初めは君じゃなきゃいけない理由なんて何一つ無かった。ピンチの時に助けてくれたアシスタントの一人。ただ、それだけ。
始まりはただの勘違い。思考力の落ちた人間など都合の良い物しか見ないし見えない。
だから扉を開けたのは本当に偶然で、そのままなし崩しに最後まで付き合ってくれたのも当たり前の事だと思っていた。
それが君の気まぐれか優しさだったのか、奇跡に近い出来事だったと気付いたのは少ししてからの事。
雨の降るコンビニからの帰り道。一体いつからそこに立って居たのか、足元に水溜りが出来る程の時間は経っているはずで、濡れた身体は少し寒くなってきた風に冷やされて一層血の気が引いて見える。
その姿があまりに頼りなく見えてしばらく君を見つけた場所から眺めてしまった。雨は降り続いているし、君の背後の扉は今は絶対に開かない。ただ雨宿りしているだけで、他意は無かったかもしれない。
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