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    しの☆

    @shinoooonxxx

    こちらにはpixivから移動させた松のお話が置いてあります。気になったら覗いて見てください😊

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    しの☆

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    喧嘩松が書きたかった。かっこいいカラ松が書きたかった。

    喧嘩は相手を見て売りましょうその日は久しぶりに弟組三人で出掛けていた。
    普段は猫に会いに行くくらいしか外に出ない一松も、一人で野球に行く十四松も、デートやショッピングが好きなトド松も、月に一回あるかないかくらいのこの三人での散歩が好きだった。
    10時頃家を出て、まずは十四松の希望通り河原でキャッチボールや軽い打ち合いをして楽しんだ。一松もトド松も十四松の本気には付いていけないので、それこそお遊び程度のものだったけれど、普段は一人で野球をしている十四松はもちろん、あの一松でさえ楽しそうに笑っていた。
    お昼は最近トド松がお気に入りだと言うカフェのランチセットを三人分、テイクアウトして広い公園でのんびり食べた。
    それから「猫の写真撮らせて!」と言うトド松の言葉に一松が頷き、ひと月程前に生まれたばかりの仔猫を見に行った。…の、だが。


    「っ…はっ…クソッ…」


    路地裏に入って猫の写真を撮って、少し世話をしていたらそこにあまり遭遇したくない風貌のお兄さん達がやって来た。
    逆恨みか、金銭狙いか。どちらかは分からなかったけれど、咄嗟に一松は弟二人を背に庇い、トド松は猫の棲家の前に陣取った。十四松はそんなトド松を庇いながら、すぐに一松の助けになれる位置に移動したのだけれど。


    「お前は手を出すなよ、十四松。トド松を守れ」


    そう一松に言われてしまった。
    十四松は兄組からの厳命で、兄組がいない時には喧嘩をさせないようにと言われているのだ。喧嘩が始まると止めるタイミングを失う十四松は、往々にしてやり過ぎてしまうきらいがある。ましてや力はカラ松に次いで強いのだ、下手に手を出したら犯罪者になってしまうかも知れない。それを兄弟全員が知っているからこそ、一松は十四松にストップをかけた。暴走した十四松を止められるのは、五男より力の強い次男だけ。
    けれど、それもそろそろ限界が近い。
    一松も喧嘩が弱い訳ではない。ただ得物攻撃を得意とする反面、力や体力はそれほどでもないのだ。今回の相手は人数も多く、この人数だと逆恨みかな、なんて呑気な事を考えてはいるが既に顔に三発、腹に五発、右足にも思いっ切り腫れそうな程の蹴りを喰らっている。そろそろ何とかしないと弟達にまで手を出されてしまう。
    口端から血を流して立つ一松の耳に、カラン…と不吉な音が聞こえた。目の前にいる一人が、どこから調達したのか手に鉄パイプを持っていたのだ。


    「はっ、お前四男だっけ?かっこいーねお兄ちゃん、弟達守っちゃってさ。でも、もう遊びは終わりにしようぜ!」


    ああ、なるほどやっぱり逆恨みの方か。そんな事を考えていたらブン、と鉄パイプが頭上にかざされる。
    あれに直撃されたら本当に致命傷だ、と反撃の隙を探す一松。そこへ。


    ――ヒュン…ッ!


    風を切るような音が聞こえ、頭上から降ってきた何かがその鉄パイプを蹴り飛ばす。そのままクルリと体を反転させたソレは、着地する寸前でその相手の顔面に回し蹴りを叩き込んだ。吹っ飛ぶ体を冷たい目で見下ろし、一松を庇うように軽やかに着地を決めたのは。


