Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    しの☆

    @shinoooonxxx

    こちらにはpixivから移動させた松のお話が置いてあります。気になったら覗いて見てください😊

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 28

    しの☆

    ☆quiet follow

    探してシリーズ11。
    やっとお兄ちゃん登場。

    〜速度松翌日、会社で顔を合わせたアツシがこそっと擦り寄って来て、昼飯奢るって耳打ちして来たから頷いた。ああ、その顔を見れば分かるよ、上手く行ったんだね。良かった。


    「…トドくんに泣かれちゃったよ」
    「何してくれてんの、僕の可愛い弟泣かすなって言ったよね?」
    「いやでもほら、アレだよアレ!嬉し泣き!」
    「それなら今回は見逃すけど、もしもトド松泣かせるような事あったら兄弟総出でアツシの事ボコるからね」
    「こっわ…カラ松さん筆頭にみんなブラコンかよ」


    会社近くの定食屋。一番高いステーキ定食を頬張りながら睨みを効かせる。当然アツシの奢りだ。


    「僕やカラ松なんてまだ大人しい方。トド松の事になると、一松と十四松の方が容赦なくて怖いよ」
    「十四松…って、ああ、トドくんのすぐ上の彼か」
    「そう。あの二人はトド松モンペだから怒らせないようにね。特に十四松はトド松が唯一の弟だからさ」
    「…肝に銘じとく」


    弟達の中の兄である一松と、トド松がたった一人の弟の十四松。弟達には独自の絆がある。形は違えどそれが僕達兄組にもあったように。それに、一番のブラコンが控えてるんだよね。まだどこにいるか分からないけどさ。弟達みんな揃ったよ、みんなで兄さん迎えるから。寂しくないから早く顔見せてよ。


    「…それで?一番上のお兄さんは」
    「まだ全然手掛かりなし。ほんっと、どこで何やってんだかねえ」


    最後の一切れのステーキを口に放り込んで箸を置く。美味かった、ご馳走様。


    「早くお兄さん見付かると良いな」
    「そうだね、遅いよって一発殴ってやらないと気が済まない」
    「長男にその扱い?」
    「それで良いんだよ、僕達は」






    どれだけみんなで探しても兄さんの手掛かりはなかなか見付からず、季節も流れてもうすっかり寒くなって来た。今年はコートを新調しようかな、なんて吐き出した白い息を見ながら思う。トド松もアツシと上手く行ってるみたいだし受験もあるし、買い物ついでに学業の神様にでもお参りしてお守りプレゼントしようかな。最近何となく昔のトド松を彷彿とさせる言動をするようになって、もしかしたら少しずつ何かを思い出してるのかも知れないと思う。十四松は二十歳になったら結婚するんだって、彼女と話し合ったらしい。あと一年ちょっとで可愛い義妹も出来る。きっとそのうち、可愛い甥やら姪やらも増えるだろう。一松はレストランの仕事を増やしたみたいで、週に五日働くと疲れるね…ってこないだ溜息吐きながら呟いてた。気の良い常連客と仲良くなって、たまに一緒に遊びに行くようになったとか。カラ松はひと月程前に公開された映画で主役を果たした。みんなで観に行ったけど、こんなに演技上手かったのかって驚いた。もちろんその日、帰って来たカラ松を総出で弄り倒したのは言うまでもない。
    …ねえ。僕達は前世の記憶を持ちながら、今の時代を楽しんでるよ。足りないのは兄さんだけなんだ。みんな、口には出さないけど寂しがってるよ。


    「…どこにいるんだよ、おそ松兄さん…」


    暗かったし、もう目の前の角を曲がったらアパートだと油断したのかも知れない。駅から同じ方向に歩いて来た人ももう殆どいなくて。絶対に見付かるまで泣かないと決めていたのに、あの馬鹿に会いたいって思いが急に強くなって涙が落ちた。どうせ泣くなら家まで我慢すれば…。


    「…やーっと泣いたなぁ」


    ふわり。そんな言葉と一緒に、首に何か暖かい物が巻き付く。赤…。赤い…マフラー?


