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    晏沈の転生もの4話目です。

    夜の帝王の記憶なし晏無師×記憶あり沈嶠で、晏無師の記憶を戻そうと沈嶠ががんばる話です🌃
    今回はワクワク同居編です。R15くらい

    転生晏沈 4 タクシーが止まったのは歓楽街から十分ほどの所にあるタワーマンション前だった。晏無師は眠ってしまった沈嶠を起こし、タクシーを降りる。高級ホテルのような豪奢なエントランスを通り、二人を乗せたエレベーターが止まったのは最上階。広い玄関で靴を脱ぎ、廊下を通り抜ければモデルルームのように整った内装のリビングが広がる。大きな窓の向こうにはバルコニー、そして夜景が続いている。 

     沈嶠はぼんやりとした頭のまま晏無師の後ろで部屋を見回していた。リビングには高価そうな絵や置物が飾られている。しかし沈嶠の目を引いたのは壁に設置された水槽だった。大きな水槽が一つ、そして少し離れたところに小型の水槽が二つ。沈嶠は物珍しそうに水槽に近寄り、中の魚を観察した。大きな水槽では色とりどりの熱帯魚が泳いでいる。次に小さな水槽に目を移す。二つの水槽の中には美しい白と黒の魚が一匹ずつ、長いヒレを揺らめかせて泳いでいる。そして不思議なことにその二つの小さな水槽の間には薄い板が置かれ、魚同士は互いが見えないようになっていた。
     沈嶠は晏無師を振り向いて尋ねた。

    「どうして、この子たちは一匹ずつ離されているんですか?」
    「そいつらは闘魚と呼ばれる魚だ。雄を一つの水槽で育てると争いが起こり、死ぬまで戦うから一緒にはできん」
     沈嶠はまた水槽に目を戻した。黒い魚は尾ひれが長く美しい。ゆらゆらと袖を翻すように水に揺蕩う様は黒衣を着た晏無師を思い出させた。
     
    「水槽の中に一匹だけでは、寂しいでしょうね……」
     ふん、と晏無師は鼻を鳴らした。
    「魚に感情などない」
     晏無師は魚を気にもかけない顔で、沈嶠に座るように促した。沈嶠は大きなL字型のソファに素直に腰を下ろす。

    「あなたはここで一人で暮らしているんですか?」
    「そうだ」
    「広いですね。浣月宗の御屋敷を思い出します」

     興味深そうに室内を見渡している沈嶠を置いて、晏無師はキッチンへ向かうとワインのボトルとグラスを持ってきた。

    「廊下に出てすぐのドアがバスルームだ。そしてその向こうが寝室。コレクションルームにしている部屋や、今は使っていない客室もある」
     そう言いながらワインをローテーブルに置くと、沈嶠の隣にどっかりと腰を下ろす。晏無師は上半身を沈嶠にぐっと近づけ、沈嶠の耳に囁いた。
    「それで? お前はどこでしたい?」
    「え……?」
     何の話ですか? という言葉が出る前に視界が反転し、沈嶠はソファの上に仰向けにされていた。

    「このままソファの上でも構わんが、ベッドの上がいいか? 立ったまま夜景を見ながら抱かれたいという奴もいたな。バスルームの中でやってついでにシャワーを浴びるというのでもいいぞ」
     くつくつと喉を鳴らしながら晏無師が沈嶠のシャツのボタンを開けていく。あっという間に上半身が空気に晒され、ベルトを抜かれた所で沈嶠は我に返った。晏無師が何をする気なのかわかり慌てて両腕を突っ張る。

    「ちょっと、ちょっと、待ってください!」
    「お前は私を愛していて、私に抱かれたいんだろう? 望み通り抱いてやる」
    「愛しています。でも、でも、まだ駄目です!」
     晏無師の鍛えられた胸板がグググ、と手のひらにのしかかってくる。
    「お前は私に積極的に口づけして、のこのこと部屋にまで上がってきた。今さらそんなつもりじゃないとは言わせないぞ」
     晏無師の重みを感じ、首筋に唇を押し付けられ、沈嶠の肩がぶるりと震えた。覚えがある感触の唇と手が沈嶠の肌を這えば身体が勝手に熱くなっていく。胸の先端を舌で嬲られ、沈嶠の身体が小刻みに揺れた。