    「…チョロ松兄さん!」


    トド松が叫ぶ。一松の目の前に立ったのは見覚えのある緑色のツナギを着たすぐ上の兄、チョロ松。


    「セーフ。大丈夫?って、一松は大丈夫じゃなさそう…本当にもう、僕の弟に何してくれてんの?」


    スッ、と前を見据えたチョロ松の目が冷たい光を放つ。


    「緑…って事は三男か。上二人に比べたら大した事ねえ、一緒に叩け!」
    「おーおー、僕も随分見くびられたもんだね。…っっざけんな!!ケツ毛燃えるわ!!!」


    あーあ、言っちゃった。弟三人の脳裏に同じ台詞が浮かぶ。松野家六つ子で一番怒らせたらいけないのは、ヒエラルキー頂点に君臨する長男でも、兄弟一怪力で温厚な次男でもない。普段は常識人の皮を被った暴君三男だ。しかも上の二人に比べて弱いなんて、元暴れん坊のプライドを刺激するような言葉で。
    前方にいた不良三人が一斉に一気に掛かってくる。
    チョロ松は身を屈め一番前にいた男に低い位置から飛び上がり延髄蹴りを繰り出す。そのまま足ごと引き寄せ顔面を地面に叩き付けた。そしてその男の頭部を踏み台に、その後ろにいた男を鳩尾に全力のニードロップで沈めると、軽く地を蹴り三人目の男の脳天に踵落としを決めた。あっと言う間のコンボ技で三人が地面に崩れ落ちる。


    「三男舐めんな」


    絶対零度のような声音で呟いた直後、兄弟達には聞き慣れた声が反対側―路地裏の入口の方から聞こえた。


    「チョロちゃん、自分だけ見せ場作るとか狡いでしょ〜」
    「…うっせ。遅ぇよ、クソ兄貴共」
    「あのね、塀とか屋根とか全力で走る子に追い付けないから!オレら無理だからね、そんなの!」


    そう叫ぶおそ松が右肘を隣に立つカラ松の肩に乗せ、いつもと同じ人を喰ったような笑みを浮かべている。そのカラ松はおそ松の腕など気にせず無表情でポキポキと指を鳴らしていた。そしてスゥッと息を吸い込む。


    「一松!」
    「…何」
    「末っ子二人は無事か?」
    「当たり前じゃん、ぼくがそんなミスするとでも?指一本触れさせてないよ」
    「上出来だ、ブラザー」
    「さて、それじゃ…うちの弟達、返してもらおっか」


    おそ松の言葉が引き金だ。チョロ松がゆらりと右足を揺らす、と。


    「――十四松」
    「あいあい!」


    ――ガッ。


    「えっ、十四松兄さん!?」


    ――ガッ。


    「ちょ、何、十四松っ」


    右腕にトド松、左腕に一松の体を抱えた十四松が地を蹴って飛び上がり、そのまま後方に上げたチョロ松の右足に着地する。と、――ブンッ!と、十四松を乗せたその足をチョロ松は思いっ切り蹴り上げた。タイミングを合わせ勢いを付けて十四松が飛び出す。


    「ええええええええ!?」
    「うわっ…!!」
    「わはー!!すげー!!」


    十四松の跳躍力と、チョロ松の蹴り。それが合わさって三人の体は不良達の頭上を越えて兄二人の元へと一直線に飛んで行く。


    「いやああああああ!!」
    「おそ松にーさん!!」
    「はいよっ」
    「うわっ…!」
    「カラ松にーさん!!」
    「おうっ!」


    ぶんっ!ぶんっ!腕に抱えた二人を投げる十四松。
    トド松はおそ松に抱き締めるようにしっかりと、一松はカラ松に勢いを殺しながらふんわりと受け止められる。お姫様抱っこと言う、カラ松らしい受け止め方で。そしてその長兄二人の間を抜けた十四松は、兄達の背後に無事着地した。


    「わはー、成功!」
    「ナイスパスだ十四松」
    「っ…ナイスパス、じゃねえよ!」
    「おっと…暴れるな一松、傷に障る。…十四松、頼む」
    「あいあい!一松にーさん、こっち!」


    再度十四松に渡された一松は大きく安堵の息を吐いた。おそ松に下ろされたトド松も駆け寄って来る。


    「十四松、一松とトド松連れてここから離れろ。トド松は離れたら救急車呼んで病院、二人も一松と一緒に着いて行け、落ち着いたらチョロ松に連絡」
    「っ、分かった!」
    「行こ、トド松!一松にーさん、しっかり掴まってて!」
    「兄さん達気を付けてね!」


