雇われたという。知らないうちにあれこれ調べられてたらしい。長い溜息をつけば「幸せ逃げてっちゃうよ」と言われ言葉を失う。幸せ、その言葉が意味するものは一体なんだったろうか。しばらく沈黙が続いたあと清麿が差し出したものを見ればそこに好き嫌いと書かれていたものがあって。
「なにこれ?」
「なにこれって家政夫として雇用主の好き嫌いは大事な事だからね。」
好き嫌い…渡されたボールペンで言われるがまま書いていくと1番下の項目で水心子は固まった。そこに書かれていたものは
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