    「ッ!!!」


    勢い良く振り向いた僕の背後に立っていたのは、会いたくて会いたくて堪らなかった、少し照れた表情の長男だった。


    -----


    「…に、いさ…」
    「よっ、チョロ松う。久しぶり!」
    「ひっ…久しぶり、じゃねぇよ…!今までどこで何してたんだよ馬鹿兄貴!」
    「うわあ、久しぶりに会ったお兄ちゃんにその言い方?さっすがに傷付くよー?」
    「っ…どれだけ、僕が…みんなが探したと思って…」
    「…うん、ごめんな。遅くなって」


    ふわり、マフラーより暖かい腕に抱き込まれる。ああ…間違いない、おそ松兄さんの温もりと匂いだ。そう思ったらもうダメで、僕の涙腺は決壊した。もう往来だとかは頭になくて、兄さんにしがみついて子供のように泣きじゃくった。


    「うあああああにいさあああああん…!!」
    「…泣き虫チョロちゃん…」
    「うっせ、おまっ…お前の、せい、だからなっ…!」
    「うん、そうだな。…じゃあさ、チョロちゃん泣かせたからオレ、一生責任取るよ。それじゃダメ?」
    「だ…ダメっ…」
    「えー、何で?」
    「せっ…責任、とかで、傍いられんの…嫌だっ…」
    「なるほど…そんじゃさ、これなら?」


    涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔を上げられ、優しいキスが落ちてくる。ゆっくり離れた顔を固まったまま見つめる僕に、兄さんは珍しく照れて視線を泳がせた。


    「…待たせてごめん。オレさあ、前世からずっとチョロ松の事好きだったんだよね。お前、オレが死ぬ前に好きだよって言ってくれたじゃん?ちゃんと聞こえてたし、めちゃくちゃ嬉しくてさ。だから逆にこの時代でチョロ松の事幸せに出来る自信がつくまで一人で頑張ろうと思って。でもやっとその自信ついたのに全然お前泣かねぇしさあ、もしかしてオレの事そう言う意味で好きじゃないのかなってちょっとだけ思ったりして。そんでも今やっと泣いてくれたからこうして現れたって訳」


    兄さんの言葉にいつの間にか涙は止まったけど、それより恥ずかし過ぎて死ねるかも知れない…何それ、何それ。


    「…いつ、から…」
    「ん?」
    「全然泣かないって…いつから、僕の事…」
    「んー、割と早い段階でチョロ松だけ探した。オレも記憶持って転生したからね、見付けたのはお前が高校入って少ししてからくらいの時かな?」
    「っはあああああ!?」


    嘘だろ何でそんな前から!?てかそれなら何でもっと早く…!


    「お前が大学入って家を出るって知って、お兄ちゃんちょっと小細工しちゃった」
    「こ、ざいく…?」
    「うん。今チョロちゃんが住んでるアパートね、オレの持ち物なの」
    「…へ?」
    「だからさ、オレがあのアパートのオーナーな訳。ってもあそこだけじゃなくて、最近カラ松達が住むとこも手に入れたけどね」
    「えっ…え?」
    「トド松だけは記憶ないし実家住みだから手は出せなかったけど、カラ松と一松、それに十四松が住んでるアパートもオレの持ち物なんだよねー」
    「…兄さん…今、何してんの…?」


    次々出て来る情報に頭が追い付かない。それなのに兄さんは何でもない事のように笑って、昔みたいに鼻の下を擦りながら言い放った。


    「家賃収入で食ってるよ、悠々自適に」
    「…いやいやどんだけ家賃収入あんだよ」
    「んー?んとねー、取り敢えずアパートはさっき言ったお前達のとこ三棟と他に三棟?駐車場が月極と時間貸し合わせて七つ。あ、あとあちこちで土地貸してる!」
    「…土地転がし」
    「ちっげーよ!株で稼いだの!」
    「株う?」
    「そー。ちょっと知り合いに勧められてさ、やってみたんだよね。そしたらそれが大当たりでー。ほらオレ、カリスマレジェンドだし?あっという間に億万長者だよ」
    「…嘘だろ、ギャンブルじゃないんだから」
    「ほーんとだって!これ見て!」


