Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    waremokou_2

    @waremokou_2

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 39

    waremokou_2

    ☆quiet follow

    ネヤネ ドルパ
    コウチャノハナシ

     思えば同じ楽屋に集まってこうも穏やかな時間を過ごせるようになったのは、再び会ってからだろう。当時は若さゆえの傲慢さと、多忙による疲労からくる衝突、そして生活のすべてを監視されるという異常な環境によって引き起こされる、神経をとがらせることを半ば強制させられるような生活が、俺たちの〝何か〟をただひたすらに圧迫していた。何度となく衝突したし、三毛縞の性格から黒柳の神経を逆撫でするようなことも多く特に争いが絶えなかった。お互いに譲れぬものがあったからこそだが、それでもどこかでお互いを尊敬しあっていたし、相手に会って自分にないものを強請ってばかりいた。烏丸はそんな二人の仲を、世界で唯一保てる男として半ば犠牲にささげられたようなものだ、と三毛縞は思う。無論、三人で成し得た成果は烏丸の努力もあってのものではある。烏丸はこの三人で過酷で多忙な時間を過ごした中で、ユニットを組む相手を間違えたと思ったことは一度もないという。それでも、衝突を引き起こす原因でもある三毛縞自身、大変な役目を押し付けてしまったなと今でも反省するばかりだ。
    「今日、業も出るんだろ?」
     三毛縞は楽屋にあったポットで、二人分の茶を淹れる。昔では考えられない、穏やかな時間である。昔は楽屋に寄る暇さえなかった。バンの中で移動しながら衣装を変え、目の前がグラグラするほどの過労による限界を、エナジードリンクで無理矢理たたき起こすように現場へ向かった。今じゃマネージャーも最低限の関わりである。茶を淹れてくれるような世話を、焼かれるほどの子供じゃない。それが黒柳、三毛縞の総意だった。特にこだわりはない三毛縞は用意されたものが紅茶だろうが緑茶だろうが興味はないが、黒柳は撮影――特に歌唱を披露するときと、長い間トークする必要のある番組では特に、直線に飲むものにこだわりを持っている。どうせ黒柳も飲むのだから、自分の分も一緒に淹れてしまおう、という三毛縞が黒柳に湯気を立てるマグカップを渡した。喉に良いとされるハーブを調合したそのハーブ茶は、三毛縞が気軽に飲むような安い茶葉ではなかったが、黒柳は台本を眺めていた目で一度三毛縞を睨みつけるだけで、黙ってマグを受け取った。
    「そうだ。――貴様、相変わらず台本を読まん男だな」
    「ンなもん読まなくったって、どうせ俺らは司会進行じゃねえんだ」
     黒柳の前で雑にページを捲る三毛縞が、こうも不真面目な男でありながらそれでもこういったバラエティーでは黒柳以上に器用に話をした。場を盛り上げることも、後輩をかわいがることも、同業だろうが違業だろうが盛り上げることも器用にやってみせた。それが黒柳には羨ましかったし、同時に悔しさで腹立たしいことでもあった。昔ならこのまま胸倉をつかみ合い、口論から突きあうくらいには発展していただろう。まあ俺は器用だからな、と肩をすくめる三毛縞に、黒柳は相変わらずだなと呆れたように目を回すだけだ。
    「ハハ、ま、楽しもうや」
     背を押された黒柳が、相変わらず呆れたように肩をすくめて笑った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏💯💴👍🌠💘☺🐐🐈
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    waremokou_2