    「……っ、あっ……、そんなつもりじゃないとは言いません! いずれあなたに抱かれたいとは思っています。でも、あなたはまだ私を好きじゃない……あなたにも私を好きになってもらってからじゃないと……」
    「いずれ抱かれる気なら順番なんぞどっちが先でもいいだろう。ほら、触ってみろ」

     晏無師は沈嶠の手を取り自分の下半身に導いた。晏無師の猛りに触れた沈嶠は目を見開き、真っ赤になって自分の手元に視線を移す。晏無師は沈嶠の手に自分の剛直を握らせた。
    「光栄に思え。お前に反応してこうなっている」

     あまりのことに驚いて沈嶠が抵抗を忘れている隙に、晏無師は沈嶠のズボンの中に手を入れた。沈嶠の雄芯も反応を示し、下着が先走りで濡れていることを確認してニヤリとする。
    「ははは、お前だってすっかりその気じゃないか。なんだ、抵抗は演技だったのか?」
     
     晏無師の言葉で、沈嶠の頬に一瞬で熱が集まる。
    「~~~~~ッッ、だって、あんな風に触られたら……! 私はあなたのことが好きなんですから……!」
     自分の反応に恥じて顔を背け、唇を噛みしめる沈嶠の様子に煽られる。晏無師は下唇を舐め、下着に手をかけた。
    「じゃあいいな。抱いたら私もお前に情が湧くかもしれんぞ」 
    「だめです!!」

     本気で脱がしにかかってきた晏無師に抵抗しようと沈嶠は身体を捻る。それを抑えつけねじ伏せようと晏無師がのしかかる。沈嶠は細身だが意外なほどに力が強く、二人はソファの上で攻防を繰り返した。大抵の相手なら抵抗されたところで片手で動きを封じ込められるのに、なかなか屈しない沈嶠に晏無師は片眉を上げた。晏無師の下から逃げようともがき、振り回した沈嶠の手がローテーブルの上を横切る。テーブルにあった物が手にぶつかり、次々と床に落ちる。灰皿が転がり、煙草が散らばり、床に落ちたグラスの上にワインボトルが落ちた。

    「あっ!」
     ガシャンと割れた音が響き、沈嶠が動きを止める。視線を向ければ床にはガラスの破片が散らばっていた。
     大変だ、と沈嶠が慌てて起き上がろうとするが、晏無師が上にいるせいで起き上がれない。そのまま体勢を崩し、ソファから落ちそうになった沈嶠は咄嗟に床に手をつこうとした。だが、床には割れたガラス。まずい、と思うが間に合わない。沈嶠は目を閉じた。
     しかし沈嶠の手がつくより先に沈嶠の身体はソファの上に引き戻されていた。代わりに勢い余った晏無師の手が床につき、ジャリ、というガラスが擦れ合う音がする。どうやら落ちそうになった沈嶠を片手で引き戻した反動で、晏無師が体勢を崩したらしい。上体を起こした晏無師の手のひらからぽた、と鮮血の雫が落ちる。

    「晏宗主!!」 

     晏無師の掌を見て沈嶠が叫ぶ。
    「私を庇ってくれたんですか……!?」
     ガラスで切れた手のひらから手首に血が伝う。晏無師は自分の手をじっと見ながら眉を顰めたままだった。痛みのせいではない。沈嶠を守ろうとして自分の身体が咄嗟に動いたことが信じられなかった。

    「早く、早く手当てをしないと……!」
     一気に酔いが醒めたのか、沈嶠の顔は蒼白になっていた。脱がされた自分のシャツを晏無師の手にグルグルと巻き付ける。
    「すみません、痛いですよね、すみません……」
     痛みに耐えられない、というような表情の沈嶠を見て、晏無師の中で不思議な感情が湧きあがって来る。沈嶠の目からは今にも涙が零れ落ちそうだった。

    「お前が怪我をしたわけでもないのになぜそんな顔をする」
     晏無師の手を高い位置に持ち上げながら、沈嶠は首を振った。
    「自分が怪我をするより、あなたが怪我をするのを見る方が辛いです。あなたが傷つくくらいなら自分が傷ついたほうがいい」
    「……」 
     どこまでがこいつの本心なのだろう、と晏無師はじっと沈嶠を見つめた。人間は皆利己的で自分が一番可愛い生き物だ。自分が助かるために人を犠牲にすることはあっても、「他人が傷つくより自分が傷ついた方がいい」などという感情があり得るのだろうか。

