〇〇が怖い「ひっ。虫が。」
「えいっ。これで大丈夫だぞ〜。」
レオが作曲用に借りている部屋に司が掃除をしにやってきた。リビングの掃除中、テレビ台の裏から現れたゴキブリを潰して倒したレオは死骸をひょいとゴミ箱に入れる。
「ほんとスオ〜は虫が苦手だなぁ。」
「きっと私のへその緒を埋めた場所を最初に横切ったのが虫だったんでしょう。だから私は虫が怖いんです。」
「なにそれ、へその緒と怖いものって関係あるの?」
「おや、聞いたことありませんか?へその緒を埋めた場所を最初に横切ったものがその人の怖いものになると。」
「へぇ。そんな話があるのか!面白い☆虫と怖いもの、霊感が湧いてきた!」
「はいどうぞ、紙とペンです。」
「ありがと。」
カリカリとペンを走らせ始めたレオを見つめながら司はポツリとつぶやく。
「レオさんの怖いものって何でしょうか。」
「ん〜?おれが今1番怖いものはスオ〜かな。」
「えっ。」
「だから、今日はこの部屋に泊まって。」
ペンからあっさり手を離して司の腕を掴む。
「あなた、もしかしてあの古典落語を知って……?」
「さぁどうだろうな〜?」
レオはそのまま司の腕を引っ張ってラグの上に押し倒す。
「怖いスオ〜のことは食べちゃわないとな。」
やっぱり知ってるんじゃないですかという言葉はレオの口内に飲み込まれて、司の口内を蹂躙しようとする舌に自らの舌を絡めた。