    DOODLE #HCOWDC 2
    お題は「おぼろ月」でした

    登場人物
    ・吉川直幸
    ・中島修一
    「月が綺麗ですね」
     そう囁く声に、思わず顔を上げた自分が馬鹿らしい。この声らしからぬ標準語じみた発音はどこかぎこち無ささえ感じられるのがゲンナリするのは、おそらくそういった言葉を普段から息をするように無駄撃ちするこの男の自業自得である。ただ――この男がぎこちなく標準語でそう囁いたことにより、かつ見上げた先に薄ぼんやりと輝く朧月に、その言葉が響きどおりの意味だけではないのだという明確な証明になってしまった。と、いうのも――正直にいってこの男に、朧月の美しさなど理解できるとは思えなかったからだ。
    「曇ってるけど」
     だから、あえてそう返事をした。この男が誤魔化すように言葉を撤回すれば、この恥ずかしい言葉は仕方ないから忘れてやろうと思ったのだ。この春休みが始まってから、気がつけばほとんどの時間をこの男と過ごしている気がする。段々と、友人らしい距離感に慣れてしまった。そのままどんどん絆されて、今、重く、熱く、むさ苦しい腕の中に収まっているこの距離感が果たして友情というラベリングを許されるのか、もうわからなくなってしまった。表面上の関係は、契約した以上この男が言うなら俺と中島は恋人だった。中島がそう思っているなら、という不安定な環境下で成り立つ関係性はこちらの感情をひどく乱す。だからなお、一層自分がはっきりと拒絶の意思を示せないことに、自分に腹が立って仕方ない。
    2725

    waremokou_2

    DOODLE吉川のエプロンについての返歌です。
    その節は大変美味しいスイーツコンビをありがとうございました。
    今日改めて8回読み返し、ゲヘゲヘしています。
    美味しい小説をありがとうございました。

    ※これはスイーツ組のファンフィクションです。
    青空の夢を みんなが各々騒ぐ声を聞きながらする皿洗いは家事の中でも好きなものの一つだった。とはいっても、特に嫌いな家事があるわけでもなく――確かに、排水溝のゴミを捨てるのはいい気持ちではないし、虫の駆除は無理だけど――そんな風に思えるのはひとえに、みんなが分担してくれているからだ、というのが大きいだろう。今日は深津が夕飯作りを担当してくれて、俺が皿洗い。彼の料理は山内さん仕込みだと聞いているから、毎食丁寧で感動する。本人が〝そんなことない〟と謙虚なのもまた好ましいのだから、彼にファンが多いのも頷ける。さらには料理中片付けまでしてしまうのだから、こちらとしては彼の後皿洗いをするのは楽でいい。もっと散らかしていい、というのだが、癖だから、気になるから、と料理の片手間にさっさとキッチンまで整えてしまう。俺はと言えば、そのあとみんなで食べた残りの食器を呑気に洗うだけ。そりゃ、家事が嫌いじゃないなんてのうのうと言えるだろうな、と改めて自分の呑気さに呆れた。残りはグラスを濯いでしまえば終わり、という頃になっておおい、とリビングから呼ぶ声がする。
    6097

    recommended works

    waremokou_2

    DOODLE #HCOWDC 2
    お題は「おぼろ月」でした

    登場人物
    ・吉川直幸
    ・中島修一
    「月が綺麗ですね」
     そう囁く声に、思わず顔を上げた自分が馬鹿らしい。この声らしからぬ標準語じみた発音はどこかぎこち無ささえ感じられるのがゲンナリするのは、おそらくそういった言葉を普段から息をするように無駄撃ちするこの男の自業自得である。ただ――この男がぎこちなく標準語でそう囁いたことにより、かつ見上げた先に薄ぼんやりと輝く朧月に、その言葉が響きどおりの意味だけではないのだという明確な証明になってしまった。と、いうのも――正直にいってこの男に、朧月の美しさなど理解できるとは思えなかったからだ。
    「曇ってるけど」
     だから、あえてそう返事をした。この男が誤魔化すように言葉を撤回すれば、この恥ずかしい言葉は仕方ないから忘れてやろうと思ったのだ。この春休みが始まってから、気がつけばほとんどの時間をこの男と過ごしている気がする。段々と、友人らしい距離感に慣れてしまった。そのままどんどん絆されて、今、重く、熱く、むさ苦しい腕の中に収まっているこの距離感が果たして友情というラベリングを許されるのか、もうわからなくなってしまった。表面上の関係は、契約した以上この男が言うなら俺と中島は恋人だった。中島がそう思っているなら、という不安定な環境下で成り立つ関係性はこちらの感情をひどく乱す。だからなお、一層自分がはっきりと拒絶の意思を示せないことに、自分に腹が立って仕方ない。
    2725