    「何か応急処置できる物はありますか?」
    「向こうの棚にあるはずだ」
    「わかりました!」
     沈嶠はすぐに立ち上がり、晏無師の手当てを始めた。数分前に襲われかけていたことなど気にもしていない様子の沈嶠を、晏無師は奇妙な物でも見るように見つめた。

     
     幸い晏無師の傷は浅く、出血もすぐに止まった。沈嶠は晏無師をソファに座らせ、自分は散らかった床を片付ける。
    「痛みはどうですか? 明日念のため病院に行きましょう」
    「不要だ。痛みもない」
    「駄目です。手はよく使う場所だから傷も開きやすいですし、水にも濡らさないようにしないと。でも利き手が使えないと色々不便ですよね……」
     肩を落とした様子の沈嶠に対し、晏無師は口の端を上げる。
    「そうだな、利き手が使えないとお前を抱くのに不便だ」
    「……」
     沈嶠は無言になった。こんな状況でも晏無師は人を揶揄う余裕があるらしい。
     
    「……とにかく、私ができることなら何でもしますから」
    「そうだな。お前を助けるために怪我をしたのだから責任を取ってもらおう」
     ソファのひじ掛けに肘をつき、ゆったりと見下ろしてくる晏無師を見上げ、沈嶠は真剣な顔で頷く。
    「もちろん、私を庇ったせいなので、怪我が治るまで私が責任を持ってあなたのお世話をします。料理でも洗濯でも掃除でも!」

     晏無師は心の中で笑った。怪我は別にこいつの責任ではない。襲われたのも忘れ自分に尽くそうとするとは、こいつはお人好しの偽善者なのだろうか。はたまた自分の怪我の隙を狙って何か仕掛けようとしている巧妙でしたたかなスパイなのか。
     だが、どちらにせよ晏無師はすでに沈嶠に興味が湧いていた。ホストとしての働きぶりにも、その美しい顔と身体にも、理性的な顔の下に隠されている欲望にも。もう少し自分の側においてこの男をじっくりと観察してみたい。

    「いいだろう。じゃあ早速風呂に入れてくれ」
    「お風呂……?」

     何を想像したのか、その言葉で沈嶠の顔には熱が集まり耳まで赤くなる。晏無師は面白そうに沈嶠の顔を見つめた。先ほどの身体の反応を見る限り「晏無師を好きだ」というのも「抱かれる気がある」というのも案外嘘ではないのかもしれない。晏無師と関係を持ちたいという人間は男女問わず多い。しかし、媚びて誘惑されることは多くとも、好意も欲も抱いているのに身体は許さないという者は今まで見たことがなかった。もっと沈嶠の反応が見てみたい。

    「あいにく手を濡らせないらしいからな。お前に隅々まで洗ってもらうしかない」
    「隅々……!? わ、わかりました……なるべく見ないように、がんばります……」
     顔を赤くして俯く沈嶠が愉快で晏無師はますます興が乗ってくる。

    「ああ、そうしてくれ。その後は一緒のベッドで寝てもらう」
    「一緒に? ええと、ここに泊まっていんですか?」
    「ああ、私の怪我が治るまでずっとだ。夜中手が痛くてうなされるかもしれないしな」
     神妙な顔の晏無師を見て沈嶠は首を傾げる。
    「さっきは痛みもないと言っていたのに……?」
    「急に痛くなってきた」
     晏無師が眉を寄せ包帯を巻いた手を庇うと、沈嶠は慌てて頷いた。
    「そうですよね、わかりました。私が一晩中隣で様子を見ているので安心して下さい」

    「だが、あいにく手を使えないから一緒に寝てもしばらくお前を抱いてやることはできんぞ」
     沈嶠はまた赤くなった顔を俯かせる。
    「そっ……それは、大丈夫です……」
     さっき身体を反応させてしまったことを思い出しているのだろう。俯いたまま戯れに指を擦り合わせている沈嶠の反応に満足すると、晏無師はニヤニヤと笑みを浮かべた。
    「残念そうだな? まあ、お前が私の上に乗って腰を動かしてくれるという方法ならできないことも……」
    「もういいですから、お風呂に入りましょう! 私が背中を流します!!」