    ばっ、と兄さんが肩に掛けていた鞄から何かを取り出す。良く見るとそれは経済情報誌で、驚いた事に兄さんが表紙だった。


    「見て見てこれ!ほら、これ!経済界の若きカリスマ、松野おそ松特集!」
    「…こんなの本屋でもコンビニでも見た事ないんだけど…作ったの?自費出版?」
    「まだ発売前なの!もー、ほんっと疑い深いんだからなあチョロ松は。よし、じゃあここじゃ寒いし兄ちゃんの家行こ!証拠見せたげるから!」
    「えっ、あ、ちょ、兄さんっ…」
    「良いから良いから、絶対チョロちゃん驚くってえ」


    手を握られ、グイグイ進む兄さんに着いて行くしかなくなった。…ああ、でも変わらないね。安定の馬鹿で安心したよ。


    -----


    なんて思ったのも束の間。…やっぱり馬鹿なのか、コイツは。ああ、そうだ馬鹿だったよ。奇跡の馬鹿だっけ?馬鹿は死んでも治らないって本当だったんだな。


    「ね、どう?びっくりしたあ?したよねえ」
    「……するに決まってるだろボケエエエエエ!!しない方がおかしいだろうがよ!!!」
    「そーんな大声出したら血管切れちゃうよ?」
    「出させてんのはテメーだろうがあああ!!!」


    連れて来られた兄さんの家はなんと、僕の家の隣だった。…馬鹿なの?本当に付ける薬も飲む薬もないくらい手遅れの馬鹿なの?


    「だーってさあ、チョロちゃんの隣にイケメンの兄ちゃんでも入居してみ?引越しの挨拶の時から狙われて部屋押し入られてあんな事やこんな事されちゃうかも知れないじゃん?だから兄ちゃんが隣室確保しました!」
    「何良い笑顔で職権乱用してんだゴルァァァ」
    「そんな怒んないでよー。少しでも近くにいたかったんだってば」
    「っ…大体経済界の若きカリスマがこんなボロアパートとかないでしょ」
    「ちょっとー、ボロって…オレのなんだけど?まあ正直、ここは仮住まい。家建てたから引っ越すよ」
    「…ふーん。…それにしても道理で家賃安かったはずだよね、角部屋だけど曰く付きだとか言って相場より三万近く安いんだから。ああ、でも隣にストーカーいたら曰く付きなのか」
    「えっ、ストーカーいるの!?」
    「お前だよ!」


    仮住まいと言うだけあって、必要最低限の物しか置かれていない部屋。コーヒーを淹れてくれた兄さんが目の前に座って僕の手を強く握った。


    「会うのは随分待たせちゃったけどさ、オレはずっとチョロ松の傍にいたよ。毎日隣のドアが開閉される音聞くだけで幸せだった。でもさ、やっぱり一緒に同じドア開けたいんだよ。同じ家に帰りたい。だからチョロ松、オレと結婚して」
    「…結婚、て…」
    「しようよ。婚姻届もあるよ、後はお前のサインとハンコ待ち。…まあ、役所に出すなんてのは出来ないけどさ、でも」
    「っ…散々待たせていきなりプロポーズとか、何なのもう…っ、不束者ですけどお受けしてやるよ!こんな馬鹿、僕じゃないと面倒見られないでしょ!」
    「わっはー、やっぱチョロ松!大好き!幸せにする!」
    「…幸せにしなかったら兄さんが死ぬ時耳元でガラスに爪立ててキーキー言わせるからな…」
    「ひー!やめてその地味に嫌な攻撃!」


    耳を塞ぎイヤイヤと首を振る兄さんを見てたら、待たされたとかめちゃくちゃ探したのにとか、そんな事本当にどうでも良くなって来た。僕も大概の馬鹿だ。


    「…僕も、好きだよ。前世からずっと…」
    「っ…!やっべ…その顔、反則…」
    「…兄さん?あ、みんなに言わなきゃ」
    「待って待って。取り敢えず弟達への報告は後回しにしてさ、せめて今日くらいはチョロ松と二人きりでいさせてよ。…ダメ?」
    「っ…ダメじゃない…」


    畜生、無駄に男前スキル上げやがって…僕が逆らえる訳ないだろうが。


    「…好きだよ」


    そんな顔して笑うな、心臓が潰れそう。



    結局今日どころか次の日丸々一日動けなくなるなんて、その時の僕には分かるはずもなかった。



    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works