    バタバタと弟達の足音が遠ざかって行く。
    あまりに早い展開に付いていけてなかった不良達が一気に騒ぎ出した。


    「っ、ふざけやがって…!」
    「はあ?ふざけてんのはどっちだよ。弟達が遊んでもらったんだ、今度はお兄ちゃん達とも遊んでよ。…なあ?」


    ニヤリ。おそ松の浮かべた笑顔に、笑みはなかった。


    -----


    「随分オレ達の可愛い弟と楽しんでくれたみたいじゃん。今度はオレ達も楽しませてよ」


    ゆらり。おそ松が先程チョロ松によって飛ばされた鉄パイプを手に、カラ松より一歩下がる。そのカラ松は準備万端とばかりにすっと瞼を細め、まっすぐにチョロ松へと視線を向ける。そしてチョロ松はまさに暴君そのままの顔で不敵に笑っていた。


    「くっそ…構わねえ、やっちまえ!」


    うわー、時代劇のやられ役かよ。おそ松が思わず内心突っ込むとカラ松の右手がスッと上がる。


    「兄貴が出るまでもなさそうだな」
    「そうねー、久しぶりにカラ松もチョロ松も本気っぽいし?オレは久々お前達の喧嘩見てたいわ」
    「分かった」
    「何ごちゃごちゃ言ってんだ!」


    人数にして20人前後だろうか。弟二人を庇いながら、怪我を負ったとは言え一松も良く頑張ったよな。終わったら褒めてやんねーと。おそ松は地面に立てた鉄パイプに寄りかかり始まった喧嘩を眺めていた。誰も路地裏から出ないように、その場を守りながら。


    「っぐあ…!」


    バギッ!ドスッ!とても人間が出してるとは思えないような重い音がカラ松の拳から繰り出される。イタさじゃなくて物理で肋骨折ってるよ、この子…おそ松が思わず半目になる。無言で倒していくカラ松の反対側では、チョロ松が徹底した足技だけで対峙している。なにが凄いって、ツナギのポケットに両手を突っ込んだままなのが怖い。速さに加え、足技に関しては重さもあるチョロ松の一撃はおそ松の拳と同じくらいのレベルだ。カラ松は問題外。
    それでも二人はわざと致命傷を与えないから、殴られても蹴られても立ち上がる不良達。その様子は大分ボロボロにはなっているけれど。


    「…そう言えばさあ。コイツら《俺》の事、お前らより弱いとか言ってくれたんだよねえ。――やっちゃってイイ?おそ松、カラ松」


    あ。チョロ松のヤバいスイッチ入っちゃってた。
    思わず顔を見合わせる二人はやれやれと溜息を吐いた。


    「あーあ、このお兄さん達、チョロちゃんの地雷踏んじゃったんだあ?」
    「ふっ…それなら仕方ないな。その秘められし能力、存分に見せてやれば良い」
    「それなら遠慮なく」


    ポケットからようやく手を出し、すっとチョロ松がしゃがみ込む。おそ松はぞくりと体が震えるのが分かった。何年振りだろうか、このチョロ松を見るのは。昔は一緒に暴れたチョロ松が真面目になってから見なくなった本気の姿。やっぱり楽しいわー、なんて呑気にニヤついた。
    しゃがんでいたチョロ松が一気に弾け飛ぶ。てんでんばらばらにボロボロの姿を晒していた20数人の頭を遠慮もなく、しかもご丁寧に一人残らず踏みながら走り回る。人間の頭の上でこんなに速く縦横無尽に走れるのはチョロ松くらいなものだろう。そして最後の一人を踏み潰すと高くジャンプして飛び込んだのはカラ松の元。そのカラ松は頭上で腕を交差し、チョロ松の両足を受け止める。そしてクロスしていた腕を思い切り広げ、着地したチョロ松を今度は元いた場所へと弾き飛ばした。十四松にやったのと同じ原理だ。不良達の頭上で華麗な回転を決めたチョロ松は着地と同時に片膝を立てて呟いた。


    「――トラップ発動」
    「Spellbinding of the large spider」


    後を受けたカラ松が無駄に良い発音と声で叫び、同時に右手をぐいっと高く持ち上げる。その途端、散り散りになっていた不良達の体が一ヶ所に集まる。ギリ、と鈍い音を立て、転ぶ事も出来ず足をもたつかせながらあっと言う間にひとかたまりにされてしまった。