     ______こうして晏無師と沈嶠の同居生活が始まった。

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    5ma2tgcf

    PROGRESS晏沈の転生もの8話目です。

    夜の帝王の記憶なし晏無師×記憶あり沈嶠で、晏無師の記憶を戻そうと沈嶠ががんばる話です🌃

    今回は闘魚とすれ違い編です。
    転生晏沈 8 胸がざわつく。
     妙な夢を見た後、晏無師は眠ることができなかった。目を閉じる度に沈嶠の顔が瞼にちらついて仕方がない。昨夜桑景行に売り飛ばした沈嶠は、今頃奴に抱かれているのだろうか。晏無師の頭の中に、夢の中で見た乱れた沈嶠の顔が浮かぶ。あの表情を桑景行が見ているのかと思うと腹の中が煮えるような感覚に襲われる。

     不可解な感情を持て余した晏無師は苛立ち、必然としばらく吸っていなかった煙草に手を伸ばす。沈嶠がいない今、止める者もいない。摘み上げた煙草を肺一杯に深く吸い込み、余計なことを考えないよう身体中を煙で満たそうとする。しかし焦燥はおさまらない。小さく燻るような赤い火が灯る煙草の先端。灰皿の上には吸殻が積もり、時間だけが過ぎていった。晏無師は長い指で灰を弾き、艶のある髪を気だるく掻き上げる。窓の外はすっかり明るくなっていたが、まだちらちらと雪が舞っていた。風に翻弄され、熱が加えられれば儚く溶けてしまう雪。また沈嶠の顔が浮かびそうになり晏無師は煙草を揉み消した。
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    PROGRESS晏沈の転生もの6話目です。

    夜の帝王の記憶なし晏無師×記憶あり沈嶠で、晏無師の記憶を戻そうと沈嶠ががんばる話です🌃
    今回はホスト編とワクワク同居編のラストです。そこそこ手を出されます。R15くらい。
    転生晏沈 6 晏無師と沈嶠が同居を始めてから三週間。沈嶠は相変わらず夜はホストとして働き、昼は晏無師の世話をするという生活を続けていたが、それは意外にも穏やかで楽しい日々だった。二人の同居は『怪我が治るまで』という理由で晏無師が言い出したものだったので、怪我が治ったら追い出されるのだろうと沈嶠は思っていた。しかし晏無師は『まだ治っていない』『傷が開いた』などと言っては、なかなか沈嶠を手放そうとしない。
     最近の晏無師は出会った当初の冷たい印象とは違い、沈嶠のことをそれほど警戒していない様子だった。沈嶠を揶揄っては面白がり、笑顔を見せたりもする。少しずつだが心を開いてくれている、と沈嶠は感じていた。晏無師を変えることなどできないと思っていたが、晏無師は沈嶠の望み通りあれ以来煙草も吸わなくなった。二人の関係はいい方向に進んでいる。このまま一緒にいたらそのうち記憶が戻るかもしれない。いや、もし戻らなくともこの晏無師と生涯を共にすることができるかもしれない。楽観的かもしれないが、沈嶠はそう思い始めていた。
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    PROGRESS晏沈の転生もの4話目です。

    夜の帝王の記憶なし晏無師×記憶あり沈嶠で、晏無師の記憶を戻そうと沈嶠ががんばる話です🌃
    今回はワクワク同居編です。R15くらい
    転生晏沈 4 タクシーが止まったのは歓楽街から十分ほどの所にあるタワーマンション前だった。晏無師は眠ってしまった沈嶠を起こし、タクシーを降りる。高級ホテルのような豪奢なエントランスを通り、二人を乗せたエレベーターが止まったのは最上階。広い玄関で靴を脱ぎ、廊下を通り抜ければモデルルームのように整った内装のリビングが広がる。大きな窓の向こうにはバルコニー、そして夜景が続いている。 

     沈嶠はぼんやりとした頭のまま晏無師の後ろで部屋を見回していた。リビングには高価そうな絵や置物が飾られている。しかし沈嶠の目を引いたのは壁に設置された水槽だった。大きな水槽が一つ、そして少し離れたところに小型の水槽が二つ。沈嶠は物珍しそうに水槽に近寄り、中の魚を観察した。大きな水槽では色とりどりの熱帯魚が泳いでいる。次に小さな水槽に目を移す。二つの水槽の中には美しい白と黒の魚が一匹ずつ、長いヒレを揺らめかせて泳いでいる。そして不思議なことにその二つの小さな水槽の間には薄い板が置かれ、魚同士は互いが見えないようになっていた。
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