    「痛ぇ!」
    「何だよこれ!」
    「っざけんな!!」


    口々に喚く塊をじっと見ていたカラ松が一言。


    「前から二番目、右端」
    「おっけ」


    びくり。指定された場所にいる男が体を強ばらせたのを見て、チョロ松は再度男達の頭を渡りながら指定された男を見下す位置に立つ。そして。


    「…ちょっとお前抜けろや」


    爪先で男の顎を上げ、そのまま勢い良く蹴り上げる。身動きが出来なかったはずの男は塊の中から弾き出され、更に蹴りを入れられてドサリと音を立てて落ちた。おそ松の足元に。


    「ふーん、アンタ?…コイツらのリーダー」
    「っ!?なんでっ」
    「分かったかって?うちの参謀の眼力舐めないでよね。外した事ないよ、これは」
    「っ…」


    カラ松はじっと見ていた。ひとかたまりにされた直後、タイミングは違えど全員が一度はこの男へと視線を向けたのを。あれは統率者に縋るような視線だった。おそ松はその男の肩を力任せに掴んで引き寄せる。


    「ねえねえ、何でお兄さん達団子になっちゃったか分かる?うちの次男、手上げてるでしょ。何持ってると思う?」
    「はっ…」
    「あれね、テグス。分かる?釣り糸に使うやつ。一番頑丈なの。しかも三男特製、三つ編みテグス。ちょっとやそっとじゃ切れないから無駄な抵抗しないでね。そんで、さっきお兄さん達の頭の上走り回った時に体に巻き付けてたの。どうよ、オレの弟ちょーカッコよくない?」


    リーダーの男は口をぱくぱくさせるしかなかった。そんな事をされてても全然気付かなかったなんて。


    「そんで、そのテグス握ってるあの次男ね。アイツの握力知ってる?150キロあんの。人間じゃないよねえ。林檎潰すのって80キロくらいなんだって、それ言ったら単純にアイツ片手で一気に林檎二つ潰せるんだよ。怖くない?そんなヤツがあのテグス引いてるの。…意味、分かるよね?」


    素早くテグスを人体に巻き付ける三男も、握力150キロの次男も怖いけれど、リーダーは自分の横でニコニコしながらそんな事を話す長男が一番怖いと目を見開き、背中を嫌な汗が伝っていく。


    「まあね、オレらもヒトゴロシにはなりたくないからさあ。アイツ、やろうと思えばあのテグスでお兄さん達の体真っ二つにする事くらい出来るんだけどスプラッタはマズイじゃん?だからさ、ちょっとオレと約束してくれたらお仲間開放してあげるよ」
    「や…やく、そく…?」


    ガチガチと歯の音が合わないまま、おそ松の言葉を繰り返す。そんなリーダーにおそ松はとびきりの笑顔で頷いた。


    「オレ達六つ子に二度と手を出さない事。弟をキズモノにした慰謝料はもちろんもらっちゃうけど、アンタにはそれに加えてうちの可愛い四男が受けた分だけ同じ痛み感じてもらうよ」
    「ヒッ…」
    「…チョロ松」
    「来てるよ、トド松から。えーと、医者の診断と一松の供述から、顔に三発。腹に五発、右足脛にヒビ。随分やってくれたよねえ」
    「じゃあチョロ松は足ね。カラ松はどっちが良い?」
    「顔」


    即答する低い声にもう言葉すら出ない。そんな男の右足目掛け、チョロ松は今までで一番重く速い蹴りを繰り出す。バキッ!と鈍い音と男の悲鳴が重なる。


    「あー、ヒビどころか折れちゃったかも」
    「ドーンマイ☆じゃあオレ、腹ね。五発だっけ?」


    言うなりおそ松が握った拳を鳩尾に決める。うーわ、いたそー。そんな抑揚のないチョロ松の声がひとかたまりにされた不良達の耳に届いた。


    「ホントさあ、弟に手ぇ出すとこの二人めちゃくちゃ怖いからやめた方が良いよ?」


    ドスッ。バキッ。ガスッ。連発で打ち込んだおそ松の最後の拳が再度鳩尾に決まる。もう男は血の気すらなくなっている。が、一番怒っている次男がまだ控えているのだ。弟、特にカラ松が一番気にかけている一松に手を出されて温厚でいられる訳がない。その証拠に目が据わっている。


    「…覚悟は良いな」
    「ヒッ…ごべっ…!」
    「口を開くな、耳障りだ」


    重い拳は左頬へヒット。冷たい言葉を吐きながら二発目は右頬を抉る。


    「――Over」


    低い呟きとと共に放たれた最後の一発は、顔のど真ん中、鼻へとクリーンヒットした。


    -----


    「おー、いたいた。おーい!」
    「あ、兄さん達だ!」
    「にーさん達、お疲れッス!」


    あの後気絶したリーダーを含め、テグス団子になっていた連中から慰謝料と治療費をありがたく頂戴して、そのまま放置すると一松の猫に被害が及びそうだったので取り敢えず開放してやると散り散りになって逃げて行った。あれだけやればさすがにもう手を出しては来ないだろうと、頂いた治療費を持って病院に向かう途中で治療の終わったらしい弟達の姿が見えた。


    「一松!怪我の具合は大丈夫なのか!?」


    先程まで鬼神もかくや、とばかりに暴れていたとは思えない程狼狽えながら一松に駆け寄るカラ松。


    「大丈夫、骨も内臓も異常なし。ヒビはちょっと治るまで掛かるけど、腫れも二、三日で治まるって」
    「そうか…良かった、足痛くないか?」
    「…痛い」
    「よし、おんぶしてやろう」
    「…うん」


    素直に背中に乗っかる一松に、後の四人はニヤニヤ顔だ。


    「あーあ、カラ松兄さん、一松兄さんの足が治るまでパシらされるよ」
    「良いんじゃねえの、素直に一松が甘えてくれるの嬉しいみたいだし」
    「それよりどうなったっすか!あの後!」
    「いやー、カラ松とチョロ松の本気久々に見たから楽しかったぜ」
    「にーさん良いっすね!おれも見たかった!」
    「兄さん達本気出すとめちゃくちゃ格好良いもんね。おそ松兄さん、動画撮ってないの?」
    「あー、忘れてたわ」
    「えー!」


    前を歩く三人の賑やかな声を聞きながら、一松をおぶったカラ松と並んで歩くチョロ松は思わず溜息を吐いた。


    「全く、何呑気な事言ってんの、アイツら」
    「いや、でも久しぶりにチョロ松の本気見たから気持ちは分かるぞ」
    「カラ松だってめちゃくちゃ本気だったじゃん」
    「そりゃ…一松が傷付けられたんだから当たり前だろう」
    「…馬鹿じゃないの、そんなんで」
    「そんなん、じゃないぞ。久しぶりに俺もキレた」
    「…そう。……ありがと、二人とも助けに来てくれて」
    「…一松が」
    「素直だ…」


    感動している二人と恥ずかしさからカラ松の背に顔を埋めた一松に、前から声が掛かる。


    「おーい!今夜は寿司行くぞ!」
    「兄さん太っ腹!」
    「…他人の金だけどね」
    「まあ、たまには良いじゃないか」
    「…そうだね。暴れたらお腹空いた!」
    「よし、今日は遠慮なく食べよう」
    「おーい!早く来ないと全部食っちまうぞ!」
    「何食い尽くすつもりだよ!」


    チョロ松が叫びながら走って三人に追い付く。
    それでもゆっくり歩くカラ松に、一松が首を傾げた。


    「早く行かなくて良いの」
    「大丈夫さ、アイツらは待っててくれるから。それに、急いでお前の傷に障ったら困るからな」
    「…大丈夫なのに」
    「お前が甘えてくれるの珍しいからもう少し堪能したい、ってのが本音かな」
    「…ホント、馬鹿でしょ」


    そう言いながらも嬉しそうに口角が上がるのを止められない。カラ松から見えなくて良かった。
    そんな二人が追い付くのを、先に歩いていた四人が立ち止まって笑いながら待っていた。



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